日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地球科学へのルミネッセンス年代測定の貢献

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*杉崎 彩子(産業技術総合研究所)、田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、近藤 玲介(皇學館大学教育開発センター)、伊藤 一充(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

17:15 〜 18:30

[STT53-P02] 合成方解石を用いたα, β, γ, X線に対する熱ルミネッセンス特性研究

*小形 学1長谷部 徳子2福士 圭介2藤井 直樹3山川 稔3佐藤 努4 (1.金沢大学大学院自然科学研究科、2.金沢大学環日本海域環境研究センター、3.原子力環境整備促進・資金管理センター、4.北海道大学 大学院工学研究院)

キーワード:熱ルミネッセンス、方解石

方解石熱ルミネッセンスは石英と比較し、基礎的な理解が不十分な点が多く、近年では年代測定に用いられる例は少ない。主な問題としては方解石熱ルミネッセンス特性と不純物濃度の関係について理解が進んでいないことが挙げられる。方解石熱ルミネッセンス特性は不純物濃度に強く依存することが報告されているが、それらの定量的な関係や、放射線の違いによる熱ルミネッセンス特性の差については考慮されていない。
これまでに、天然炭酸塩を用い、化学組成を測定するとともに、各種放射線(α線, β線, γ線, X線)によるルミネッセンス形成効率を調査した結果、Mg, Mn, Fe濃度が発光特性に大きく寄与を与える可能性が明らかになった。本研究では、方解石の不純物濃度と熱ルミネッセンス特性の関係を明らかにするために、微量元素濃度を調整した方解石を合成し、α, β, γ, X 線による熱ルミネッセンス特性を調べた。
本研究室では、検量線作成に用いる人工放射線としてX線を用いている。試料にα線(241Am), β線(90Sr)もしくはγ線(60Co)を照射した後、X線を用いたSAR法にて、等価線量を測定した。各放射線で与えた線量と測定した等価線量を比較してX 線に対する各種放射線の熱ルミネッセンス発光効率(a-x-value, b-x-value, c-x-value)を求めた。
Mnを添加した試料のc-x-valueは、無添加試料(0.60)やMgのみを添加した試料(0.70)と比較し、0.12-0.40と低い値を示した。またMn濃度とc-x-valueが逆相関関係であることが明らかになった。MnとMg、またはMnとFeを添加した試料はMnのみを添加した試料と比較し、若干低い値を示したが、MgやFe濃度による差は見られなかった。これらの結果より、Mnはc-x-valueを低くする効果を持ち、MgやFeがc-x-valueに与える影響はMnに比べ無視できる程度であると考えられる。
本発表にて、a-x-value, b-x-valueの結果についても報告する。