日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30] 地震活動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*林 能成(関西大学社会安全学部)

17:15 〜 18:30

[SSS30-P01] コロンビアにおけるSWIFTを用いたCMT解の推定と複雑な沈み込みに伴う地震活動の特徴

*吉本 昌弘1熊谷 博之1Blanco José2前田 裕太1Dionicio Viviana2 (1.名古屋大学、2.コロンビア地質調査所)

キーワード:SWIFT、コロンビア、地震活動

南米コロンビアは,ナスカプレート,カリブプレート,南アメリカプレートの沈み込み境界に位置し,その複雑なプレート沈み込み相互作用によって多様な地震活動を示している.プレート境界では過去に1906年にエクアドル-コロンビア地震(Mw8.8)や1979年にコロンビア南西部トゥマコ地震(Mw8.2)などの巨大地震が発生しているが,その北部においては巨大地震の記録はなく,その発生ポテンシャルについてもよくわかっていない.一方で内陸側では,稍深発地震が頻発するBucaramanga nestが存在し,1967年にはM6.3の地震によってその震央付近に甚大な被害をもたらした.しかしながら,このnest内部の地震はほとんどがM5未満の小規模な地震であるためGCMTカタログに記載されたイベント数も少なく,またそれらのメカニズムは多様なパターンを示している.このnest付近は3つのプレート境界近傍の複雑な構造に位置するため,その発生メカニズムに関しては様々なモデルが提案されているのが現状である.その発生メカニズムや3つのプレートの相互作用を理解する上で,より小さな地震も含めた詳細な震源メカニズムを明らかにすることは重要である.
2015年度よりJST/JICAのSATREPSプロジェクト「コロンビアにおける地震・津波・火山災害の軽減技術に関する研究開発」が始まり,我々はプレート境界及び内陸側の複雑なプレート相互作用による地震活動の監視とモデリングを行っている.既に現地コロンビア地質調査所には即時的にCMT解と震源時間関数を決定する高度即時震源解析システム(SWIFT: Nakano et al., 2008)を導入し,運用を開始している.我々のグループでは現在,1) 地震活動の低調なプレート境界において,未だ発見されていない超低周波地震・微動の検出,2) SWIFTを用いたより小さな地震も含めた詳細な震源メカニズムの決定,に関する研究を進めている.いまのところ超低周波地震・微動の検出はできていないが,SWIFT解析については,コロンビア地質調査所が展開する広帯域地震観測記録を使用し最近2年間のCMT解の決定を進めている.その結果浅部の地震であれば最小でMw4.3程度まで,深さ約150 kmの稍深発地震ではMw4.6程度までの小さい地震のCMT解を決めることができた.最も特徴的なBucaramanga nestについては,GCMTカタログでは多様なメカニズム解を示していたが,我々の解析結果では南西―北東方向にP軸を持つ横ずれ成分が卓越するメカニズムの地震が多く,またその正反対のメカニズムの横ずれ断層型の地震も存在する.このnest内部では,繰返し地震及び極性の反転した繰返し地震の存在を指摘している研究もあり(Prieto et al., 2012),彼らが指摘するようにこのnestの地震は体積的な地震活動ではなく面的な活動であることを我々の結果は支持している.しかしながら求められたイベント数が少ないため今後はさらに過去のイベントの解析を行う予定である.また波形インバージョンでの推定が難しいM4.5以下の小規模な地震についても,P波の押し引き分布でさらなるメカニズム推定も行っていき,このnestの発生メカニズムや3つのプレートの複雑な沈み込み過程の解明を目指していく.