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[SSS31-P02] 2014年長野県北部の地震(Mw 6.2)時に出現した副次的な地表地震断層群の活動履歴調査(序報)
2014年11月に発生した長野県北部の地震(Mw 6.2)では、長さ約10kmの区間において、東側隆起の逆断層変位を主体する地表地震断層(東傾斜の主断層)が出現し、隆起量は最大で約80cmに達した。この断層の北部~中部区間においては、主断層の東側(上盤側)、約1.2kmの範囲において、長さ数100mの副次的な地表地震断層群が出現した(Okada et al., 2015)。筆者らは、これらの副次的な断層の形態、運動像、活動性を解明するため、地表踏査、ボーリング調査、地形調査等を、地震直後から実施してきた。その結果、当断層群について、1)第四紀後期において断層変位の累積性を有すること、2)基盤岩において平滑性・平面性に富むシャープな断層面と複合面構造の発達した断層ガウジを伴うこと、3)主断層とは逆向きに傾斜する高角度の逆断層(左横ずれ変位成分を伴う)は基盤岩内の層面すべりが関与している可能性があることなどの特徴が明らかになってきた(上田ほか, 2015)。これらの断層群の活動履歴と変形・破砕形態を、より詳細に解明するため、2015年11~12月に白馬村の大出・塩島地区においてトレンチ調査を実施した。
(1)大出地区:主断層に相当する地表地震断層の東方約100~200mに位置する畑地(低位段丘面)において認められた比高約40cmの撓曲変形(副次的な地表地震断層)は、東西走向区間(長さ約100m、南側隆起)と南北走向区間(長さ約100m、東側隆起)からなり、屈曲した形態を示す。撓曲部に形成された断裂群の雁行状配列パターン、およびトレンチ・ボーリング調査において観察された基盤岩内の断層面の条線から、2014年の地震時における断層変位は、東西走向区間で右横ずれ変位成分を伴う逆断層変位、南北走向区間で左横ずれ変位成分を伴う逆断層変位であり、断層を境に南東側の地盤が北西へ移動したと考えられる。
東西走向区間におけるトレンチ法面では、凝灰角礫岩・安山岩からなる基盤岩と、低位段丘を構成する礫層、砂層、腐植土層等が露出し、それらを変位させる断層が確認された。基盤岩においては南に約50°で傾斜する逆断層が認められ、基盤面の見かけの上下変位量は約2mに達する。その直上の未固結堆積層においては、数条の断層群が認められ、各地層と断層の切断・被覆関係、上下変位および変形の程度の差をもとに、少なくとも3回の古地震イベントが識別され、現在、年代測定を進めている。
南北走向区間においてトレンチ調査に先立って実施したボーリング調査では、低位段丘礫層の基底面深度について、撓曲の上盤と下盤とで約2mの差が認められた。また凝灰角礫岩等からなる基盤岩内に約50°で傾斜する断層破砕帯があり、幅約2㎝の断層ガウジを伴い、逆断層変位センスを示す変形構造が観察された。当箇所のトレンチ調査においては、低位段丘を構成する礫層、砂層、腐植土層等が露出し、それらを変位させる数条の逆断層群(東に約50度で傾斜)が観察された。礫層内に挟在する砂層の見かけの上下変位量は約1mであり、南北走向区間と同様、少なくとも3回の古地震イベントが識別される。
(2)塩島地区:主断層に相当する地表地震断層の東方約600mに位置する姫川左岸の水田などにおいて、NNE-SSW走向の撓曲変形(西側隆起、比高約40cm)が長さ約800mの区間で認められた。この撓曲変形を対象としたトレンチ調査では、凝灰角礫岩・安山岩からなる基盤岩と、低位段丘を構成する礫層等が露出し、基盤岩と礫層を境する2条の逆断層(西に約70~80°で傾斜)が、幅約40㎝の断層ガウジ・角礫帯を挟んで認められた。上盤側(西側)の断層は地表の撓曲脚部に向かって連続するのに対し、下盤側(東側)の断層は礫層上部に覆われる。また上盤側の断層に接する礫層内には、断層ガウジ起源の堆積物(colluvial wedge)が観察された。これらの変形構造から、少なくとも2回の古地震イベントが識別される。
文献:Okada et al. (2015): Seismological Research Letters, 86, No.5, doi: 10.1785/0220150052.
上田ほか(2015):日本地震学会2015年秋季大会講演予稿集, S10-P09.
(1)大出地区:主断層に相当する地表地震断層の東方約100~200mに位置する畑地(低位段丘面)において認められた比高約40cmの撓曲変形(副次的な地表地震断層)は、東西走向区間(長さ約100m、南側隆起)と南北走向区間(長さ約100m、東側隆起)からなり、屈曲した形態を示す。撓曲部に形成された断裂群の雁行状配列パターン、およびトレンチ・ボーリング調査において観察された基盤岩内の断層面の条線から、2014年の地震時における断層変位は、東西走向区間で右横ずれ変位成分を伴う逆断層変位、南北走向区間で左横ずれ変位成分を伴う逆断層変位であり、断層を境に南東側の地盤が北西へ移動したと考えられる。
東西走向区間におけるトレンチ法面では、凝灰角礫岩・安山岩からなる基盤岩と、低位段丘を構成する礫層、砂層、腐植土層等が露出し、それらを変位させる断層が確認された。基盤岩においては南に約50°で傾斜する逆断層が認められ、基盤面の見かけの上下変位量は約2mに達する。その直上の未固結堆積層においては、数条の断層群が認められ、各地層と断層の切断・被覆関係、上下変位および変形の程度の差をもとに、少なくとも3回の古地震イベントが識別され、現在、年代測定を進めている。
南北走向区間においてトレンチ調査に先立って実施したボーリング調査では、低位段丘礫層の基底面深度について、撓曲の上盤と下盤とで約2mの差が認められた。また凝灰角礫岩等からなる基盤岩内に約50°で傾斜する断層破砕帯があり、幅約2㎝の断層ガウジを伴い、逆断層変位センスを示す変形構造が観察された。当箇所のトレンチ調査においては、低位段丘を構成する礫層、砂層、腐植土層等が露出し、それらを変位させる数条の逆断層群(東に約50度で傾斜)が観察された。礫層内に挟在する砂層の見かけの上下変位量は約1mであり、南北走向区間と同様、少なくとも3回の古地震イベントが識別される。
(2)塩島地区:主断層に相当する地表地震断層の東方約600mに位置する姫川左岸の水田などにおいて、NNE-SSW走向の撓曲変形(西側隆起、比高約40cm)が長さ約800mの区間で認められた。この撓曲変形を対象としたトレンチ調査では、凝灰角礫岩・安山岩からなる基盤岩と、低位段丘を構成する礫層等が露出し、基盤岩と礫層を境する2条の逆断層(西に約70~80°で傾斜)が、幅約40㎝の断層ガウジ・角礫帯を挟んで認められた。上盤側(西側)の断層は地表の撓曲脚部に向かって連続するのに対し、下盤側(東側)の断層は礫層上部に覆われる。また上盤側の断層に接する礫層内には、断層ガウジ起源の堆積物(colluvial wedge)が観察された。これらの変形構造から、少なくとも2回の古地震イベントが識別される。
文献:Okada et al. (2015): Seismological Research Letters, 86, No.5, doi: 10.1785/0220150052.
上田ほか(2015):日本地震学会2015年秋季大会講演予稿集, S10-P09.