16:20 〜 16:45
[SSS27-08] 2014年長野県北部の地震に伴う地殻変動と断層モデル
★招待講演
キーワード:2014年長野県北部の地震、だいち2号、干渉SAR、地震時変動、余効変動
はじめに
2014年長野県北部の地震(M6.7)は、糸魚川-静岡構造線断層帯に属する神城断層が活動した地震である.この地震では、震源域南部で地表地震断層が現れるなど、顕著な地殻変動が観測された。この地震に伴う地殻変動や地震時の断層運動を詳細に把握することは、活断層の長期評価を考える上でも重要である。
本震による地殻変動
この地震に伴う地殻変動が、GNSS連続観測点網(GEONET)およびALOS-2(だいち2号)により捉えられた。
GEONETでは、震源に最も近い白馬観測点で約29cmの南東方向への変位,約13cmの沈降が観測された。また、周辺の観測点でも、震源域の北西側で南東方向、南東側で北西方向に1cm程度の地殻変動が観測された。GEONETの観測点密度は平均で20km程度の間隔であり、GEONETだけでは今回の地震に伴う地殻変動を十分に把握できたとは言い難い。
ALOS-2(だいち2号)のデータを用いたSAR干渉解析により、地震に伴う地殻変動が空間的に詳細に明らかになった。解析に用いたデータは、南行軌道の右方向と左方向からの観測データ、及び北行軌道の右方向からの観測データである。SAR干渉解析からは、神城断層の北部で20㎞程度の東傾斜の断層が破壊したこと、左横ずれ成分を含む逆断層運動であったこと、震央近くでは、神城断層に沿って約10㎞にわたり最大約1mに達する変動が生じたこと、等が明らかとなった。また、変位量分布から、本震の断層面は浅部で低角、深部で高角であると推測された。
また、SAR干渉解析に加え、ピクセルオフセット法によりレンジ、アジマス方向それぞれの成分の地表変位の計測を行った。3方向以上の変位量データが得られたことで、地殻変動の三次元成分の空間分布を求めることができた。神城断層近傍で変位量が大きく、1m以上の隆起量が得られた。
本震の断層モデル
GEONETによる地殻変動データおよびALOS-2データのSAR干渉解析結果に基づき、断層面上の滑り分布の推定を行った。
断層のジオメトリは、干渉画像から推測された、浅部側で低角、深部側で高角となる折れ曲がった断層面を仮定し、断層面の浅部の上端を地表地震断層の位置に合わせた。断層面の傾斜については複数のパラメータを試み、観測結果を最も良く説明する組み合わせとして、断層面の傾斜を、2kmより浅部(浅部セグメント)ではやや低角の40°、2kmより深部(深部セグメント)ではやや高角の60°と設定した。
推定の結果、全体としては左横ずれ成分を含む逆断層滑りが推定され、浅部セグメントの南部で1m以上の大きな滑りが得られた。また、深部セグメントでは、本震の震源付近を中心として1m程度の滑りが推定された。それに対し、浅部セグメントの北部では顕著な滑りは見られなかった。
余効変動
本震に伴う地殻変動に引き続き、余効変動が震源域周辺で観測されている.
震源域周辺のGEONETの観測結果から、余効変動は震源域を挟んで北西-南東方向の短縮を示し,地震時の変位の特徴と類似している.ほとんどの観測点では地震後3か月程度で変動がほぼ見られなくなったが、震源域に最も近い白馬観測点では2015年11月時点でも変動が継続しているように見え、変位量は約1.8㎝となっている。
また、ALOS-2データのSAR干渉解析により、震源域近傍での余効変動が捉えられた。地震後に北行軌道から観測されたデータ(2014年11月28日と2015年6月26日)のSAR干渉解析を行った結果,地震に伴って最も大きな変位が観測された震源域南部において,衛星に近づく向きに4~5㎝程度の変位を検出した.変位が検出された領域は,地震時に出現した地表地震断層の上盤側にあたり,変位の向きは地震時の変位と同様である.南行軌道からの観測データでは顕著な地殻変動は見られなかった。従って、検出された変動は、隆起及び西方向への変位と考えられる。
なお,地表地震断層に沿っては,位相の不連続は明瞭には見られず,地震後には顕著なずれは生じていないと考えられる.
