17:15 〜 18:30
[SSS28-P03] 核・マントル境界S波多重反射波の時間領域解析を用いたマントル構造の推定
キーワード:ScS多重反射波、マントル速度・減衰構造、時間領域波形解析
地震波形記録(あるいは単一記録中の異なった部分)の定量的な比較では、通常、FFTを用いたフーリエ解析、すなわち周波数領域での解析が用いられる。定常的な時系列ではこの手法は適当だが、地震学の多くの場合では、ある時間幅に集中している非定常的な波群が対象となる。このような信号の処理として古く開発された一つに、ウィーナーフィルタがある。これは2つの時系列を時間領域で直接比較した結果をフィルタの形で示している。
ここでは、2016年5月30日の小笠原西方沖の巨大深発地震について、日本列島のF-netの広帯域地震波形記録から、マントル内をほぼ垂直に地表と核・マントル境界を往復するScS多重反射波について、ウィーナーフィルタを用いた時間領域での解析を行い、従来の周波数領域でのスペクトル解析と比較する。一つの観測点でのトランスバース成分、すなわちSH波であるScS波やその多重反射波の部分を比較し、この地域のマントルの平均構造を推定する。
得られた波形記録ではScS波などの波群は、100-200秒程度の時間窓に入っている。他の信号の混入を避けるため、このような短い記録長の複数の時系列を比較することとなる。通常のスペクトル解析では、各時系列の両端を滑らかにゼロに揃えるために何らかのフィルタ(例:taper filter)をかけた後、フーリエ解析を施す。高周波数成分はこのフィルタによる波形の変形の影響は少なく、位相も大きな変調はないが、広い底周波数領域ではスペクトルの振幅が傘上げされてしまうことが確認され、減衰構造の推定に大きく影響する。
そこで、二つの波群(例えば、ScS波とScS2波)の時間領域の記録を、入力と出力の時系列とみなし、ウィーナーフィルタでこの二つを直接的に比較する。このフィルタは最小二乗フィルタの一種で、フィルタの係数(すなわちフィルタの長さ)が増えれば誤差は小さくなるが、大きく振動する不安定な特性となる。そこで、AICなどの統計的手法により誤差と係数の個数のトレードオフから最適なフィルタを求める。こうして得られたフィルタをフーリエ解析することで、振幅や位相の周波数特性が広い周波数帯域で安定・精度よく求めることができる。例えば、小笠原西方沖の深発地震のF-net波形では、周期20秒から0.5秒まで太平洋沿岸の観測点ではQ値が150-500程度に求まり、観測点毎の相違も議論できる。
このような時間領域のフィルタを用いた波群の定量的な比較は、他の例として、相互相関を求める際に、通常の係数を用いるよりも精度よく推定することが期待され、時間変化の検出などを従来の手法よりも安定して求まる可能性がある。
ここでは、2016年5月30日の小笠原西方沖の巨大深発地震について、日本列島のF-netの広帯域地震波形記録から、マントル内をほぼ垂直に地表と核・マントル境界を往復するScS多重反射波について、ウィーナーフィルタを用いた時間領域での解析を行い、従来の周波数領域でのスペクトル解析と比較する。一つの観測点でのトランスバース成分、すなわちSH波であるScS波やその多重反射波の部分を比較し、この地域のマントルの平均構造を推定する。
得られた波形記録ではScS波などの波群は、100-200秒程度の時間窓に入っている。他の信号の混入を避けるため、このような短い記録長の複数の時系列を比較することとなる。通常のスペクトル解析では、各時系列の両端を滑らかにゼロに揃えるために何らかのフィルタ(例:taper filter)をかけた後、フーリエ解析を施す。高周波数成分はこのフィルタによる波形の変形の影響は少なく、位相も大きな変調はないが、広い底周波数領域ではスペクトルの振幅が傘上げされてしまうことが確認され、減衰構造の推定に大きく影響する。
そこで、二つの波群(例えば、ScS波とScS2波)の時間領域の記録を、入力と出力の時系列とみなし、ウィーナーフィルタでこの二つを直接的に比較する。このフィルタは最小二乗フィルタの一種で、フィルタの係数(すなわちフィルタの長さ)が増えれば誤差は小さくなるが、大きく振動する不安定な特性となる。そこで、AICなどの統計的手法により誤差と係数の個数のトレードオフから最適なフィルタを求める。こうして得られたフィルタをフーリエ解析することで、振幅や位相の周波数特性が広い周波数帯域で安定・精度よく求めることができる。例えば、小笠原西方沖の深発地震のF-net波形では、周期20秒から0.5秒まで太平洋沿岸の観測点ではQ値が150-500程度に求まり、観測点毎の相違も議論できる。
このような時間領域のフィルタを用いた波群の定量的な比較は、他の例として、相互相関を求める際に、通常の係数を用いるよりも精度よく推定することが期待され、時間変化の検出などを従来の手法よりも安定して求まる可能性がある。