17:15 〜 18:30
[SSS25-P29] 微動アレイ観測による関東地域全域の3次元S波速度構造モデルの構築
キーワード:微動アレイ探査、速度構造
1.はじめに
防災科研は、地震動特性の評価の精度を向上させる目的で、これまでに関東地域において浅部・深部統合地盤モデルの作成に取り組んできている1)。この地盤モデルを高度化するため、2009年~2015年にかけて関東地域の平地部において、微動探査(アレイ・単点・極小アレイ)を高密に実施してきた。先名ほか(2015)2)は、2014年度までに実施してきた約320地点の微動アレイ、約5000地点の極小アレイ微動探査結果と強震記録を用いて既往の地盤モデルをチューニングし、成果を得ている。
このモデル対して2015年度に実施しした微動観測データを加えてさらにチューニングを施し、関東地域全体の地盤モデルについてまとめている(先名ほか(2016)※本大会発表)。ここでは、前述のデータおよび、防災科研の微動データベース等に登録されているものも含めた関東地域全域での微動アレイ探査の結果について報告する。
2.微動アレイ探査について
防災科研で実施した研究業務における微動アレイ探査はこれまでに、関東地域7都県の平地部において約5km程度の間隔で、強震観測地点264地点を含めた414地点で実施している。展開したアレイの大きさは、工学的基盤相当層以深をターゲットとして、半径100~400m(一部半径800mでの観測も実施)の正三角形アレイおよび辺長75mのL字型とした。また観測にはJU210、JU215(白山工業社製)およびアレイの一部ではVSE-15D6(東京測振社製)を用いた。
またS波速度構造は、微動アレイ探査によって得られた位相速度に対して、強震記録のR/Vスペクトル(または微動記録のH/Vスペクトル)を併せ、ジョイントインバージョンによって求めた。
なお、既往の微動探査が実施され結果が公表されている3)4)地点等では、その既往微動アレイの位相速度と本研究での観測で得られた位相速度とを接合して、速度層解析に使用した。
3.まとめ
この結果に対して差分法を用いて検証した結果、微動アレイ探査と強震記録により、特に、山地部との境界付近と、平地部の350~900m/s程度の中速度層(0.5~3Hz程度の周波数帯に対応)が大きく改善されたことが確認できた。
今後は、関東地域の地盤モデルの精度をさらに向上させるとともに、東海地域においても関東地域同様に統合地盤モデルの作成に取り組んでいく予定である。
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジ
リエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました。また、埼玉県環境科学国際センターの白石英孝氏より、微動アレイデータの提供を頂きましたことに感謝します。
参考文献)
1) Senna,S,,T.Maeda,Y.Inagaki,H.Suzuki,H.Matsuyama,and H.Fujiwara(2013):Modeling of the subsurface structure from the seismic bedrock to the ground surface for a broadband strong motion evaluation,J.Disaster Res.,8,889-903.
2) 先名・松山ほか(2015);関東地域における微動観測に基づくS波速度構造の推定と地盤モデルの構築,物理探査学会第133回学術講演会論文集,p.58-61.
3) 松岡・白石(2002);関東平野の深部地下構造の精査を目的とした微動探査法の適用性-埼玉県南部地域の三次元S波速度構造の推定-,BUTSURI-TANSA,Vol.55,No.2,pp.127-143.
4) 山中浩明・山田伸之(2002) :微動アレイ観測による関東平野の3次元S波速度構造モデルの構築, 物理探査,55,pp.53-65.
防災科研は、地震動特性の評価の精度を向上させる目的で、これまでに関東地域において浅部・深部統合地盤モデルの作成に取り組んできている1)。この地盤モデルを高度化するため、2009年~2015年にかけて関東地域の平地部において、微動探査(アレイ・単点・極小アレイ)を高密に実施してきた。先名ほか(2015)2)は、2014年度までに実施してきた約320地点の微動アレイ、約5000地点の極小アレイ微動探査結果と強震記録を用いて既往の地盤モデルをチューニングし、成果を得ている。
このモデル対して2015年度に実施しした微動観測データを加えてさらにチューニングを施し、関東地域全体の地盤モデルについてまとめている(先名ほか(2016)※本大会発表)。ここでは、前述のデータおよび、防災科研の微動データベース等に登録されているものも含めた関東地域全域での微動アレイ探査の結果について報告する。
2.微動アレイ探査について
防災科研で実施した研究業務における微動アレイ探査はこれまでに、関東地域7都県の平地部において約5km程度の間隔で、強震観測地点264地点を含めた414地点で実施している。展開したアレイの大きさは、工学的基盤相当層以深をターゲットとして、半径100~400m(一部半径800mでの観測も実施)の正三角形アレイおよび辺長75mのL字型とした。また観測にはJU210、JU215(白山工業社製)およびアレイの一部ではVSE-15D6(東京測振社製)を用いた。
またS波速度構造は、微動アレイ探査によって得られた位相速度に対して、強震記録のR/Vスペクトル(または微動記録のH/Vスペクトル)を併せ、ジョイントインバージョンによって求めた。
なお、既往の微動探査が実施され結果が公表されている3)4)地点等では、その既往微動アレイの位相速度と本研究での観測で得られた位相速度とを接合して、速度層解析に使用した。
3.まとめ
この結果に対して差分法を用いて検証した結果、微動アレイ探査と強震記録により、特に、山地部との境界付近と、平地部の350~900m/s程度の中速度層(0.5~3Hz程度の周波数帯に対応)が大きく改善されたことが確認できた。
今後は、関東地域の地盤モデルの精度をさらに向上させるとともに、東海地域においても関東地域同様に統合地盤モデルの作成に取り組んでいく予定である。
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジ
リエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました。また、埼玉県環境科学国際センターの白石英孝氏より、微動アレイデータの提供を頂きましたことに感謝します。
参考文献)
1) Senna,S,,T.Maeda,Y.Inagaki,H.Suzuki,H.Matsuyama,and H.Fujiwara(2013):Modeling of the subsurface structure from the seismic bedrock to the ground surface for a broadband strong motion evaluation,J.Disaster Res.,8,889-903.
2) 先名・松山ほか(2015);関東地域における微動観測に基づくS波速度構造の推定と地盤モデルの構築,物理探査学会第133回学術講演会論文集,p.58-61.
3) 松岡・白石(2002);関東平野の深部地下構造の精査を目的とした微動探査法の適用性-埼玉県南部地域の三次元S波速度構造の推定-,BUTSURI-TANSA,Vol.55,No.2,pp.127-143.
4) 山中浩明・山田伸之(2002) :微動アレイ観測による関東平野の3次元S波速度構造モデルの構築, 物理探査,55,pp.53-65.