14:45 〜 15:10
[SSS27-05] ALOS-2干渉SARデータから得られた2015年ネパール(Gorkha)地震の地殻変動と震源断層モデル
★招待講演
キーワード:地殻変動、InSAR、滑り分布
2015年4月25日,ネパールでMw7.8(USGS)の地震が発生した.その約2週間後の5月12日には,本震の震源域の東端付近で,Mw7.3の最大余震が発生した.本研究では,ALOS-2のSAR干渉解析で得られた地殻変動とそれを用いて推定した滑り分布モデルについて発表する.
本解析では,2014年にJAXAにより打ち上げられたLバンド合成開口レーダー衛星であるALOS-2のデータを用いた.ALOS-2はScanSARと呼ばれる350km幅を一度に観測できるモードを搭載している.ALOS-2では,ScanSARモードによる干渉処理が標準的に可能になったことから,広い領域に及ぶと考えられる本地震の地殻変動の計測には最適な観測データである.このScanSARデータを用いた干渉解析を実施したことが本研究の特長の1つとなっている.
ScanSARを用いた干渉処理により本地震に伴う広域の地殻変動が検出された.地表変位は東西約160kmに広がり,変動域の南部では衛星に近づく変位が,北部では衛星から遠ざかる変位が観測された.最大の変動はカトマンズの東20-30kmの位置に見られた.北行及び南行の干渉データから,準上下成分を計算したところ,約1.4mの隆起が見積もられた.
本震と最大余震を含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データと北行軌道のstrip-ScanSAR干渉データに加え,本震のみを含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データとカトマンズを含む北行軌道のstrip-strip干渉データ,最大余震のみを含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データの3種類のデータセットを作成し,それぞれの震源断層モデル推定を実施した.走向角が290度,傾斜角が10度の10km四方の矩形断層で構成された長さ220km幅150kmの断層を仮定して,インヴァージョンにより滑りを推定した.得られた震源断層モデルの特徴は以下の通りである.本震を含むデータの解析から,カトマンズの北東20-30kmの領域の直下に,最大6m超の滑りが推定された.滑りの中心域は,震源から東南東に約80kmの位置に見られ、震源周辺の滑りは相対的に小さい.震源の西側には大きな滑りが見られないことから,破壊は震源から東方向に進んだと考えられる.滑りはほぼ純粋な逆断層滑りで,深部の滑りにはやや右横ずれが含まれる.滑りは断層上端から傾斜方向50-100kmの帯状の領域に見られ,約100kmを超えると,有意な滑りは見られなくなる.このことは,これより深部ではプレート間の固着が弱く非地震性の滑りが卓越するとする多くの先行研究の結果と調和的である.本震と最大余震を両方含む滑り分布モデルから見積もられる地震モーメントは7.0×1020 Nm (Mw7.8)である.なお,本震及び最大余震のみを含むデータから求められた地震モーメントはそれぞれ,6.1×1020 Nm (Mw7.8)及び 1.1×1020 Nm (Mw7.3)である.
本震と最大余震を含むデータから得られた滑り分布を詳細に見ると,本震の滑り領域の東端で発生した最大余震のすぐ西隣に,不自然に滑りが欠如した半径10km程度の領域が認められる.本震及び最大余震による滑りにより,この領域は逆断層滑りを促進する強い剪断応力にさらされていると考えられる.この滑りの欠損が,地震を起こすような瞬間的な滑りで解放されるか非地震性滑りで解放されるかは不明であるが,この領域でも4m程度の滑りが発生すると仮定すると,Mw7程度に相当する滑りが今後発生する可能性があると考えられる.
謝辞: 本研究で用いたALOS-2データは,地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループ(地震WG)を通じて,(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けました.原初データの所有権はJAXAにあります.SAR干渉解析にASTER GDEMを使用しました.ASTER GDEMの原データは経済産業省及びNASAに帰属します.
本解析では,2014年にJAXAにより打ち上げられたLバンド合成開口レーダー衛星であるALOS-2のデータを用いた.ALOS-2はScanSARと呼ばれる350km幅を一度に観測できるモードを搭載している.ALOS-2では,ScanSARモードによる干渉処理が標準的に可能になったことから,広い領域に及ぶと考えられる本地震の地殻変動の計測には最適な観測データである.このScanSARデータを用いた干渉解析を実施したことが本研究の特長の1つとなっている.
ScanSARを用いた干渉処理により本地震に伴う広域の地殻変動が検出された.地表変位は東西約160kmに広がり,変動域の南部では衛星に近づく変位が,北部では衛星から遠ざかる変位が観測された.最大の変動はカトマンズの東20-30kmの位置に見られた.北行及び南行の干渉データから,準上下成分を計算したところ,約1.4mの隆起が見積もられた.
本震と最大余震を含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データと北行軌道のstrip-ScanSAR干渉データに加え,本震のみを含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データとカトマンズを含む北行軌道のstrip-strip干渉データ,最大余震のみを含む南行軌道のScanSAR-ScanSAR干渉データの3種類のデータセットを作成し,それぞれの震源断層モデル推定を実施した.走向角が290度,傾斜角が10度の10km四方の矩形断層で構成された長さ220km幅150kmの断層を仮定して,インヴァージョンにより滑りを推定した.得られた震源断層モデルの特徴は以下の通りである.本震を含むデータの解析から,カトマンズの北東20-30kmの領域の直下に,最大6m超の滑りが推定された.滑りの中心域は,震源から東南東に約80kmの位置に見られ、震源周辺の滑りは相対的に小さい.震源の西側には大きな滑りが見られないことから,破壊は震源から東方向に進んだと考えられる.滑りはほぼ純粋な逆断層滑りで,深部の滑りにはやや右横ずれが含まれる.滑りは断層上端から傾斜方向50-100kmの帯状の領域に見られ,約100kmを超えると,有意な滑りは見られなくなる.このことは,これより深部ではプレート間の固着が弱く非地震性の滑りが卓越するとする多くの先行研究の結果と調和的である.本震と最大余震を両方含む滑り分布モデルから見積もられる地震モーメントは7.0×1020 Nm (Mw7.8)である.なお,本震及び最大余震のみを含むデータから求められた地震モーメントはそれぞれ,6.1×1020 Nm (Mw7.8)及び 1.1×1020 Nm (Mw7.3)である.
本震と最大余震を含むデータから得られた滑り分布を詳細に見ると,本震の滑り領域の東端で発生した最大余震のすぐ西隣に,不自然に滑りが欠如した半径10km程度の領域が認められる.本震及び最大余震による滑りにより,この領域は逆断層滑りを促進する強い剪断応力にさらされていると考えられる.この滑りの欠損が,地震を起こすような瞬間的な滑りで解放されるか非地震性滑りで解放されるかは不明であるが,この領域でも4m程度の滑りが発生すると仮定すると,Mw7程度に相当する滑りが今後発生する可能性があると考えられる.
謝辞: 本研究で用いたALOS-2データは,地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループ(地震WG)を通じて,(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けました.原初データの所有権はJAXAにあります.SAR干渉解析にASTER GDEMを使用しました.ASTER GDEMの原データは経済産業省及びNASAに帰属します.