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[SSS25-P04] 運動学的震源モデルから求めた2013年栃木県北部の地震の動力学パラメータ
キーワード:2013年栃木県北部の地震、動力学パラメータ、運動学的震源モデル
強震動予測レシピにおいて,高精度な予測強震動を得るためには,実際に発生した地震の震源像を詳細に把握し,その知見を特性化震源モデルの構築に活かしていくことが重要である.現在広く用いられている特性化震源モデルの概念は,運動学的震源モデルの上に立脚しているが,断層破壊現象は本質的には動力学で表現される.近年,動的破壊過程に基づいた強震動シミュレーションに関する研究も発展を遂げており,震源での動力学パラメータをモデル化することは,強震動予測の高精度化,或いは特性化震源モデルの高度化において期待されることの1つであると考えられる.本研究は,動力学パラメータの知見を特性化震源モデルに組み込むことを目的とし,2013年2月25日栃木県北部の地震(Mw 5.8)の運動学的震源モデルから,断層面上での応力変化を推定し,アスペリティや背景領域での動力学パラメータの特徴を調べた.
断層面上での応力の時空間変化は,運動学的震源モデルのモーメント時間関数を境界条件として,運動方程式を3次元有限差分法で解くことで応力の時間変化を推定した(Ide and Takeo, J. Geophys. Res., 102, 27379-27391, 1997).ここで運動学的震源モデルは,染井・他 (JpGU, SSS23-P19, 2014) による近地強震波形(0.1-1.0 Hz)インバージョンから推定した不均質震源モデルを採用した.なお,有限差分法の計算は空間に対して4次精度,時間に対して2次精度のStaggeredグリッドを用いた.計算の入力に用いる震源インバージョンモデルは,1.0 km四方の小断層を双一次補間によって250 m四方の分布に補間することで与えた.なお,各小断層の破壊伝播時間の遅れは考慮している.得られた応力変化履歴と変位履歴から,変位と応力の摩擦構成則を評価し,それを基にして,静的応力降下量,動的応力降下量,実効応力,破壊強度(Strength excess),臨界すべり量(Dc),破壊エネルギーといった動力学パラメータを抽出した.
得られた動力学パラメータの特徴は以下の通りである.1)臨界すべり量は,アスペリティ領域の方が,背景領域よりも2倍程度大きい.2)アスペリティ領域,および背景領域の臨界すべり量は,最終すべり量の50%程度である.3)静的,及び動的応力降下量は,アスペリティ領域の方が背景領域よりも3-5倍程度大きい.4)アスペリティ領域での静的,動的応力降下量,及び実効応力の平均値は,各々6.0 MPa,6.7 MPa,7.7 MPaと推定され,静的応力降下量に対して,動的応力降下量は1.1倍,実効応力は1.3倍となった.5)破壊強度は,アスペリティの端部で大きい傾向がある.ここで,アスペリティ領域は,運動学的震源インバージョンモデルのすべり量に基づいて特性化された領域である.今後は,他の震源パラメータ(破壊伝播速度等)との比較や,動力学パラメータ抽出の事例を増やすことでこれらの傾向の統計的特性を調べていく予定である.
謝辞:本研究は,平成27年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の高度化)事業による成果の一部である.
断層面上での応力の時空間変化は,運動学的震源モデルのモーメント時間関数を境界条件として,運動方程式を3次元有限差分法で解くことで応力の時間変化を推定した(Ide and Takeo, J. Geophys. Res., 102, 27379-27391, 1997).ここで運動学的震源モデルは,染井・他 (JpGU, SSS23-P19, 2014) による近地強震波形(0.1-1.0 Hz)インバージョンから推定した不均質震源モデルを採用した.なお,有限差分法の計算は空間に対して4次精度,時間に対して2次精度のStaggeredグリッドを用いた.計算の入力に用いる震源インバージョンモデルは,1.0 km四方の小断層を双一次補間によって250 m四方の分布に補間することで与えた.なお,各小断層の破壊伝播時間の遅れは考慮している.得られた応力変化履歴と変位履歴から,変位と応力の摩擦構成則を評価し,それを基にして,静的応力降下量,動的応力降下量,実効応力,破壊強度(Strength excess),臨界すべり量(Dc),破壊エネルギーといった動力学パラメータを抽出した.
得られた動力学パラメータの特徴は以下の通りである.1)臨界すべり量は,アスペリティ領域の方が,背景領域よりも2倍程度大きい.2)アスペリティ領域,および背景領域の臨界すべり量は,最終すべり量の50%程度である.3)静的,及び動的応力降下量は,アスペリティ領域の方が背景領域よりも3-5倍程度大きい.4)アスペリティ領域での静的,動的応力降下量,及び実効応力の平均値は,各々6.0 MPa,6.7 MPa,7.7 MPaと推定され,静的応力降下量に対して,動的応力降下量は1.1倍,実効応力は1.3倍となった.5)破壊強度は,アスペリティの端部で大きい傾向がある.ここで,アスペリティ領域は,運動学的震源インバージョンモデルのすべり量に基づいて特性化された領域である.今後は,他の震源パラメータ(破壊伝播速度等)との比較や,動力学パラメータ抽出の事例を増やすことでこれらの傾向の統計的特性を調べていく予定である.
謝辞:本研究は,平成27年度原子力施設等防災対策等委託費(地震動評価における不確かさの評価手法の高度化)事業による成果の一部である.