[S-TT51] 地震観測・処理システム

[STT51-P03] S-net観測点を用いた仮想震源の震源決定シミュレーション

*眞保 敬¹、植平 賢司¹、金沢 敏彦¹、望月 将志¹、藤本 博己¹、野口 伸一¹、功刀 卓¹、汐見 勝彦¹、青井 真¹、関口 渉次¹、松本 拓己¹、岡田 義光¹、篠原 雅尚²、山田 知朗² (1.防災科学技術研究所、2.東大地震研)

海底下で発生する地震や津波を観測するために、日本海溝海底地震津波観測網（S-net）の整備事業を2011年から開始した。S-netは房総沖から北海道沖まで150の観測点を設置し、その設置間隔は東西方向（海溝軸に直交方向）約30km、南北方向（海溝軸に平行方向）約50-60kmである。S-netの整備により、津波警報や緊急地震速報をこれまでよりも早く発表することが可能になる。海底下で発生する地震を解明するためには、海底下における震源分布、発震機構解、地震波速度構造や応力場等を高精度で求め、沈み込むプレートと地震発生域との関係や、プレート間におけるひずみの蓄積過程等を調べる必要がある。これらを詳細に調べるためには、海底下で発生する地震を精度よく決定することが必須である。我々は、これまで自己浮上式海底地震計で決定された2011年太平洋沖地震の余震[Shinohara et al. (2011, 2012) ]からS-net観測点までの走時を計算することで震源決定を行い、S-netの震源決定精度を調べてきた。S-net観測点の震源決定精度の見積もりには、2011年太平洋沖地震の震源域よりも広範囲で同様の解析を行うことも重要である。
本研究では、S-netによる震源決定精度を理解するために、仮想的に配置した震源（仮想震源）からS-net観測点までの理論走時を用いることにより、震源決定のシミュレーションを行った。その震源は、北緯35.5°から北緯40.0°まで0.25°間隔、経度140.5°から経度 143.0°の範囲に0.25°間隔、深さ5-50kmの範囲に2.5km間隔で仮定した。その地震数は3971個である。仮想震源から各観測点までの理論走時を計算した。その理論走時から各観測点のP波とS波の到達時刻データを作成した。そして、その到達時刻からhypomh［Hirata and Matu’ura (1987)］を用いて震源決定した。この時、S-net観測点の速度構造は、S-net敷設ルート上で行われた地下構造調査、および過去の構造調査の結果を参考に、観測点毎に仮定した。その結果、決定された震源は3914個であった。決定された震源と仮想震源を比較すると、196個の震源は仮想震源に対し震央もしくは震源深さの差異が3km以上であった。特に、海岸線から100km以上内陸に仮定した震源を精度良く決めることができなかった。観測網から距離が離れると震源決定精度が悪くなるため、S-netで精度良く決定できる範囲を調べることは重要である。