17:15 〜 18:30
[SSS27-P13] 三陸沖から房総沖にかけての準動的地震発生サイクルシミュレーション
キーワード:地震発生サイクルシミュレーション、東北地方太平洋沖地震
1. はじめに
三陸沖から房総沖にかけては規模 (M) 7-8クラスの地震が各領域で繰り返し発生していることが知られており、さらに2011年に東北地方太平洋沖地震が発生したことでM9クラスの地震も同様に繰り返し発生している可能性があることも分かった。
そこで、これらM7-9クラスの繰り返し発生する地震の規模及び発生周期 (T) を再現する地震発生シミュレーションモデルの作成を試みたのでその結果を報告する。
2. 解析方法
再現の対象とした繰り返し発生するプレート間地震は、地震調査研究推進本部地震調査委員会 (2011) の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価 (第二版) について」を参考に、三陸北部の地震 (M~8.0、T~100年)、宮城県沖の地震 (M~7.5、T~40年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~8.0、T~110年)、茨城県沖の地震 (M~7.0、T~20年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~9.0、T~600年) とした。このほか、繰り返し性は明確ではないが特徴的な地震として、1896年に三陸沖の海溝寄りで発生した津波地震 (明治三陸地震)、1938年に福島県沖で続発した地震活動があり、これらについても再現を試みる。
地震発生サイクルをシミュレートするモデルには、地震波放射を考慮した弾性論 (Rice (1993)) から導かれる運動方程式及びすべり速度・状態依存摩擦構成則 (Dieterich (1979)) とその発展則composite-law (Kato and Tullis (2001)) を用いた。解析領域はアスペリティが十分に含まれるように三陸沖から房総沖にかけての領域を設定した。三次元プレート境界の形状はNakajima and Hasegawa (2006) に従い、1辺が約5 kmの三角形セル17,507個で表現した。陸に対する太平洋プレートの沈み込み速度はWei and Seno (1998) 等を参考に、北 (8.2 cm/year) から南 (8.0 cm/year) へ徐々に小さくなるよう設定した。アスペリティの領域は中央防災会議 (2005) で設定された断層モデル等を参考に設定した。摩擦パラメータ (A, B, L) は各地震の規模及び周期を再現できるよう試行錯誤的に設定した。このとき、アスペリティの周囲の領域 (背景領域) が速度強化 (A – B > 0) であるモデル (背景安定すべり型モデル) と、背景領域が速度弱化 (A – B < 0) であるモデル (階層型モデル) の2ケースをエンドメンバーとした。
3. 解析結果
現時点で、三陸沖から房総沖にかけてのM7-9クラスの繰り返し発生する地震について最も良く再現できたモデルでの規模や周期は、背景安定すべり型モデルで三陸北部の地震 (M~8.0、T~61-103年)、宮城県沖の地震 (M~7.4、T~30-74年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~7.9、T~104-130年)、茨城県沖の地震 (M~6.8、T~14-52年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~8.3、T~203-232年 (そのうちの数回に1回M8後半の地震)) であった。なお、三陸北部の地震の数年後に三陸沖の海溝寄りで地震が発生するケースが見られた。また、福島沖では複数のアスペリティが連続して地震となるケースが見られた。
一方の階層型モデルでは、三陸北部の地震 (M~7.9、T~66-140年)、宮城県沖の地震 (M~7.3、T~31-149年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~7.8、T~120-216年)、茨城県沖の地震 (M~6.8、T~9-51年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~8.5、T~294-526年 (そのうちの数回に1回M9の地震)) であった。なお、三陸沖の海溝寄りでは地震とならなかったが、福島沖では複数のアスペリティが連続して地震となるケースが見られた。
このとき、両モデルにおける各アスペリティは同じ領域を設定し同じ摩擦パラメータを与えていたが、地震の発生周期は階層型モデルの方が長くなった (ただし、東北地方太平洋沖型の地震直前における各アスペリティの周期は両モデルで概ね同じ)。これは、背景安定すべり型モデルに比べ階層型モデルの方が背景領域における地震間の定常的なすべり量が小さく、アスペリティへのローディングレートが小さいためと考えられる。
