17:15 〜 18:30
[SSS28-P12] 宮城県における東北地方太平洋沖地震前後の地震波速度変化
キーワード:地震波干渉法、速度変化、東北地方太平洋沖地震
1. はじめに
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以降 2011年東北地震と記す)は日本の本州東部に強い揺れをもたらした。本研究では、防災科学研究所の高感度地震観測網(Hi-net)で観測された微動波形の自己相関関数を計算し、宮城県における2011年東北地震前後での地震波速度構造変化の有無を検討した。
2. 地震波干渉法
地震波干渉法は、2観測点間における観測地震波形の相互相関関数を計算することにより、片方の観測点に震源があった場合、もう一方の観測点で得られる波形(グリーン関数)を疑似的に生成する手法である。したがって、観測波形の自己相関関数を求めることで、その点を仮想震源かつ観測点とした場合に観測される反射波を疑似的に生成することができる。
すなわち、自己相関関数の変化を調べることにより、人工震源を使わずに地下反射面の位置および地下速度構造の時間変化を監視することができる。
3. 使用データと処理
宮城県内のHi-net観測点のうち、2011年東北地震前後で連続波形記録が利用可能であった10観測点における連続地震波形データを使用した。解析期間は、2011年2月1日から4月30日までの3ヶ月間で、人間活動の影響を避けるために日本時間の午前2時から3時のデータを使用した。具体的な波形処理は、以下のとおりである。
まず、観測波形にバンドパスフィルターを適用し、1.0~3.0Hzの帯域の波を抽出してS/N比を向上させた。次に、自然地震の影響をできるだけ除くために、振幅を1と-1に二値化する1ビットノーマライズ処理(Shapiro et al., 2005)を施した後、自己相関関数を計算した。なお、各月1日の午前2時から3時までの1分間の自己相関関数60個の平均を各日の結果とすることにより、解析結果の安定性を確保するよう工夫した。
4. 結果および考察
図1は白石観測点で2011年2月1日から4月30日に観測された波形で計算した自己相関関数を示している。図中の黒矢印は、2011年東北地震が発生した3月11日を表す。Lag timeが4秒および5秒付近にコヒーレントな波群が見られ、これは地下からの反射波を表していると考えられる。この波群の到達時刻の変化に注目したところ、3月11日を境に遅れており、2011年東北地震によって地震波速度が低下したと考えられる。この結果は、Nakahara(2014)と調和的である。
また、波群の振幅に注目すると、2011年東北地震直後に自己相関係数が下がり、不明瞭となっていることがわかる。これは本震後に多発した余震の影響が1ビットノーマライズ処理でも除去しきれていないことが原因として考えられる。この問題については、磯野ほか(2016, 本大会)で詳しく議論する。
謝辞:
本研究では防災科学技術研究所のHi-net観測点における波形データを使用しました。
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以降 2011年東北地震と記す)は日本の本州東部に強い揺れをもたらした。本研究では、防災科学研究所の高感度地震観測網(Hi-net)で観測された微動波形の自己相関関数を計算し、宮城県における2011年東北地震前後での地震波速度構造変化の有無を検討した。
2. 地震波干渉法
地震波干渉法は、2観測点間における観測地震波形の相互相関関数を計算することにより、片方の観測点に震源があった場合、もう一方の観測点で得られる波形(グリーン関数)を疑似的に生成する手法である。したがって、観測波形の自己相関関数を求めることで、その点を仮想震源かつ観測点とした場合に観測される反射波を疑似的に生成することができる。
すなわち、自己相関関数の変化を調べることにより、人工震源を使わずに地下反射面の位置および地下速度構造の時間変化を監視することができる。
3. 使用データと処理
宮城県内のHi-net観測点のうち、2011年東北地震前後で連続波形記録が利用可能であった10観測点における連続地震波形データを使用した。解析期間は、2011年2月1日から4月30日までの3ヶ月間で、人間活動の影響を避けるために日本時間の午前2時から3時のデータを使用した。具体的な波形処理は、以下のとおりである。
まず、観測波形にバンドパスフィルターを適用し、1.0~3.0Hzの帯域の波を抽出してS/N比を向上させた。次に、自然地震の影響をできるだけ除くために、振幅を1と-1に二値化する1ビットノーマライズ処理(Shapiro et al., 2005)を施した後、自己相関関数を計算した。なお、各月1日の午前2時から3時までの1分間の自己相関関数60個の平均を各日の結果とすることにより、解析結果の安定性を確保するよう工夫した。
4. 結果および考察
図1は白石観測点で2011年2月1日から4月30日に観測された波形で計算した自己相関関数を示している。図中の黒矢印は、2011年東北地震が発生した3月11日を表す。Lag timeが4秒および5秒付近にコヒーレントな波群が見られ、これは地下からの反射波を表していると考えられる。この波群の到達時刻の変化に注目したところ、3月11日を境に遅れており、2011年東北地震によって地震波速度が低下したと考えられる。この結果は、Nakahara(2014)と調和的である。
また、波群の振幅に注目すると、2011年東北地震直後に自己相関係数が下がり、不明瞭となっていることがわかる。これは本震後に多発した余震の影響が1ビットノーマライズ処理でも除去しきれていないことが原因として考えられる。この問題については、磯野ほか(2016, 本大会)で詳しく議論する。
謝辞:
本研究では防災科学技術研究所のHi-net観測点における波形データを使用しました。