日本地球惑星科学連合2016年大会

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口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS33] 都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト

2016年5月23日(月) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:*酒井 慎一(東京大学地震研究所)、平田 直(東京大学地震研究所)、佐藤 比呂志(東京大学地震研究所地震予知研究センター)、佐竹 健治(東京大学地震研究所)、鶴岡 弘(東京大学地震研究所)、座長:平田 直(東京大学地震研究所)、酒井 慎一(東京大学地震研究所)

13:45 〜 14:00

[SSS33-01] 都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト:①首都直下地震の地震ハザード・リスク予測のための調査・研究

*平田 直1中川 茂樹1酒井 慎一1鶴岡 弘1佐藤 比呂志1佐竹 健治1木村 尚紀2本多 亮3堀 宗朗1長尾 大道1石辺 岳男1村岸 純1加納 将行1中村 亮一1パナヨトプロス ヤニス1横井 佐代子1 (1.東京大学地震研究所、2.防災科学技術研究所、3.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:首都圏、地震災害誘因、フィリピン海プレート

私たちは、「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」によって整備された、首都圏地震観測網(MeSO-net)を活用して、2011年東北地方太平洋沖地震発生以降の首都圏における新たな地震像(発生場所、地震規模、地震発生頻度)を解明することと、構造物の大規模シミュレーション数値解析に基づいて、そうした大地震が発生した時の都市の詳細な地震被害評価技術を開発することを目標として、「都市の脆弱性が引き起こす激甚災害の軽減化プロジェクト:①首都直下地震の地震ハザード・リスク予測のための調査・研究」を2012年から5か年計画で進めている。今年度は、計画の最終年度にあたり、主たる成果をまとめる。
本プロジェクトでは、将来に首都圏で発生する大地震の姿を予測するために、(A)現在発生している地震から直接将来の地震を予測する手法と、(B)現在のデータとモデルを用いて過去の地震の姿をより現実性をもって復元し、そのような地震が将来起きる可能性があると考える二つの手法を用いている。そのどちらでも、現在の地震の震源分布と地震波速度、Qの3次元分布は基本となる。そのため、MeSO-netによって、(A1)首都圏に約300カ所から連続記録を収集して、(A2)震源分布解析、(A3)波走トモグラフィーによる速度分布推定(Nakagawa et al., 2010)、(A4)スペクトル解析によるQ構造推定(Panayotopoulos et al., 2014)、(A5)波形相関法による観測点間のグリーン関数の復元と速度推定等のデータ解析を行っている。さらに、(B1)古い観測記録による震源の精度の評価、(B2)歴史地震学的研究によって1855年安政江戸地震など被害分布から歴史地震の震度分布を推定し、震源、マグニチュードなどの地震像を解明する試みを行っている。これらの知見によって明らかになりつつある地盤の揺れと、建物等の揺れの関係を解明することによって、(C)都市全体の揺れと被害を高精度に評価する手法(地震ハザード・リスク予測法)を提案する準備を進めている。このために、(C1)観測点のない地表の揺れを推定する手法を開発し、(C2)首都圏にある数百万棟の建物の揺れを評価して、可視化する技術が必要になる。
MeSO-netのデータから自動的に地震を検出して震源を決定する手法を開発し、首都圏の震源のカタログを作製した(A2)。また、高密度の観測点を用いて発震機構解を求めてデータベース化し、現在の地震データ(S-P時間、発震機構解)との類似性から過去の観測点の少ない時期の震源を推定した(B2)。今後は、現在観測されている震度分布と、歴史地震の震度分布との類似性から歴史地震の震源、マグニチュードを推定することを進める。さらに、3次元の速度構造とQ構造モデルを用いて、理論的に任意の震源、Mの地震の震度分布を求める手法を開発して、歴史地震の震度分布と比較して、震度とMを推定する。現時点では、速度とQモデルから推定された理論震度分布と観測震度を比較して手法の検証を進めている段階である(中村・他2016、Panayotopoulos et al., 2016)。
本プロジェクトの中で、MeSO-net観測点を用いて、任意の地点の地震動を推定する手法を開発した(加納・他、2016)。この手法を発展させることで、首都圏の任意の地点の建物の揺れを推定する手法が開発できる。これは、首都圏の地震リスクを評価する新しい手法である。