日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS29] 地震動・地殻変動・火山データの即時把握・即時解析・即時予測

2016年5月22日(日) 13:45 〜 15:15 106 (1F)

コンビーナ:*干場 充之(気象研究所)、香川 敬生(鳥取大学大学院工学研究科)、川元 智司(国土交通省国土地理院)、中村 洋光(防災科学技術研究所)、小泉 岳司(気象庁)、林元 直樹(気象研究所地震津波研究部)、座長:中村 洋光(防災科学技術研究所)、川元 智司(国土交通省国土地理院)、干場 充之(気象研究所)

14:00 〜 14:15

[SSS29-02] 光ファイバー網とDASテクノロジーを使った地球活動観測の可能性

*木村 恒久1リーズ ガレス1ハートグ アーサー1 (1.シュルンベルジェ ファイバーオプティック テクノロジー センター)

キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー網、地震活動観測、Seismic

DASテクノロジーは、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知するために、5年以上前から石油・ガス産業で使われている。最新の光ファイバーセンシング技術によって、近年、DASシステムを使って、VSPを含むサイズミックデータを記録することができるようになった。我々はこのシステムのことを、パイプラインモニタリング装置と区別するため、‘hDVS’と呼んでいる。
hDVSは、通常用いられるジオフォン等の電気・磁気的なセンサーでなく、光ファイバーを振動計測のセンサーとして使う。実際には、光ファイバーの振動に対するダイナミックストレインを計測しており、シングルモードファイバー、マルチモードファイバーの両者に使うことができ、つなげたファイバーの全長、もしくはパラメータで決めた長さだけをセンサーとして使うことができる。光ファイバー内での光の減衰や、光データのサンプリング周波数にも依るが、シングルモードファイバーの場合、現状のシステムでは、最大50km程度の長さまで対応することができ、マルチモードファイバーの場合、その長さが10km程度までとなる。
通常の電気・磁気的なセンサーは、特に2011年の東日本大震災後、日本各地に設置されてきた。しかし、通常のセンサーは、点としてのデータしか収集することができなく、しかも設置にかかるコストや、センサーの設置環境の制限により、設置される数と場所に限りがある。
hDVS/DASシステムの場合、既存の、主にデータ通信用の目的で設置してある光ファイバーを、瞬くうちに線状の地震波測定用のセンサーとして扱うことができ、センサーの設置コストと設置にかかる時間を低く抑える事ができる。ここ20年間のIT革命の一環として、日本国内の陸上を初め、米国、アジア諸国との間に光ファイバー網が張り巡らされている。特に、国際海底光ファイバーケーブルは、地震が起き易いプレートとプレートが重なる領域をまたいで設置してある。そのような海底光ケーブルが、たちまち地震観測用のセンサーと化した場合、あなたはどのようにそのデータを利用しますか?
光ファイバーは、コア部が石英ガラスでできており、通常のセンサーを設置できない200℃以上の環境下でも、問題なく使える光ファイバーが多く存在する。中には、特殊なコーティングが施してある、500℃またはそれ以上の高温環境下に耐える光ファイバーも存在する。このことは、光ファイバーセンサーは、地震が発生しやすい地層近くに掘られた深い井戸に設置することが可能で、地震発生地点近くで捉えられた地震波を、光のスピードで地上局に伝達するリアルタイムモニタリングが可能になるということである。
hDVS/DASテクノロジーを使えば、地上、海底、地下を網羅した日本の地殻活動を光の速さでモニタリングする、包括的なネットワークを時間と費用を大きくかけずに築くことができるであろう。そうすれば、これから起きるであろう地殻活動由来の大災害から、少しでも多くの人命、そして我々の愛する日本を守ることができると信じている。
発表の際、hDVS/DASの概観の説明、過去数年の間にフィールド試験として記録したサイズミックデータの一部の公表に加え、日本における地球活動の包括的なモニタリングシステムに関するビジョンを話したいと思います。