今後は、シミュレートされた東北地方太平洋沖型の地震をより実際の地震に近づけるために、海溝沿いのアスペリティを中心に摩擦パラメータなどのさらなる検討を行いたい。
三陸沖から房総沖にかけては規模 (M) 7-8クラスの地震が各領域で繰り返し発生していることが知られており、さらに2011年に東北地方太平洋沖地震が発生したことでM9クラスの地震も同様に繰り返し発生している可能性があることも分かった。
そこで、これらM7-9クラスの繰り返し発生する地震の規模及び発生周期 (T) を再現する地震発生シミュレーションモデルの作成を試みたのでその結果を報告する。
2. 解析方法
再現の対象とした繰り返し発生するプレート間地震は、地震調査研究推進本部地震調査委員会 (2011) の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価 (第二版) について」を参考に、三陸北部の地震 (M~8.0、T~100年)、宮城県沖の地震 (M~7.5、T~40年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~8.0、T~110年)、茨城県沖の地震 (M~7.0、T~20年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~9.0、T~600年) とした。このほか、繰り返し性は明確ではないが特徴的な地震として、1896年に三陸沖の海溝寄りで発生した津波地震 (明治三陸地震)、1938年に福島県沖で続発した地震活動があり、これらについても再現を試みる。
地震発生サイクルをシミュレートするモデルには、地震波放射を考慮した弾性論 (Rice (1993)) から導かれる運動方程式及びすべり速度・状態依存摩擦構成則 (Dieterich (1979)) とその発展則composite-law (Kato and Tullis (2001)) を用いた。解析領域はアスペリティが十分に含まれるように三陸沖から房総沖にかけての領域を設定した。三次元プレート境界の形状はNakajima and Hasegawa (2006) に従い、1辺が約5 kmの三角形セル17,507個で表現した。陸に対する太平洋プレートの沈み込み速度はWei and Seno (1998) 等を参考に、北 (8.2 cm/year) から南 (8.0 cm/year) へ徐々に小さくなるよう設定した。アスペリティの領域は中央防災会議 (2005) で設定された断層モデル等を参考に設定した。摩擦パラメータ (A, B, L) は各地震の規模及び周期を再現できるよう試行錯誤的に設定した。このとき、アスペリティの周囲の領域 (背景領域) が速度強化 (A – B > 0) であるモデル (背景安定すべり型モデル) と、背景領域が速度弱化 (A – B < 0) であるモデル (階層型モデル) の2ケースをエンドメンバーとした。
3. 解析結果
現時点で、三陸沖から房総沖にかけてのM7-9クラスの繰り返し発生する地震について最も良く再現できたモデルでの規模や周期は、背景安定すべり型モデルで三陸北部の地震 (M~8.0、T~61-103年)、宮城県沖の地震 (M~7.4、T~30-74年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~7.9、T~104-130年)、茨城県沖の地震 (M~6.8、T~14-52年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~8.3、T~203-232年 (そのうちの数回に1回M8後半の地震)) であった。なお、三陸北部の地震の数年後に三陸沖の海溝寄りで地震が発生するケースが見られた。また、福島沖では複数のアスペリティが連続して地震となるケースが見られた。
一方の階層型モデルでは、三陸北部の地震 (M~7.9、T~66-140年)、宮城県沖の地震 (M~7.3、T~31-149年)、三陸沖南部海溝寄りの地震 (M~7.8、T~120-216年)、茨城県沖の地震 (M~6.8、T~9-51年)、東北地方太平洋沖型の地震 (M~8.5、T~294-526年 (そのうちの数回に1回M9の地震)) であった。なお、三陸沖の海溝寄りでは地震とならなかったが、福島沖では複数のアスペリティが連続して地震となるケースが見られた。
このとき、両モデルにおける各アスペリティは同じ領域を設定し同じ摩擦パラメータを与えていたが、地震の発生周期は階層型モデルの方が長くなった (ただし、東北地方太平洋沖型の地震直前における各アスペリティの周期は両モデルで概ね同じ)。これは、背景安定すべり型モデルに比べ階層型モデルの方が背景領域における地震間の定常的なすべり量が小さく、アスペリティへのローディングレートが小さいためと考えられる。
今後は、シミュレートされた東北地方太平洋沖型の地震をより実際の地震に近づけるために、海溝沿いのアスペリティを中心に摩擦パラメータなどのさらなる検討を行いたい。