日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT52] 空中からの地球計測とモニタリング

2016年5月23日(月) 09:00 〜 10:30 A07 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、座長:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(理学))、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)

09:15 〜 09:30

[STT52-02] 周波数領域型空中電磁探査による比抵抗の深度情報に関する研究

*奥村 稔1影浦 亮太1河戸 克志1高原 晃宙2瀬戸 秀治2木下 篤彦2 (1.大日本コンサルタント株式会社、2.国立研究開発法人土木研究所土砂管理研究グループ火山・土石流チーム)

キーワード:周波数領域型空中電磁探査、比抵抗断面、インバージョン

空中電磁探査は,電磁誘導現象を利用して空中から地下の比抵抗分布を調査するもので、探査方法の違いから時間領域型と周波数領域型がある。周波数領域型は、複数の固定された送・受信コイルを格納したセンサーを航空機に曳航して計測するもので、時間領域型と比較して探査深度は浅いものの、分解能は高いとされる。
周波数領域型空中電磁探査の解析は、まず、測定周波数毎に見掛比抵抗平面図を作成し、次に測定周波数と見掛比抵抗との関係式から求めた探査深度にその見掛比抵抗をプロットして見掛比抵抗断面図が作成される。この比抵抗の深度情報の精度を上げるために、数値モデルを使用したインバージョンに関する研究が進められているが、防災の実務的な観点で検証した事例は少ない。
そこで本研究は、実際の周波数領域型空中電磁探査の測定データを用いて見掛比抵抗断面と一次元インバージョン解析による断面を作成し、地質・地下水情報に基づいて、各々の比抵抗の深度情報について検討した。
まず、付加体分布地域や火山地域における大規模な崩壊や地すべりを含む広域斜面での測定データを収集し、大規模な崩壊斜面や地すべり斜面における見掛比抵抗の深度情報を整理した。その結果、大規模な崩壊斜面や地すべり斜面とその近傍の斜面は、(1)浅部から深部に向かって高比抵抗から低比抵抗となり、その比抵抗コントラストが明瞭なタイプと、(2)浅部から深部に向かって低比抵抗から高比抵抗となり、その比抵抗コントラストが不明瞭なタイプに大別できた。また、土砂の移動形態に着目すると、大規模な崩壊斜面の近傍には、(1)タイプの比抵抗構造を示す斜面が多いことが確認できた。
そこで、(1)タイプを対象として、実際の測定データを用いてSengpiel(2000)の方法での見掛比抵抗断面を作成するとともに、一次元インバージョン解析を行った。さらに、ボーリングで確認された地質と地下水の情報に基づいて、これら深度方向の比抵抗分布の精度を比較検討した。その結果、 (1)タイプでは、見掛比抵抗断面と一次元インバージョン解析では、比抵抗が変化する深度がほぼ同程度であることが確認できた。このことから、(1)タイプの場合、Sengpiel(2000)の断面表示方法の妥当性が実際の測定データから確認され、見掛比抵抗断面でも大規模崩壊に関わる概略調査としての精度は確保されていると考えられた。
一方、 (2)タイプは、見掛比抵抗断面では明瞭な比抵抗コントラストが得られにくく、定量的な検討は難しいと考えられる。
今後、(2)タイプでの比抵抗の深度情報の精度を上げるために、一次元インバージョン解析による検討を行うとともに、防災実務での適用例がほとんど無い周波数領域型空中電磁探査における二次元や三次元インバージョンについても実際の測定データを適用した研究を進めていきたい。