日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地球科学へのルミネッセンス年代測定の貢献

2016年5月22日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*杉崎 彩子(産業技術総合研究所)、田村 亨(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、近藤 玲介(皇學館大学教育開発センター)、伊藤 一充(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

17:15 〜 18:30

[STT53-P05] 霞ヶ浦西浦湖岸平野堆積物のルミネッセンス年代測定

*羽田 一貴1伊藤 一充2田村 亨2山口 直文3 (1.茨城大学大学院理工学研究科、2.産業技術総合研究所地質調査総合センター、3.茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)

キーワード:光ルミネッセンス年代測定、pIRIR年代測定、霞ヶ浦、湖岸平野

霞ヶ浦は茨城県南東部に位置する海跡湖であり,沿岸部に海水準変動に対応し形成したとされる湖岸平野が広がっている.海水準変動と関連する湖岸平野の地形発達史を研究することは,湖の古環境や気候変動を考える上で重要である.これまでの研究で地形的な特徴などから湖岸平野の形成史が検討されてきたが,絶対年代による議論が不十分であり,未解明な部分が大きい.そこで,本研究では霞ヶ浦湖岸平野堆積物の光ルミネッセンス年代を求め,湖岸平野の形成,発達過程を解明することを試みた.
茨城県行方市五町田の湖岸平野において,湖岸-台地方向に側線をとり,ジオスライサーを用いて9地点のコア試料を得た.コアから厚さ5 cmの6試料を暗室内で採取し,ふるい,薬品処理により,粒径120–250 μmの石英と長石を抽出した.石英のOSL信号を測定したところ,年代測定に不向きな減衰速度の遅い成分が卓越することが明らかになった.そこで,長石のpost-IR IRSL(pIRIR)年代測定法とIRSL年代測定法を用いて等価線量を求めることにした.測定の条件は,テストの結果からプレヒート温度とカットヒート温度が200℃,ホットIRブリーチが205℃とした.pIRIRの測定温度は,先行研究において湖岸平野が縄文海進期以降に形成されたとされているため,若い年代で有効である比較的低温の170℃とした.pIRIR170のテストで,残存線量が約1 Gy以下,フェーディング率が0–1%前後になり,pIRIR170が有効であることを確認した.一方で,IRSL50のフェーディング率は,10%前後であった.
pIRIR170およびIRSL50の結果,ジオスライサーで採取された試料の深度が深くなるにつれて,等価線量が大きくなる傾向がみられた.pIRIR170の等価線量は,台地側の一番深い1試料で約50 Gy,その他の5試料で1–15 Gy前後を示した.今後は,ICP-MSによる放射性核種濃度の定量から年間線量を求め,年代値を算出し,14C年代との比較検討を行う.