日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30] 地震活動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*林 能成(関西大学社会安全学部)

17:15 〜 18:30

[SSS30-P09] 自己浮上式海底地震計の観測による小笠原諸島周辺の震源決定精度向上について

*中田 健嗣1小林 昭夫1木村 一洋1馬塲 久紀2長岡 優3対馬 弘晃1勝間田 明男1前田 憲二1 (1.気象庁気象研究所地震津波研究部、2.東海大学海洋学部、3.気象庁気象研究所火山研究部)

キーワード:震源決定、海底地震計、小笠原諸島

小笠原諸島近海にある定常地震観測点は、気象庁の父島と母島、防災科学技術研究所のF-net小笠原(父島に設置)の3点である。次に近い観測点は青ヶ島であり、小笠原諸島近海の地震について、疎らな観測点で震源を決定しているのが現状である。2013年1年間のM4以上の地震5つについて、USGSの震源と気象庁の地震カタログ(以下、一元化震源)を比較すると、USGS震源の方が一元化震源よりも、約30′西へ決まっている。この理由の一つとして、一元化震源は、震源に近い観測点は父島・母島の南北に2点であり、東西方向の震央の位置精度が低く、東西方向は本州の観測点における走時差の影響を強く受けていることが考えられる。
そこで、気象研究所では、自己浮上式海底地震計(OBS)を本海域へ設置して一時的に密な観測網を形成し、正確な震源(以下、OBS震源)を求めることにした。OBSは、2015年6月に設置し同年10月に回収した。観測期間は2015年7月15日から10月10日までの約3か月である。観測網は、既存の父島および母島の観測点をカバーするように、東経140.8°、141.6°、142.65°の3つの南北のラインに2~3点を配置した(この他、火山観測を兼ねるため、西之島火山周辺に5点配置した)。西之島火山周辺の1点とその他7点の計8点のOBSの連続波形に対して、STA/LTAでトリガーをかけ、P波、S波を検測して震源決定を行った。ここで、P波の速度構造は、Kodaira et al. (2011) を参考にして海の構造を鉛直1次元で与え、S波の速度構造はP波速度との比から与えた。
北緯26°~29°、東経140°~143°内を比較範囲として、得られたOBS震源を一元化震源と比較した。ここで、震源時の差が3秒以内の31個の地震を同一イベントと判定して比較した。その結果、震源の水平位置は、全体的にみて、OBS震源は一元化震源よりも、約30′~1°西に決まることが分かった。また、本期間中の比較範囲で一元化震源と同一イベントと判定できたUSGSの震源は14個あり、この場合も全体として一元化よりも約30′西に決まり、OBS震源と傾向が似ていた。OBS震源の深さについては、一元化震源よりもプレート沈み込みに伴う面状の震源分布がみられる。これは今回の密な観測網により、より精度よく震源が求まっていることの現れであると考えられる。このことは、決定できた全OBS震源をプロットするとより明瞭に見える。
今回の観測で得られた震源の東西方向の正確な位置により、定常観測網における実際の速度構造に対応する走時差を求めることができ、その結果を適用すれば、定常観測網での震源位置を補正することができると考えられる。