[S-SS25] 強震動・地震災害

[SSS25-P31] 常時微動のH/Vスペクトルの推定値とF分布との関係に関する一検討

*長 郁夫¹、岩田 貴樹² (1.独立行政法人 産業技術総合研究所、2.常磐大学)

キーワード：微動、H/Vスペクトル、確率分布

3種類の微動波形（ランダム位相波形、地盤モデルを仮定した現実的な数値微動波形、観測微動波形）を用いてそれぞれHorizontal-to-Vertical Spectral Ratio (HVSR)推定値とF分布との関係を評価した。F分布との適合性の評価には、Kolmogorov-Smirnov (KS) 検定の統計量Dを乖離度の指標として用いた。ランダム位相波を用いたHVSR推定のシミュレーションによって、微動の波の到来方向の分散が大きければ大きいほどHVSRはF分布に近付くことが示された。すなわち、F分布との乖離度は微動の波動場に依存する。現実的な数値微動波形及び観測微動波形を用いて様々なスペクトル解析パラメータの組み合わせでHVスペクトルを推定したところ、HVSRの推定値の標本数が3000の時にはDの実現値が1.5～6 %の範囲に入ることが示された。この範囲にはF分布の統計的適合性の閾値が含まれるので、このばらつきの中でF分布の統計的適合性は変わり得る。以上の結果は、現実の微動では標本数が十分に大きい場合のDの下限すなわち微動のHVSRとF分布との乖離度は数%もしくはそれ以下であること、Dの具体的な値や適合度検定の結果は微動の波の到来方向の偏りやその揺らぎに依存する可能性があることを示している。