日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS30] 地震活動

2016年5月25日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*林 能成(関西大学社会安全学部)

17:15 〜 18:30

[SSS30-P10] 焼きなまし法を用いた初動発震機構解の決定

*小松 正直1竹中 博士1 (1.岡山大学大学院自然科学研究科)

キーワード:初動発震機構解、焼きなまし法、グリッドサーチ

地震の初動発震機構解を決定するために,グリッドサーチ(例えば,中村・望月, 1988, 験震時報)や遺伝的アルゴリズム(genetic algorithms,例えば,Kobayashi and Nakanishi, 1994, GRL)を用いたパラメータの探索が行われてきた.一方,最適な解を効率よく探索する手法として,焼きなまし法(simulated annealing,以下SAと略す)が存在する.この手法は乱数と「温度」という指標を組み合わせることにより,解が理論値と観測値の残差の局所的な最小値(local minimum)に収束することを防ぎ,真の解を示す大域的な最小値(global minimum)に収束することを可能としている.SAを用いた効率的な初動発震機構解の決定はこれまで行われていない.そこで本研究ではSAを用いて初動発震機構解の決定を行い,その能力を検証する.そのために,震源球におけるNull軸,P軸(主圧力軸),T軸(主張力軸)のオイラー角による表現(例えば,中村・望月, 1988)を採用する.P波初動の極性(押し引き)の分布を説明する最適なオイラー角を,SAを用いて探索することで,初動発震機構解を決定する.検証に使用したデータは2014年3月14日に伊予灘で発生したMJMA6.2の稍深発地震の押し引き分布である.震源から観測点に向けての射出角は気象庁のJMA2001速度モデルによる射出角表toff2001を用いた.計算の比較のために,グリッドサーチによる初動発震機構解の決定も行った.Intel Core i7-3520M (2.90 GHz)搭載のパソコンで計算を行った結果,SAによる探索はわずか0.06秒で終了し,グリッドサーチの場合と比較して約1278分の1の計算時間で済んだ.探索回数も2430分の1という非常に少ない探索で済んでいる.オイラー角の最適値を用いて断層の走向,傾斜角,滑り角を求めたところ,気象庁により報告されている値とほぼ一致した.
謝辞:P波初動の押し引きは気象庁一元化処理震源データを使用しました.SAのソース・コードはオーストラリアのCSIROのWebサイトで公開されているsimann.f90を使用しました.記して感謝致します.