謝辞
本研究で用いたALOS-2 データは,地震予知連絡会SAR 解析ワーキンググループ(地震WG)を通じて,(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けました.原初データの所有権はJAXA にあります.
2014年長野県北部の地震(M6.7)は、糸魚川-静岡構造線断層帯に属する神城断層が活動した地震である.この地震では、震源域南部で地表地震断層が現れるなど、顕著な地殻変動が観測された。この地震に伴う地殻変動や地震時の断層運動を詳細に把握することは、活断層の長期評価を考える上でも重要である。
本震による地殻変動
この地震に伴う地殻変動が、GNSS連続観測点網(GEONET)およびALOS-2(だいち2号)により捉えられた。
GEONETでは、震源に最も近い白馬観測点で約29cmの南東方向への変位,約13cmの沈降が観測された。また、周辺の観測点でも、震源域の北西側で南東方向、南東側で北西方向に1cm程度の地殻変動が観測された。GEONETの観測点密度は平均で20km程度の間隔であり、GEONETだけでは今回の地震に伴う地殻変動を十分に把握できたとは言い難い。
ALOS-2(だいち2号)のデータを用いたSAR干渉解析により、地震に伴う地殻変動が空間的に詳細に明らかになった。解析に用いたデータは、南行軌道の右方向と左方向からの観測データ、及び北行軌道の右方向からの観測データである。SAR干渉解析からは、神城断層の北部で20㎞程度の東傾斜の断層が破壊したこと、左横ずれ成分を含む逆断層運動であったこと、震央近くでは、神城断層に沿って約10㎞にわたり最大約1mに達する変動が生じたこと、等が明らかとなった。また、変位量分布から、本震の断層面は浅部で低角、深部で高角であると推測された。
また、SAR干渉解析に加え、ピクセルオフセット法によりレンジ、アジマス方向それぞれの成分の地表変位の計測を行った。3方向以上の変位量データが得られたことで、地殻変動の三次元成分の空間分布を求めることができた。神城断層近傍で変位量が大きく、1m以上の隆起量が得られた。
本震の断層モデル
GEONETによる地殻変動データおよびALOS-2データのSAR干渉解析結果に基づき、断層面上の滑り分布の推定を行った。
断層のジオメトリは、干渉画像から推測された、浅部側で低角、深部側で高角となる折れ曲がった断層面を仮定し、断層面の浅部の上端を地表地震断層の位置に合わせた。断層面の傾斜については複数のパラメータを試み、観測結果を最も良く説明する組み合わせとして、断層面の傾斜を、2kmより浅部(浅部セグメント)ではやや低角の40°、2kmより深部(深部セグメント)ではやや高角の60°と設定した。
推定の結果、全体としては左横ずれ成分を含む逆断層滑りが推定され、浅部セグメントの南部で1m以上の大きな滑りが得られた。また、深部セグメントでは、本震の震源付近を中心として1m程度の滑りが推定された。それに対し、浅部セグメントの北部では顕著な滑りは見られなかった。
余効変動
本震に伴う地殻変動に引き続き、余効変動が震源域周辺で観測されている.
震源域周辺のGEONETの観測結果から、余効変動は震源域を挟んで北西-南東方向の短縮を示し,地震時の変位の特徴と類似している.ほとんどの観測点では地震後3か月程度で変動がほぼ見られなくなったが、震源域に最も近い白馬観測点では2015年11月時点でも変動が継続しているように見え、変位量は約1.8㎝となっている。
また、ALOS-2データのSAR干渉解析により、震源域近傍での余効変動が捉えられた。地震後に北行軌道から観測されたデータ(2014年11月28日と2015年6月26日)のSAR干渉解析を行った結果,地震に伴って最も大きな変位が観測された震源域南部において,衛星に近づく向きに4~5㎝程度の変位を検出した.変位が検出された領域は,地震時に出現した地表地震断層の上盤側にあたり,変位の向きは地震時の変位と同様である.南行軌道からの観測データでは顕著な地殻変動は見られなかった。従って、検出された変動は、隆起及び西方向への変位と考えられる。
なお,地表地震断層に沿っては,位相の不連続は明瞭には見られず,地震後には顕著なずれは生じていないと考えられる.
謝辞
本研究で用いたALOS-2 データは,地震予知連絡会SAR 解析ワーキンググループ(地震WG)を通じて,(国研)宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供を受けました.原初データの所有権はJAXA にあります.