日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS25] 強震動・地震災害

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*津野 靖士(鉄道総合技術研究所)

17:15 〜 18:30

[SSS25-P24] 大分県の震度計データを用いたH/V,R/Vスペクトルの算定と既往速度構造モデルの検討

*吉見 雅行1山田 雅行2 (1.産業技術総合研究所活断層・火山研究部門、2.株式会社ニュージェック)

キーワード:H/Vスペクトル、R/Vスペクトル、3次元速度構造モデル

大分県の自治体震度計49点およびK-NET,KiK-netの地震波形記録について,H/VスペクトルおよびR/Vスペクトルを算出した.解析対象は自治体震度計で波形記録が得られた2005年3月から2015年11月までの全68地震である.主な地震の震源域は,2005年3月20日福岡県西方沖地震(M7.0)とその余震,2007年6月別府湾北西部付近の浅い地震(最大M4.9),伊予灘付近のやや深い地震(最大は2014年3月14日のM6.2),大分県中部の深い地震(D=145km,M6.2),2015年7月13日大分県南部の地震(D=58km, M5.7)である.大分県自治体震度計は全て加速度計で構成され,サンプリング周波数は100Hz,自治体役場・支所,消防署等の公共施設に設置されている.震度計の波形記録は60秒間を1単位として切り出されており,ほとんどのデータ長は60秒間である.また,観測点によっては数個の地震記録しか得られていないところもある.
収集した地震観測記録の主要動部分(後続波含む)を用いて,H/Vスペクトルを算定した.0.2〜10Hzの周波数帯域について地震間のスペクトル平均をとり,観測H/Vスペクトルとした.さらに,地震規模の大きな地震についてR/V スペクトルを算定した.S波初動から 20.48 秒以降の後続波部分を用いた.ただし,大分県震度計については,観測データ長が60 秒間のものが多いため高々数個の地震の平均値となった.
これらH/V,R/Vスペクトルを既往速度構造モデル(大分県,2008)による理論H/Vスペクトルと比較した.大分県の地質構造は臼杵ー八代構造線以南の主に地震基盤相当が露頭する地域,構造線付近の上部白亜系堆積岩類(大野川層群)が分布する地域,深い地震基盤相当面の上に新第三紀から第四紀の地層が厚く分布する「別府ー島原地溝」の地域,およびその北部の地域に大別される.この地質構造に対応して,理論H/Vスペクトルは概して「別府ー島原地溝」の地域で1Hz以下にピークを持ち,それ以外の地域では低周波数帯域に明瞭なピークを持たないものが多い.既往モデルはK-NET,KiK-netおよび気象庁の観測記録を用いた補正が行われているが,自治体震度計の近傍にこれらの観測点がある場合には,自治体震度計のスペクトル特性は既往速度構造モデルで概ね説明可能である.ただし,大野川層群の分布地域ではやや理論値と観測値にズレがある傾向が見られたが,浅部地盤の影響である可能性もあり精査が必要である.今後はこれらのデータを基に,速度構造モデルを修正する予定である.
謝辞:大分県生活管理部防災危機管理課には自治体震度計ネットワークのデータをご提供頂きました.防災科研のデータを使用しました.また,本研究は文部科学省委託「別府-万年山断層帯(大分平野-由布院断層帯東部)における重点的な調査観測(平成26〜28年度)」の一環として実施しました.