14:45 〜 15:00
[SSS28-10] 2015年箱根火山水蒸気噴火に伴い観測された連続微動
キーワード:火山性微動、水蒸気噴火、箱根火山
箱根火山では2015年4月末より微小地震活動が活発化し、6月29日から7月1日にかけて大涌谷で小規模な水蒸気噴火が観測された.この水蒸気噴火に先行し6月29日7時33分ごろから数分間、大涌谷周辺に設置された傾斜計及び広帯域地震計により、数μradの傾斜変動(以下、低周波イベント)が観測された.この傾斜変動は大涌谷直下の標高600m付近に上端をもつ北西-南東走向のクラックの開口により説明でき、この際約10万m3の熱水が貫入したと考えられる(本多ほか、2015).低周波イベント発生後に、大涌谷近傍の観測点を中心に、連続的な微動が観測された.本発表ではこの連続微動に焦点を当て、活動の時系列、発生場所及び空振記録との比較に基づき、水蒸気噴火との関係について考察する.
連続微動は2-8Hzの周波数帯域の振幅が卓越し、上記の低周波イベント発生から約5時間後の6月29日13時03分に最初に観測にされ、7月1日の未明にかけて断続的に発生した.6月30日13時頃から7月1日未明にかけて、特に振幅が大きく継続時間の長い連続微動が観測された.
本研究では、連続微動の震源位置をエンベロープ相関法(Obara, 2002)を用いて推定した.大涌谷周辺に設置された地震観測点の連続波形記録に、4-8Hzのバンドパスフィルターを施した後、3成分合成波形のRMSエンベロープを求めた.1分間の波形記録に対して、すべての観測点ペアで相互相関処理を行い、相関係数が0.8以上の走時差が26観測点ペア以上ある場合に震源決定を試みた.得られた観測点間の走時差を説明する最適な震源位置をグリットサーチにて求めた.この際、エンベロープはS波速度で伝搬すると仮定し、理論走時の計算にはYukutake et al. (2015)による3次元速度構造を用いた.ブートストラップ法により微動の震源決定誤差を推定した結果、水平方向に±0.6km及び深さ方向に±0.8kmであった.決定できた微動の震源は全て噴火口から半径1km以内の地表付近(標高1km)、低周波イベントに伴う開口クラックの上部延長付近に位置することが分かった.
さらに、大涌谷に設置された空振計記録と連続微動の比較から、噴火に伴って発生した空振と連続微動の発生には相関があり、多くの場合連続微動の発生時に空振が記録されていることが分かった.中でも6月30日13時頃から7月1日未明にかけての振幅の大きな微動活動の終盤に活発な空振が記録されている.火口の連続可視画像記録から、この際に大涌谷で新たな噴火口が形成されたことが確認されている(萬年ほか、2015).以上の結果を考慮すると、連続微動は低周波イベントの際に浅部に貫入した熱水が、地表付近を移動する過程で誘発された現象であると解釈することができる.連続微動と空振の時系列から、移動した熱水が空振を伴いながら地表に噴出し新たな噴火口が形成されたと考えられる.
謝辞
本研究では、気象庁、防災科学技術研究所及び東京大学地震研究所観測点により取得された地震波形データ及び、気象庁の観測による空振波形記録を使用させて頂きました.
連続微動は2-8Hzの周波数帯域の振幅が卓越し、上記の低周波イベント発生から約5時間後の6月29日13時03分に最初に観測にされ、7月1日の未明にかけて断続的に発生した.6月30日13時頃から7月1日未明にかけて、特に振幅が大きく継続時間の長い連続微動が観測された.
本研究では、連続微動の震源位置をエンベロープ相関法(Obara, 2002)を用いて推定した.大涌谷周辺に設置された地震観測点の連続波形記録に、4-8Hzのバンドパスフィルターを施した後、3成分合成波形のRMSエンベロープを求めた.1分間の波形記録に対して、すべての観測点ペアで相互相関処理を行い、相関係数が0.8以上の走時差が26観測点ペア以上ある場合に震源決定を試みた.得られた観測点間の走時差を説明する最適な震源位置をグリットサーチにて求めた.この際、エンベロープはS波速度で伝搬すると仮定し、理論走時の計算にはYukutake et al. (2015)による3次元速度構造を用いた.ブートストラップ法により微動の震源決定誤差を推定した結果、水平方向に±0.6km及び深さ方向に±0.8kmであった.決定できた微動の震源は全て噴火口から半径1km以内の地表付近(標高1km)、低周波イベントに伴う開口クラックの上部延長付近に位置することが分かった.
さらに、大涌谷に設置された空振計記録と連続微動の比較から、噴火に伴って発生した空振と連続微動の発生には相関があり、多くの場合連続微動の発生時に空振が記録されていることが分かった.中でも6月30日13時頃から7月1日未明にかけての振幅の大きな微動活動の終盤に活発な空振が記録されている.火口の連続可視画像記録から、この際に大涌谷で新たな噴火口が形成されたことが確認されている(萬年ほか、2015).以上の結果を考慮すると、連続微動は低周波イベントの際に浅部に貫入した熱水が、地表付近を移動する過程で誘発された現象であると解釈することができる.連続微動と空振の時系列から、移動した熱水が空振を伴いながら地表に噴出し新たな噴火口が形成されたと考えられる.
謝辞
本研究では、気象庁、防災科学技術研究所及び東京大学地震研究所観測点により取得された地震波形データ及び、気象庁の観測による空振波形記録を使用させて頂きました.