日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS32] 地殻変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球科学科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)

17:15 〜 18:30

[SSS32-P04] 千葉県北部の地震活動と同期した非地震性すべり

*小林 昭夫1弘瀬 冬樹1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:非定常すべり、千葉県北部、GNSS

東北日本では1992年三陸はるか沖の地震(M6.9)[Kawasaki et al. (1995)]、1994年三陸はるか沖地震(M7.6)[Heki et al. (1997)]や2003年十勝沖地震(M8.0)[Miyazaki et al. (2004)]後に、地震と同等や地震を上回る規模の非地震性の余効変動が観測されている。より小さな地震としては、2001年2月25日福島県沖の地震(M5.8)や2002年11月3日宮城県沖の地震(M6.1)で地震の規模を上回る余効すべりが推定されている[三浦・他 (2005)]。Sato et al. (2004) は、2001年青森県東方沖の地震(M6.4)について地震時の3倍のすべりが地震後に発生したことを報告し、この地域では相対的に小規模な地震についても大きな余効変動を伴うことを示唆した。同様の性質は、これまで大きな余効変動が報告されていない関東地方に沈み込む太平洋プレート上面の地震についても見られるのだろうか。ここでは、銚子付近と千葉市付近の太平洋プレート上面の地震活動域周辺で、M6クラスの地震と同じ時期に非地震性の地殻変動が観測されたこと、この地殻変動から推定された非地震性すべりが本震の規模を上回ることを報告する。
GNSSデータは、国土地理院GEONET[国土地理院測地観測センター (2004)]の日座標値(F3解)を用いた。GEONET観測点のアンテナ交換などに伴う人為的要因によるオフセット[岩下・他 (2009)]は、国土地理院Webページで公開されているデータセットを用いて補正した。ここでは1997年6月1日から2000年6月1日を定常期間として、全期間からその係数を用いて定常成分を差し引いた。年周補正はしていない。2000年1年間の非定常変位には、銚子付近に1.5 cm程度の隆起が見られる。2005年1年間の非定常変位には、千葉県北東部から中部にかけて1~1.5 cmのまとまった隆起が見られる。これらの変化は地震による1日でのオフセット的な変化ではなく、2000年は1か月から数か月、2005年は数か月から1年ほどかけて変化しているように見える。ただし、変化量が小さいため、非定常変位が地震の前から始まっているかについては不明である。
銚子の西側には活発な地震活動域があり、過去30年間にM6以上の地震が5回(1989年3月6日M6.0、1990年6月1日M6.0、2000年6月3日M6.1、2005年4月11日M6.1、2011年4月21日M6.0)発生している。千葉市付近には活発な地震活動域があり、過去30年間にM6以上の地震が1回(2005年7月23日M6.0)発生している。Nakajima et al. (2009) のプレート等深線から、これらの地震はフィリピン海プレートの下に沈み込む太平洋プレートの上面に位置していることがわかる。
2000年6月の銚子付近、2005年4月の銚子付近と2005年7月の千葉市付近の地震による理論的な上下変位では、GNSSで観測された隆起量を説明できない。これらの変位が地震活動と同じ場所でのすべりによるものと仮定したときの断層パラメータについて検討した。MICAP-G[内藤・吉川 (1999);山本 (2005)]を用い、先験的情報に基づいたMatsu'ura and Hasegawa (1987) の非線形インバージョン手法により変動源の傾斜角、すべり角、すべり量の3パラメータを推定した。2000年については2000年伊豆諸島北部の地震火山活動に伴う水平変位が大きいため、上下変位のみを用いた。
2000年のすべり角は東向きで、傾斜角はプレート形状(約22度)に近い値となった。一方、2005年のすべり角は銚子、千葉とも東向きだがやや両者に差があり、傾斜角はいずれも等深線から計算される角度(銚子、千葉とも約22度)より15~18度大きかった。1995年以降に発生したM5.0以上の気象庁CMT解について見ると、銚子付近の地震の傾斜角は16~32度(類似の発震機構のみ)である。一方、千葉市付近の地震のCMT解の傾斜角は35~38度と、その場所のプレート境界の傾斜角よりやや大きい。2000年と2005年に銚子付近で発生した地震の規模が同じで、ともにプレート境界の地震と考えられるため、2005年についても2000年について推定されたものと同様のすべりが銚子付近の地震に伴って発生していたと仮定する。その上で2005年の千葉市付近のすべりについてのみ傾斜角、すべり角、すべり量を推定したところ、千葉市付近のすべりの傾斜角は約37度で、2005年の千葉県北東部の上下変位の観測値は理論値とほぼ合った。これらのことから、2005年については、銚子付近では2000年と同様のほぼプレート境界に沿った断層面ですべりが生じ、千葉市付近ではその付近の地震と同様にプレート境界よりやや高角な断層面におけるすべりが発生したとしても説明できる。すべりの規模は、いずれも発生したM6クラスの地震の数倍であり、明らかに地震性より非地震性のすべりの方が大きく、M6クラスを除いたすべりの規模は銚子付近で2000年、2005年ともMw 6.3相当、2005年の千葉市付近でMw6.5相当である。
本調査には国土地理院GEONETの座標値およびオフセット値を使用させていただきました。