日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS26] 地殻構造

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)

17:15 〜 18:30

[SSS26-P01] 上町断層帯を横断する高石-堺測線に沿う泉北グラーベンでの稠密重力測定

*領木 邦浩1 (1.兵庫職業能力開発促進センター電気・電子系地球環境電気資源学教室)

キーワード:大阪平野、反射法地震探査、地下構造、逆断層、数値晦理情報、公共墓準点

1.概要
大阪平野中央部に位置する上町断層帯では活断層で発生する地震を想定した基盤調査が精力的に進められてきており(例えば、岩田・他(2013)など)、その構造がかなり明らかにされてきた。しかしながら、特に重力測定による構造解析は充分な測定点密度で実施されているとは言いがたい。そこで、これを補うべく、筆者らは大阪泉北地域での稠密重力測定(例えば、領木(2011)など)を進めてきた。今回、岩田・他(2013)が実施したP波反射法地震探査の高石-堺測線にほぼ沿う位置で稠密に重力異常の測定を行う機会を得たので報告する。
2.対象地域
今回の重力測定測線は大阪府高石市高砂から同堺市中区八田北町までの東西投影距離約8.3kmであり、上町断層系のいくつかの断層(中田・他、1996)に交差している。
3.重力補正に用いた地理情報
測定点の緯経度および標高は国土地理院が提供する数値情報(国土地理院,2013)を使用した。これらは測量記録閲覧の一環として国土地理院の基準点成果等閲覧サービスから検索利用できる、国土地理院の基本基準点や各市町村が管理する公共基準点の測量成果である。今回は重力の各種補正と測定点の図示にこれらの数値位置情報を使用した。なお、主に道路上に設置されている公共基準点、特に4級公共基準点相当の都市再生街区基本調査補助点は道路の改変などにより改埋や亡失があるが、重力異常を算出する際の補正値の精度から考えて大きな誤差を伴わないことが推測されるため、前者の場合は新基準点の標識上で、後者の場合は地図上から指定される旧基準点の位置に相当する道路面上で重力の測定を行った。ここで後者では領木(2015)の手法を準用している。
4.測定結果
東西方向に投影した測定結果を図1に示す。単純ブーゲー異常値では地形補正は施していない。図中の矢印は中田・他(1996)による活断層の位置を示している。図1は岩田・他(2013)に掲げられた高石-堺測線におけるP波反射法地震探査地質構造解析図と大変調和的である。
5.考察
図1と中田・他(1996)の活断層図を比較すると、前者に示される重力異常の変曲位置の開始地点が後者の示す活断層位置に一致していることがわかる。傾斜した断層構造による重力断面では重力異常値の変曲点付近が断層の中心位置となるため、断層面の延長上が厚い堆積層を切って、もしくは撓曲させて地表面で活断層として観測される位置は基盤の断層の中心位置とは一致せず、逆断層では下盤側から若干離れた位置に現れる。また、未固結層中ではしばしば逆断層の傾斜が低角となるので、その結果地表で認められる活断層の位置は基盤の断層の中心位置から、より離れてゆく可能性がある。従って、今回の重力異常が示す構造は中田・他(1996)による活断層構造と整合的であると判断できる。
図1には第六系平面直角座標Y座標-53km付近に東落ちの0.7mgal程度の変化があり、-51.5km付近の西落ちを呈する上町断層との間に低重力帯が認められる。この重力異常は岩田・他(2013)が示す高石-堺測線における反射法の構造解釈図で指摘された“撓み構造”に対比でき、その構造の基盤深度は-1750m前後と解釈されている。このような構造は今回の測線の南西約3.5kmの重力測線にも認められ(領木,2014)、岩田・他(2011)の大津川測線でも狭いながらも見ることが出来る。以上の観測事実から、ここには東落ち・西落ち二対の地下構造によって地溝帯が形成されているものと考えられ、本報告ではこの地溝帯を“泉北グラーベン”と呼ぶことにする。泉北グラーベンの東縁はこの付近で三分割する上町断層帯の最も西側の西落ちの逆断層であるが、重力異常の形態から考えると泉北グラーベンの西縁もこれと対を成す東落ちの逆断層である可能性が高い。
謝辞
秋田大学国際資源学部資源開発環境学教室の西谷忠師教授を始めとする物理探査学研究室の皆様には重力測定に際し過大な配慮を賜った。記して謝意を添します。
参考文献
岩田・他(2011):断層帯の三次元的形状・断層帯周辺の地殻構造解明のための調査観測,上町断層における重点的な調査観測平成22年度成果報告書,文部科学省研究開発局・京都大学防災研究所,p. 19 - 77.
岩田・他(2013):断層帯の三次元的形状・断層帯周辺の地殻構造解明のための調査観測,上町断層における重点的な調査観測平成24年度成果報告書,文部科学省研究開発局・京都大学防災研究所,p. 66 - 163.
国土地理院(2013):地理院地図の公開について,http://www.gsi.go.jp/johofukyu/johofukyu40032.html.
中田・他(1996):1:25,000 都市圏活断層図「大阪西南部」,国士地理院技術資料,D1-No. 333.
領木(2011):和泉市西北部-中央部での都市地盤構造解析のための重力測定,近畿職業能力開発大学校紀要, vol. 19, p. 18 - 19.
領木(2014):地理院地図を活用した重力測定値の補正と上町断層南部測線データの再検討,日本地球惑星科学連合2014年大会予稿集,SSS26-P02.
領木(2015):基本基準点測量および街区基本調査の成果を援用した都市域での籔外調査 -基準点上での稠密重力測定例-,日本地球惑星科学連合2015年大会予稿集,S-SS31-PO5.