日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS26] 地殻構造

2016年5月22日(日) 10:45 〜 12:00 201A (2F)

コンビーナ:*尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、座長:小菅 正裕(弘前大学理工学研究科)、利根川 貴志(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)

11:45 〜 12:00

[SSS26-10] 秋田県森吉山の誘発地震発生域におけるS波偏向異方性

*小菅 正裕1 (1.弘前大学理工学研究科)

キーワード:S波スプリッティング、異方性、誘発地震

秋田県森吉山周辺では2011年東北地方太平洋沖地震後に活発な誘発地震活動が始まり,現在でも継続している.その震源域近傍で実施した臨時地震観測のデータを用いて,2000個以上の地震を対象にS波スプリッティング解析を行った.観測点は震源域直上の森吉観測点と,震源域から北に5 km程度離れたアレイ観測点のうちの1点,及び震源域から西南西に10 km程度離れた定常観測点のHi-net阿仁である.スプリッティングの2つのパラメータ,速いS波の振動方向φと遅いS波の到達時刻差δtを変えて直交する2方向のS波波形を合成し,2つの波形の相互相関係数が最大となるφとδtを求めた.
震源域直上の森吉観測点では,φは北西−南東方向を向きδtは0.015秒程度である.それに対して,アレイ観測点と定常観測点でのφは南北でδtはほぼ0秒である.震源域直上の観測点でのδtは地震波のサンプリング間隔の3倍程度とわずかではあるが,δtの頻度分布はこの値が他の2点とは明確に異なることを示し,有意な観測結果と考えられる.この観測事実は,地震波が震源域を下から上に通過する過程で異方性の影響を受けていることを明瞭に示している.ただし,震源域直上で観測されたφは,メカニズム解のP軸方位よりはむしろT軸方位と調和的である.
観測された異方性が誘発地震活動によるとした場合,それがいつ形成されたかが問題になる.しかし,臨時観測は東北地方太平洋沖地震の発生から1年半ほど経過してから開始したので,異方性の形成時期は不明である.観測開始の2012年9月から2014年5月までの期間での異方性パラメータの時間変化を調べたところ,δtについては測定のばらつきを超える変化は認められなかった.φはこの期間で20°程度小さくなり,より東西に近い偏向に変わったように見えるが,有意な変化かどうかは詳細な検討が必要である.