日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS32] 地殻変動

2016年5月24日(火) 09:00 〜 10:30 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球科学科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、座長:水藤 尚(国土交通省国土地理院)、太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

10:15 〜 10:30

[SSS32-18] 日本海東縁、佐渡海嶺の地殻短縮量

*岡村 行信1 (1.独立行政法人産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

キーワード:日本海東縁、地殻短縮、断層関連褶曲

日本海東縁の佐渡海嶺で、地質構造から東西圧縮による地殻短縮量の推定を試みた。日本海東縁には約350万年前から東西方向圧縮応力によって、多くの逆断層が形成されてきた。逆断層の多くは中新世の正断層が再活動したもので、インバージョンテクトニクスとして知られている。佐渡海嶺は佐渡島の北側に位置する長さ約250 km、幅約70 kmの海底の高まりで、その内部には多くの逆断層が発達し、それぞれが幅10〜20 kmの非対象な断面を持つ背斜構造を伴う。この背斜構造が上部地殻全体を切る逆断層のすべりによって形成された断層関連褶曲であると仮定すると、背斜構造の断面積は、断層下端深度と上部地殻の短縮量の積となるはずで、地殻短縮量を推定することができる。
本解析には、旧地質調査所(産業技術総合研究所)が1989年〜1992年にかけて取得した反射断面を用いた。探査システムはシングルチャンネルの高速曳航型で、地下深部の地質構造は不明瞭であるが、海底下数百 mまでの地質構造は十分に観察できる。また東西圧縮方向に近い290度方向の測線が約3 km間隔で存在する。
これらの反射断面の解析から、佐渡海嶺で逆断層が形成される前はほぼ平行な反射面からなる地層が広がっていたが、逆断層の活動によって背斜構造が隆起し始めると、地層中に不整合が形成されたことが明らかになっている。この不整合面の背斜形状と、背斜両側の同じ層準の地層を結ぶ直線との間の面積を計測した。この際、背斜構造全体が堆積層からなり、山頂も浸食されていないことが望ましいが、隆起量の大きい背斜構造は頂部が浸食されて失われている。また、一部の背斜構造は基盤からなり、反射面が認められない。このような場合には、不整合面より下位の地層や隆起域周辺の地質構造から、背斜構造内の背斜形状を推定した。このような解析を約50断面について行った。
佐渡海嶺は複数の背斜列からなる。それぞれの背斜列の走向方向には背斜の断面積が大きく変化するが、佐渡海嶺全体を横断する反射断面のすべての背斜面積を合計すると、測線間の差はかなり小さくなる。断層下端深度を15 kmと仮定すると、佐渡海嶺全体の地殻短縮量は平均して約2 km弱という値が推定された。また、反射断面の方向が290度であるが、実際の短縮方向はより東西に近いことが推定された。このような地質構造に基づいた地殻短縮量の推定手法の課題と意義についても議論する。