17:15 〜 18:30
[SSS31-P16] 島根半島周辺の活断層とそのテクトニックな意義
キーワード:鹿島断層、活断層、中国地方、内陸地震、海底断層、空中写真
島根半島は中国地方北部の日本海沿岸に位置し、雁行配列する西列・中列・東列の三つの山地からなっている。西列山地は出雲市街地北方付近、中列山地は宍道湖北方付近、東列山地は松江市街地北方から境港市街地北方付近にかけて分布する。これらの山地は主として新第三系の堆積岩類・火山岩類からなり、ほぼ東西走向の褶曲・断層が発達する(鹿野・吉田,1985;鹿野・中野,1986;鹿野ほか,1998など)。これらの山地の南側にはほぼ東西走向の宍道低地帯が発達し、山地と低地帯はそれぞれ新第三系の複背斜と複向斜に対応するとされている(鹿野ほか,1998)。東列山地の西部南縁には鹿島断層(宍道断層)が発達する(活断層研究会編,1991;佐藤・中田,2002など)が、それ以外の地域においては明確な活断層の存在は知られていなかった。今回、詳細な空中写真判読および国土地理院5m~10mDEM立体視画像の検討の結果、既報の活断層の東西延長部に活断層の可能性のある変動地形が見いだされた。本発表では、これらの変動地形の分布と特徴について報告し、そのテクトニックな意義について若干の考察を行う。
既報で報告された活断層は、鹿島町恵曇付近~美保関町下宇部尾間に分布する。河谷・尾根の明瞭かつ系統的な右屈曲に基づいて、確実な右横ずれ活断層とされている(佐藤・中田,2002など)。東部では地質断層(宍道断層)にほぼ一致する1条のトレースであるが、西部では長さ数kmの右雁行するトレース群からなり、それらの位置は地質断層に一致しない。
東列山地の東半部は、東方に突き出た半島状の地形をなしている。この区域の東列山地は、1)北岸は入り組んだリアス海岸、南岸は直線的な海岸線・山麓線となっている、2)分水界が著しく南側に偏り南側斜面は開析が進んでいない急崖状を呈する、3)分水界には北流する河谷の上流部が断ち切られたような風隙地形が多数発達する、といった特徴を持つ。以上の地形学的の特徴から、東列山地の南側の沖積低地下・海底に北上がりの活断層が伏在している可能性が考えられる。山地南側の急崖は外洋側ではなく内湾側であることから、その成因が海食である可能性は低いと考えられる。また、東列山地の南縁付近には北東-南西走向の短い(数km)のリニアメント群が発達し、それを横切る河谷に右屈曲が認められる。これらの屈曲は、東列山地南縁の伏在・海底活断層の右横ずれ変位によって生じた可能性が考えられる。
既報の鹿島断層の西側、中列山地の北縁付近では、長さ数km~5km程度の3条の推定活断層が右雁行しながら分布する。河谷・尾根の右屈曲が多数発達することから、右横ずれ活断層と考えられるが、リニアメントの地形がやや不明瞭で屈曲が系統的ではないことから確実な活断層とは言えない。これらの断層の一部は地質断層の宍道断層とほぼ一致することから、既存の弱線が再活動したものの可能性がある。中列山地北側海岸付近には既報で海底活断層は報告されていないが、中列山地は分水界が北側に偏り、海岸線が直線的な急崖をなすことから、海岸付近の海底に南上がりの活断層が存在する可能性が考えられる。陸上の推定活断層は、この海底活断層から派生した副次的な断層と考えられ、中列山地北岸の海底活断層の右横ずれ変位を示唆する。
西列山地の地形は前述した東列山地東部の地形と類似し、北岸は入り組んだリアス海岸、南岸は直線的な海岸線・山麓線をなす、分水界が著しく南側に偏り南側斜面が開析の進んでいない急崖をなす、北流する河谷の上流部が断ち切られたような風隙地形が多数発達する、といった特徴を持っている。さらに、山地北西端部の宇竜付近では、海成段丘が北方へ傾動している。以上のことから、西列山地の南縁沿いの沖積面下・海底に北上がりの伏在活断層が存在し、山地が北方へ傾動していることが推定される。この伏在活断層の位置は地質断層(大社衝上断層)にほぼ一致する。また、西列山地東端付近には東北東-西南西走向の数kmの右横ずれ断層が認められる。この断層は山地南縁の伏在断層の副次的な断層と考えられ、伏在断層の右横ずれ変位を示唆する。
