16:30 〜 16:45
[SSS32-11] 地下水流動の気圧応答を用いて推定された地震に伴う透水性変化
キーワード:透水性変化、地下水流動、2011年東北地方太平洋沖地震
大気荷重変化による地下水流動は帯水層の水理学的特性に依存しており,観測された湧水量および間隙水圧の気圧応答には周辺岩盤の透水性構造に関する情報が含まれている。本発表では,断層破砕帯で観測された湧水量および間隙水圧の気圧応答を用いて,2011年東北地方太平洋沖地震に伴う透水係数および貯留係数の変化を推定した結果について報告し,透水性変化の原因について考察した。
断層破砕帯はその周辺岩盤と比べて透水性が高く,大気荷重による地下水流動は主に破砕帯内で生ずると考えられる。向井・他(2015)は,断層破砕帯内で水平方向にのみ移動する一次元地下水流動をモデル化し,大気荷重変化に伴う湧水量変化の周波数依存性を表す理論式を導出した。この理論式を観測された湧水量の気圧応答に当てはめることによって,透水係数kと貯留係数Sの積k*Sの変化を推定することができる。
同じモデルを用いて,断層破砕帯内における間隙水圧の気圧応答の理論式を導出することもできる。このとき,その理論式は透水係数と貯留係数の比S/kを変数にもつ。その結果,湧水量と間隙水圧の気圧応答観測値を同時に解析することによって,透水係数と貯留係数の変化を個々に推定することが可能となる。
2010年8月~2011年12月に六甲高雄観測室で得られた湧水量および間隙水圧の観測値,ならびに神戸地方気象台の地上気圧観測値を用いて,同観測室が貫く万福寺断層破砕帯の透水係数および貯留係数の変化を推定した。このとき,観測期間を512データ(21.3日)の解析区間で分割し,FFTを用いた周波数解析によって各区間の気圧応答の周波数依存性を計算した。その後,得られた気圧応答に一次元地下水流動モデルの理論式を当てはめ,最適なモデル・パラメータとして透水係数および貯留係数の変化を推定した。
推定された貯留係数は地震直後に約3倍に増大した。向井・大塚(2012)は,水源から観測室へ流れ出す地下水流動モデルを用いて六甲高雄観測室周辺の水源の間隙水圧を推定し,水源の間隙水圧が地震直後に低下し,数ヶ月間回復しなかったことを報告した。これらのことから,亀裂を目詰まりさせていた泥分等が地震動によって流出し,水源を含め,周辺岩盤から間隙水が過剰に排出されたことが示唆される。
一方,推定された透水係数は地震直後に約4割縮小した。このことは,一見,地震動が泥分等を流出させたとの上記の推察と矛盾する。これに関しては,地震動による透水性の変化が周辺岩盤で非一様に生じた可能性が考えられる。周期的な気圧応答による間隙水の移動は狭い範囲に限定されることから,本発表で推定された透水係数は観測室近傍の透水性を反映していると考えられる。地震動によって亀裂から流出した泥分等が間隙水の出口である観測室近傍に集中して亀裂に目詰まりを引き起こした結果,観測室近傍では地震直後に透水性が低下した可能性が示唆される。
断層破砕帯はその周辺岩盤と比べて透水性が高く,大気荷重による地下水流動は主に破砕帯内で生ずると考えられる。向井・他(2015)は,断層破砕帯内で水平方向にのみ移動する一次元地下水流動をモデル化し,大気荷重変化に伴う湧水量変化の周波数依存性を表す理論式を導出した。この理論式を観測された湧水量の気圧応答に当てはめることによって,透水係数kと貯留係数Sの積k*Sの変化を推定することができる。
同じモデルを用いて,断層破砕帯内における間隙水圧の気圧応答の理論式を導出することもできる。このとき,その理論式は透水係数と貯留係数の比S/kを変数にもつ。その結果,湧水量と間隙水圧の気圧応答観測値を同時に解析することによって,透水係数と貯留係数の変化を個々に推定することが可能となる。
2010年8月~2011年12月に六甲高雄観測室で得られた湧水量および間隙水圧の観測値,ならびに神戸地方気象台の地上気圧観測値を用いて,同観測室が貫く万福寺断層破砕帯の透水係数および貯留係数の変化を推定した。このとき,観測期間を512データ(21.3日)の解析区間で分割し,FFTを用いた周波数解析によって各区間の気圧応答の周波数依存性を計算した。その後,得られた気圧応答に一次元地下水流動モデルの理論式を当てはめ,最適なモデル・パラメータとして透水係数および貯留係数の変化を推定した。
推定された貯留係数は地震直後に約3倍に増大した。向井・大塚(2012)は,水源から観測室へ流れ出す地下水流動モデルを用いて六甲高雄観測室周辺の水源の間隙水圧を推定し,水源の間隙水圧が地震直後に低下し,数ヶ月間回復しなかったことを報告した。これらのことから,亀裂を目詰まりさせていた泥分等が地震動によって流出し,水源を含め,周辺岩盤から間隙水が過剰に排出されたことが示唆される。
一方,推定された透水係数は地震直後に約4割縮小した。このことは,一見,地震動が泥分等を流出させたとの上記の推察と矛盾する。これに関しては,地震動による透水性の変化が周辺岩盤で非一様に生じた可能性が考えられる。周期的な気圧応答による間隙水の移動は狭い範囲に限定されることから,本発表で推定された透水係数は観測室近傍の透水性を反映していると考えられる。地震動によって亀裂から流出した泥分等が間隙水の出口である観測室近傍に集中して亀裂に目詰まりを引き起こした結果,観測室近傍では地震直後に透水性が低下した可能性が示唆される。