日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS32] 地殻変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球科学科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)

[SSS32-P01] 2011年東北地方太平洋沖地震の余効変動と余震の時定数の関係

*飛田 幹男1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震、余効変動、関数近似、余震、粘弾性緩和、緩和時間

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)の余効変動と余震はそれぞれ減衰しつつも継続している。それぞれの時定数の関係を検討したので報告する。
1.はじめに
飛田(2014, 2015, 2016)は、東北沖地震の余効変動時系列が対数関数と指数関数の和で近似されることを示し、モデル1:対数+指数、モデル2:対数+対数+指数、モデル3:対数+指数+指数 を提案した。それぞれの関数項の緩和時定数(に相当する係数)と余震の緩和時定数を比較することで、関数項が代表する地下の現象は何であるかかが見えてくる可能性があるため、今回は次式で表されるモデル2について調査した。
D(t) = aln(1+t/b) +c + dln(1+t/e) - fexp(-t/g) +Vt
しかし、そもそも地震の積算回数は、対数関数・指数関数で近似できるかどうかも疑問であったため、既存の大森公式、改良大森公式、ETASモデルを含め、まずは、地震の積算回数の関数近似から検討を始めた。
2.結果
図1内の地図に示された矩形範囲内で2011年3月11日から2015年10月31日の間に観測されたM5以上の地震の積算回数を、太線で示した。この積算回数に対し、まず、指数関数での近似を試みたが、Utsu et al. (1995)の指摘通り、まったく適合しなかった。次に、対数関数での近似を試みたが、適合度は十分ではなかった。そこで、常時地震活動(background seismicity)を考慮したところ、対数関数で非常に良く近似できることが判明した。
次に、モデル2の3つの関数項の時定数b=0.03日(短期:暫定値)、e=49.6日(中期:暫定値)、g=4610日(長期:暫定値)それぞれの時定数を持つ関数と常時地震活動を用いて、観測された地震の積算回数への回帰曲線を求めた(振幅のみを推定)結果、図1のとおりとなった。中期と長期の時定数による対数関数と指数関数による回帰曲線は、観測値に全く適合しないが、短期の対数関数は観測値に良く適合する。
3.考察
東北沖地震の余震の積算回数は余効変動時系列に適合するモデル2の内の短期の対数関数項成分とほぼ同じ時定数(暫定値)で推移していることが判明した。飛田(2016)は、中期の対数関数と長期の指数関数は比較的広い帯域の時定数をもつ粘弾性緩和に伴う余効変動を代表する可能性があり、一方、短期の対数関数は余効滑りに伴う余効変動を表す可能性があると主張しているが、今回の結果はこの考えと矛盾しない。
地震積算回数が対数関数で良く近似できることは、すなわち大森モデルが有効であることに他ならない。なぜなら、大森公式の時間積分は対数関数となるからである。
謝辞
矩形範囲の設定、地震データ、モデルパラメータは気象庁によるものです。ここに記して感謝致します。