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[SSS27-18] 固着すべり振動子の周期外力への応答(2)
キーワード:固着すべり振動子、同期、リズム、外力、地震サイクルシミュレーション
古くから、地震活動の周期性や季節性について、その統計的優位性に関する多くの研究がなされてきた。また、最近では、その発生要因まで含めた研究が現れている。そういった研究として、例えば、潮汐による断層面での応力変化を考慮した地震活動と地球・海洋潮汐との相関(Tsuruoka & Ohtake, 2002)、プレート境界固着域深部で発生する低周波微動活動と海洋潮汐との相関(Nakata et al.,2008)とその経験的非線形応答式の提唱( Ide & Tanaka,2014)、大地震の活動と月の長期運動(8.85年)との相関と潮汐効果の増幅機構の提唱(Tanaka,2014)、およびこれまで論じられてきた南海トラフにおける巨大地震発生時期の季節性(Mogi,1969; Ohtake & Nakahara,1999)に加え、月の長期運動(18.61年)との相関の指摘(Ide & Tanaka,2014)、が挙げられる。また、最近、東北日本プレート境界において1-6年の周期を持つ繰り返し地震群が存し、そのゆっくりすべりが大きな地震をトリガーしているという指摘がなされている(Uchida et al.,2016)。
このように、ゆっくりすべり(SSE)から大地震に至る地震活動には周期性が見られる。またプレート境界や内陸で繰り返し発生する地震には発生サイクルというリズムと連動破壊と言った現象が見られる。前者の周期性を地球・海洋潮汐といった周期的外力に対する固着・すべり振動子の同期現象として、また後者の地震発生サイクルを、アスペリティ内の固着・すべり振動子間の相互作用から生じる集団同期現象、連動破壊をアスペリティ間の破壊の同期現象とみなし、岩石実験から得られた速度・状態依存摩擦則に基づく地震発生シミュレーションと非線形科学分野で生まれた同期理論(例えば、Kuramoto,1984)を用いて、新たな地震活動・地震発生サイクモデルを構築し、地震活動予測を目指す目的で基礎的な研究を開始した。
Sugiura et al.(2014)は、速度状態依存摩擦則に従う連結バネ・スライダーモデルでの同期現状を調べているが、周期的外力への応答はまだ調べられていない。そこで、平原(2015)(日本地震学会2015年秋季大会)では、固着すべりを繰り返す1自由度のバネスライダー振動子に周期的外力が加わる場合の系の応答を報告した。本発表はその続報である。
平原(2015)では、地震サイクル中の応力変化の1/10、1/100の振幅をもつ周期的外力が加わるとき、外力の振動数をfe、変化した系の振動数をfcとすると、fe:fc=m:n(m,nは互いに素な正の整数)となるm:n同期現象(悪魔の階段と呼ばれる)が見られた。潮汐による振幅は数kPa~10kPa程度であり、応力変化の小さなSSEには潮汐による周期外力による同期が見られる可能性を示唆した。
本発表では、同期理論で用いられている位相応答曲線を数値シミュレーションにより求め、m:n同期における同期幅といった現象についての説明を試みる。次に単一の振動数でなく複数の振動数を持つ外力への応答を見る。あるていど実際的な地球・海洋潮汐モデルに基づく外力を用いて検討を試みる。更に、上記の同期現象とは別に、本研究では非同期現象においても興味深い現象が確認されたので報告する。すなわち、m:n同期以外の非同期外力の場合、繰り返し間隔が大きくばらつく現象が見られた。南海トラフ地震を模した繰返し周期(自然周期To)112年をもつ固着すべり振動子に自然周期以上の周期を持つ外力を加えると、1:1同期を示すTe=117年の外力から2倍の周期まで周期を増やしていくと、繰り返し間隔の標準偏差がゼロから17-18年に増大する現象が見られた。なおこの場合、系の平均的周期は最初の自然周期とは大きく異ならない。SSEや地震活動の観測された周期性にはある程度のばらつきが見られる場合が多い。また南海トラフ巨大地震の発生間隔が200年~90年とばらついているように、地震サイクルにも繰り返し間隔に大きな変化が見られる。本研究で得られた非同期現象がどのようにこう言った現象の解明に役立つかは不明であるが、興味深い現象である。
このように、ゆっくりすべり(SSE)から大地震に至る地震活動には周期性が見られる。またプレート境界や内陸で繰り返し発生する地震には発生サイクルというリズムと連動破壊と言った現象が見られる。前者の周期性を地球・海洋潮汐といった周期的外力に対する固着・すべり振動子の同期現象として、また後者の地震発生サイクルを、アスペリティ内の固着・すべり振動子間の相互作用から生じる集団同期現象、連動破壊をアスペリティ間の破壊の同期現象とみなし、岩石実験から得られた速度・状態依存摩擦則に基づく地震発生シミュレーションと非線形科学分野で生まれた同期理論(例えば、Kuramoto,1984)を用いて、新たな地震活動・地震発生サイクモデルを構築し、地震活動予測を目指す目的で基礎的な研究を開始した。
Sugiura et al.(2014)は、速度状態依存摩擦則に従う連結バネ・スライダーモデルでの同期現状を調べているが、周期的外力への応答はまだ調べられていない。そこで、平原(2015)(日本地震学会2015年秋季大会)では、固着すべりを繰り返す1自由度のバネスライダー振動子に周期的外力が加わる場合の系の応答を報告した。本発表はその続報である。
平原(2015)では、地震サイクル中の応力変化の1/10、1/100の振幅をもつ周期的外力が加わるとき、外力の振動数をfe、変化した系の振動数をfcとすると、fe:fc=m:n(m,nは互いに素な正の整数)となるm:n同期現象(悪魔の階段と呼ばれる)が見られた。潮汐による振幅は数kPa~10kPa程度であり、応力変化の小さなSSEには潮汐による周期外力による同期が見られる可能性を示唆した。
本発表では、同期理論で用いられている位相応答曲線を数値シミュレーションにより求め、m:n同期における同期幅といった現象についての説明を試みる。次に単一の振動数でなく複数の振動数を持つ外力への応答を見る。あるていど実際的な地球・海洋潮汐モデルに基づく外力を用いて検討を試みる。更に、上記の同期現象とは別に、本研究では非同期現象においても興味深い現象が確認されたので報告する。すなわち、m:n同期以外の非同期外力の場合、繰り返し間隔が大きくばらつく現象が見られた。南海トラフ地震を模した繰返し周期(自然周期To)112年をもつ固着すべり振動子に自然周期以上の周期を持つ外力を加えると、1:1同期を示すTe=117年の外力から2倍の周期まで周期を増やしていくと、繰り返し間隔の標準偏差がゼロから17-18年に増大する現象が見られた。なおこの場合、系の平均的周期は最初の自然周期とは大きく異ならない。SSEや地震活動の観測された周期性にはある程度のばらつきが見られる場合が多い。また南海トラフ巨大地震の発生間隔が200年~90年とばらついているように、地震サイクルにも繰り返し間隔に大きな変化が見られる。本研究で得られた非同期現象がどのようにこう言った現象の解明に役立つかは不明であるが、興味深い現象である。