17:15 〜 18:30
[SSS31-P08] 数値水深モデル(50 mメッシュ・150 mメッシュ)から推定された下田沖断層帯と石廊崎断層
キーワード:海底地形、伊豆衝突帯、石廊崎断層、下田沖断層、海底活断層、伊豆東方線
伊豆半島とその南に続く伊豆海台の東縁では,落差約200 m~2000 mの東落ちの海底崖が北北東―南南西に約120 km分布する.この海底崖に沿って,伊豆東方線(ITTL)と呼ぶ第四紀の構造線が推定されている[岡山(1968),石橋(1976),活断層研究会(1980;1991),米倉(1986),Taira et al.(1998),青池(1999),金・他(2012)] .しかしながら下田沖の変位地形については,十分に解明されていない.
本研究は,海上保安庁海洋情報部(2012)の150 mメッシュと50 mメッシュの海底地形データからアナグリフ画像と等深線図を作成し,断層の痕跡を調査した.断層の判断基準は,①変位地形が明確であり,活断層であることが確実なもの,②活断層の位置と変位の向きも推定できるが,確実に活断層であると判定できる資料に欠けるもの,③活断層の可能性や存在が疑われるが,変位の向きが不明であり,また他の原因で地形が形成された疑いが残るものに分類した.その結果,石廊崎断層の海底延長部に変位地形が認められ,また伊豆下田沖の大陸棚から陸棚斜面基部の海底台地を切る東北東―南南西に延びる西側隆起の逆断層地形が確認された.
石廊崎断層の海底延長部:1974年伊豆半島沖地震(Mw6.9)では,伊豆半島南端の石廊崎断層に沿って震源断層が出現した.しかしながら海域の断層は,明らかにされていない.150 mメッシュの等深線図を解読すると,石廊崎沖の大陸棚に分布する岩礁,海底の尾根および谷は,系統的に右横ずれしていると推定される.尾根と谷の屈曲点を線で結ぶと,断層線は,西北西―東南東に走り,陸上の石廊崎断層に繋がる.石廊崎断層は,石廊崎の沖約7~8 kmまで延びている.地形精度が悪いため,断層位置をピンポイントで示すことや,変位量を計測することはできない.
下田沖断層帯(ITTL F2):下田沖の海底を切る西側隆起の活断層が,海岸線にほぼ平行に3条認められ,それぞれ西から東の順に断層a,b,cとした.
断層a:下田周辺のDEM50 mメッシュに基づき,2 m間隔の等深線図を作成した.下田港の入江から海底に延びる谷の北側と南側には,それぞれ須崎半島および海底半島が南東に張り出している.これらの半島の突端付近では,水深が急激に深くなる.須崎半島では,海岸線から海食台と判読される岩礁が南東側に張り出している.この海食台に最大約18 mの落差をもつ西側隆起の崖が認められ,海食台は水深約2~4 mと20~26 mの2段に分けられた.南側の海底半島の突端付近でも,最大約16 mの崖が認められ,岩礁・尾根が2段に分けられる.アナグリフ判読に基づけば,この海底崖の基部に形成された小規模な海底扇状地には,北西側隆起の落差2 m程度の低崖が形成されている.変位・変形を判断できるほど,地形データの解像度はよくないが,この低崖は谷に直交する方向に発達することから,活断層に起因する可能性がある.Kitamura et al.(2014;2015a;2015b)は,海岸調査から,下田の地震時隆起量を平均約1.5 mと見積もり,その隆起は海岸線から沖合約1 km付近の岩礁を通る西傾斜の逆断層モデルを推定している.本研究で推定する断層aは,この断層モデルに対比される可能性が高い.
断層bとc:下田沖のDEM150mメッシュに基づき,10 m間隔の等深線図を作成した.下田沖約10 kmの陸棚斜面脚部の水深約200~540 mには,新期海底台地が西側隆起の撓曲変形を受けている.撓曲崖は,西側と東側の2条あり,北北東―南南西に延びる.長さはそれぞれ約26 kmである.金・他(2012)は,この2つの断層を下田沖断層(伊豆東方線のF2)としたが,下田沖の断層a,b,cを下田沖断層帯とする.