島根半島の東西沖の海底には、ほぼ東西走向の長大な海底活断層群が発達することが知られている(日本海における大規模地震に関する調査検討会,2015など)。これらの活断層群は島根県~鳥取県の日本海沿岸部に発達し、数100kmにおよぶ長大な変動帯をなしている。直接的な関連は不明であるが、島根半島に発達する活断層群は、これらの海底活断層の延長上に位置し同様な走向を持つことから、これらの海底活断層と一連の構造であり、日本海沿岸の長大な変動帯の一部が陸上に現れたものと解釈できる。
既報で報告された活断層は、鹿島町恵曇付近~美保関町下宇部尾間に分布する。河谷・尾根の明瞭かつ系統的な右屈曲に基づいて、確実な右横ずれ活断層とされている(佐藤・中田,2002など)。東部では地質断層(宍道断層)にほぼ一致する1条のトレースであるが、西部では長さ数kmの右雁行するトレース群からなり、それらの位置は地質断層に一致しない。
東列山地の東半部は、東方に突き出た半島状の地形をなしている。この区域の東列山地は、1)北岸は入り組んだリアス海岸、南岸は直線的な海岸線・山麓線となっている、2)分水界が著しく南側に偏り南側斜面は開析が進んでいない急崖状を呈する、3)分水界には北流する河谷の上流部が断ち切られたような風隙地形が多数発達する、といった特徴を持つ。以上の地形学的の特徴から、東列山地の南側の沖積低地下・海底に北上がりの活断層が伏在している可能性が考えられる。山地南側の急崖は外洋側ではなく内湾側であることから、その成因が海食である可能性は低いと考えられる。また、東列山地の南縁付近には北東-南西走向の短い(数km)のリニアメント群が発達し、それを横切る河谷に右屈曲が認められる。これらの屈曲は、東列山地南縁の伏在・海底活断層の右横ずれ変位によって生じた可能性が考えられる。
既報の鹿島断層の西側、中列山地の北縁付近では、長さ数km~5km程度の3条の推定活断層が右雁行しながら分布する。河谷・尾根の右屈曲が多数発達することから、右横ずれ活断層と考えられるが、リニアメントの地形がやや不明瞭で屈曲が系統的ではないことから確実な活断層とは言えない。これらの断層の一部は地質断層の宍道断層とほぼ一致することから、既存の弱線が再活動したものの可能性がある。中列山地北側海岸付近には既報で海底活断層は報告されていないが、中列山地は分水界が北側に偏り、海岸線が直線的な急崖をなすことから、海岸付近の海底に南上がりの活断層が存在する可能性が考えられる。陸上の推定活断層は、この海底活断層から派生した副次的な断層と考えられ、中列山地北岸の海底活断層の右横ずれ変位を示唆する。
西列山地の地形は前述した東列山地東部の地形と類似し、北岸は入り組んだリアス海岸、南岸は直線的な海岸線・山麓線をなす、分水界が著しく南側に偏り南側斜面が開析の進んでいない急崖をなす、北流する河谷の上流部が断ち切られたような風隙地形が多数発達する、といった特徴を持っている。さらに、山地北西端部の宇竜付近では、海成段丘が北方へ傾動している。以上のことから、西列山地の南縁沿いの沖積面下・海底に北上がりの伏在活断層が存在し、山地が北方へ傾動していることが推定される。この伏在活断層の位置は地質断層(大社衝上断層)にほぼ一致する。また、西列山地東端付近には東北東-西南西走向の数kmの右横ずれ断層が認められる。この断層は山地南縁の伏在断層の副次的な断層と考えられ、伏在断層の右横ずれ変位を示唆する。
島根半島の東西沖の海底には、ほぼ東西走向の長大な海底活断層群が発達することが知られている(日本海における大規模地震に関する調査検討会,2015など)。これらの活断層群は島根県~鳥取県の日本海沿岸部に発達し、数100kmにおよぶ長大な変動帯をなしている。直接的な関連は不明であるが、島根半島に発達する活断層群は、これらの海底活断層の延長上に位置し同様な走向を持つことから、これらの海底活断層と一連の構造であり、日本海沿岸の長大な変動帯の一部が陸上に現れたものと解釈できる。