日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS32] 地殻変動

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*村瀬 雅之(日本大学文理学部地球科学科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)

17:15 〜 18:30

[SSS32-P16] 侵食地形量を用いた邑知潟断層帯北部の地殻変動

*山口 弘幸1竹内 章2 (1.富山大学大学院理工学教育部、2.富山大学大学院理工学研究部)

キーワード:地形解析、地殻変動、邑知潟断層帯

石川県中央部の宝達丘陵北縁から西部には,北東-南西方向に伸びる邑知潟断層帯と呼ばれる長さ44kmの活断層帯が分布する.邑知潟断層帯は北部に分布する石動山断層,古府断層および南部の3条に分岐している野寺断層,坪山-八野断層,内高松付近の断層に分けられる.これらはいずれも逆断層で,石動山断層,野寺断層北部,内高松付近の断層は東側隆起,古府断層,野寺断層南部,坪山-八野断層は西側隆起とされている.邑知潟断層帯の最新活動や活動間隔等の活動性については,石動山断層中央部のトレンチ調査等によって明らかにされており,石動山断層南部では地質構造等から中期更新世以前に隆起運動が終了したと指摘されているが,断層帯全体の地殻変動の傾向については良く分かっていない.そこで,本研究では地殻運動による活動性を表す地形指標であるSmfとVfを用いて,東側隆起の逆断層が分布する邑知潟断層帯北部の地殻変動について検討した.
Smfは山麓沿いの平野-山地境界(mountain front)の湾入距離とmountain frontの直線距離の比で表され,隆起的な地域ほど湾入の程度は悪くSmf値は小さな値を示す.Vfとは谷底幅と尾根-谷底間の標高差の比で表され,隆起的な地域ほどV字形の断面形状を示し,Vf値は小さくなる. Vf値は,mountain frontから山側200mの位置で断面図を作成し算出した.解析には国土地理院公表の5m-DEMを使用し,mountain frontの判読には5m-DEMから作成した斜度図と地上開度図を重ね合わせた地形図を使用した.
邑知潟断層帯北部の隆起傾向を表すために,石動山断層の分布範囲でMountain front を22区間,野寺断層北部では3区間に分けて地形解析を行った.その結果,Smf値は石動山断層北部区間で3~6程度,中央部で2~3.5程度,南部区間で4~25程度,野寺断層北部区間で3.5~11程度となった.Vf値は石動山断層北部区間で2~6程度,中央部で0.5~3程度,南部区間で4~35程度,野寺断層北部区間で4~6程度である.Smf,Vf値ともに石動山断層中央部で小さく,石動山断層端部および野寺断層北部に向かって増加する傾向が見られる.このことは,石動山断層中央部で最も活動性が高く,石動山断層北部と南部および野寺断層北部に向かって活動性が減少していることを示唆している.
本研究で用いたSmfとVfはこれまで日本における研究事例はなく,今回得られた値と隆起速度の関係を検討するためには,他の断層帯で地質学的に得られている平均変位速度と侵食地形量に関するデータを蓄積していく事が重要である.