なお石廊崎断層(西北西―東南東,高角右横ずれ)と下田沖断層帯(北北東―南南西,西傾斜逆断層)は共役的な関係にあると判断する.メッシュ範囲にデータが無い場合は,周辺のデータを補間して地形モデルが作成されている.したがって地形図は実際の水深と異なる場合があり,海底地形の精度の向上が今後の課題の1つである.
謝辞:本研究では,海上保安庁海洋情報部の津波メッシュデータを利用させて頂きました.
本研究は,海上保安庁海洋情報部(2012)の150 mメッシュと50 mメッシュの海底地形データからアナグリフ画像と等深線図を作成し,断層の痕跡を調査した.断層の判断基準は,①変位地形が明確であり,活断層であることが確実なもの,②活断層の位置と変位の向きも推定できるが,確実に活断層であると判定できる資料に欠けるもの,③活断層の可能性や存在が疑われるが,変位の向きが不明であり,また他の原因で地形が形成された疑いが残るものに分類した.その結果,石廊崎断層の海底延長部に変位地形が認められ,また伊豆下田沖の大陸棚から陸棚斜面基部の海底台地を切る東北東―南南西に延びる西側隆起の逆断層地形が確認された.
石廊崎断層の海底延長部:1974年伊豆半島沖地震(Mw6.9)では,伊豆半島南端の石廊崎断層に沿って震源断層が出現した.しかしながら海域の断層は,明らかにされていない.150 mメッシュの等深線図を解読すると,石廊崎沖の大陸棚に分布する岩礁,海底の尾根および谷は,系統的に右横ずれしていると推定される.尾根と谷の屈曲点を線で結ぶと,断層線は,西北西―東南東に走り,陸上の石廊崎断層に繋がる.石廊崎断層は,石廊崎の沖約7~8 kmまで延びている.地形精度が悪いため,断層位置をピンポイントで示すことや,変位量を計測することはできない.
下田沖断層帯(ITTL F2):下田沖の海底を切る西側隆起の活断層が,海岸線にほぼ平行に3条認められ,それぞれ西から東の順に断層a,b,cとした.
断層a:下田周辺のDEM50 mメッシュに基づき,2 m間隔の等深線図を作成した.下田港の入江から海底に延びる谷の北側と南側には,それぞれ須崎半島および海底半島が南東に張り出している.これらの半島の突端付近では,水深が急激に深くなる.須崎半島では,海岸線から海食台と判読される岩礁が南東側に張り出している.この海食台に最大約18 mの落差をもつ西側隆起の崖が認められ,海食台は水深約2~4 mと20~26 mの2段に分けられた.南側の海底半島の突端付近でも,最大約16 mの崖が認められ,岩礁・尾根が2段に分けられる.アナグリフ判読に基づけば,この海底崖の基部に形成された小規模な海底扇状地には,北西側隆起の落差2 m程度の低崖が形成されている.変位・変形を判断できるほど,地形データの解像度はよくないが,この低崖は谷に直交する方向に発達することから,活断層に起因する可能性がある.Kitamura et al.(2014;2015a;2015b)は,海岸調査から,下田の地震時隆起量を平均約1.5 mと見積もり,その隆起は海岸線から沖合約1 km付近の岩礁を通る西傾斜の逆断層モデルを推定している.本研究で推定する断層aは,この断層モデルに対比される可能性が高い.
断層bとc:下田沖のDEM150mメッシュに基づき,10 m間隔の等深線図を作成した.下田沖約10 kmの陸棚斜面脚部の水深約200~540 mには,新期海底台地が西側隆起の撓曲変形を受けている.撓曲崖は,西側と東側の2条あり,北北東―南南西に延びる.長さはそれぞれ約26 kmである.金・他(2012)は,この2つの断層を下田沖断層(伊豆東方線のF2)としたが,下田沖の断層a,b,cを下田沖断層帯とする.
なお石廊崎断層(西北西―東南東,高角右横ずれ)と下田沖断層帯(北北東―南南西,西傾斜逆断層)は共役的な関係にあると判断する.メッシュ範囲にデータが無い場合は,周辺のデータを補間して地形モデルが作成されている.したがって地形図は実際の水深と異なる場合があり,海底地形の精度の向上が今後の課題の1つである.
謝辞:本研究では,海上保安庁海洋情報部の津波メッシュデータを利用させて頂きました.