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[SSS28-01] 大地震に伴う地震波速度変化の空間分布および速度回復の時間スケールについて
★招待講演
キーワード:地震波速度変化、地震波干渉法
地球内部の地震波速度は、地震や火山活動、地殻変動などの突発的な事象に伴い急激に変化するほか、地下水の移動やプレート運動などの定常的な変動によっても緩やかに変化する。地震波干渉法はこれらの現象に伴う微細な速度変化を検出するのに有効な手法であり、Hi-netやF-netに代表される高密度の連続地震観測網が整備されてきたこの20年程の間に広く実施されてきた。これまでの研究で、多くの大地震の直後に地震波速度は最大で数%の低下を示し、その後数カ月以上の時間をかけて回復するという共通の特徴が見られることが明らかとなってきた。大地震に伴う地震波速度低下の主な原因としては、断層帯の破砕、地殻変動に伴う静的歪変化、強震動による地盤の損傷などが指摘されている。初期の研究では、速度変化―回復過程を断層面での摩擦強度変化と関連付ける議論が多かったが、近年では、地盤工学における非線形応答や液状化現象の研究の進展とも相まって、強震動による地盤浅部の損傷と関連付ける研究が多く行われるようになった。一方で、スロースリップや余効変動、群発地震などの強震動を伴わない現象について速度変化が検出された事例も報告されており、速度変化の主要因については今も議論が続いている。本発表では、地震波速度変化の原因について、これまでに報告されてきた速度変化の空間分布、および速度回復の時間スケールの観点から議論を行う。空間分布については、波動場のセンシティビティを用いて速度変化を深さごとに分離して検出し、地殻変動と強震動の寄与の足し合わせにより速度変化の深さ依存性を説明した事例を紹介する。速度回復の時間スケールについては、観測された回復過程を、岩石実験で近年注目されているslow dynamicsに見られる経過時間の対数に比例する回復や、余効変動や地下水の拡散過程を特徴づける時定数などと関連付けて議論する。回復過程を議論する際には定常的な変化と地震などの非定常な現象に伴う変化との分離が必要であり、このような複数の要因が足し合わされて速度回復が検出される場合についても考察する。