日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

2016年5月23日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、萬年 一剛(神奈川県温泉地学研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、佐々木 寿(アジア航測株式会社)

17:15 〜 18:30

[SVC46-P01] 火山観測用自走式センサー「ほむら」の開発:野外における長期運用試験

*金子 克哉1伊藤 公一2安部 祐一3鷺 恕太郎4 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科、2.京都大学大学院理学研究科、3.京都大学大学院工学研究科、4.京都大学総合人間学部)

キーワード:火山観測ロボット、遠隔操縦、リアルタイムデータ取得

火山噴火の予兆現象を把握し,火山噴火のダイナミックスの理解を行うためには,火口近傍さらには火口内における諸現象のモニタリングが必須である.現状において,火山活動の静穏時に設置された火口カメラによる監視,火山ガスなどの観測が行われている.一方,予想外の噴火が起こった火山や,活動中の火山において,新たに観測機器を設置しようとしても,危険性のためそれができず,十分な観測体制を持てない場合もある.本研究では,この現状を打破し,火口内やごく近傍の機動的観測を行う実用的な無人陸上車両型ロボットのシステム「火山観測用自走式センサー『ほむら』」の開発を進めている.今回の発表では,2015年冬に行われた,京都大学また霧島硫黄山にて行われた,長期(1から2か月)の野外運用試験ついての結果を報告する.
ほむらは,遠隔地からの無線操縦により,火山フィールドを走行し,人が近づけない活動中の火口近傍や火口内の映像および搭載センサーによる観測データをリアルタイムで操縦局に送信する低コストロボットである.現段階において,我々は,ほむら試作機を製作した.ほむらは,上下対象の構造を持つ6輪の車形状のロボットである.大きさは長さ750 x 幅430 x高さ 310 mm,重さは約12kgである.機体内には,カメラ,GPS,CO2ガスセンサーなどのセンサー類を収納する.基地局との通信は,Docomo FOMAによる64kbps通信で行う.ほむらを使用しない場合には,遠隔操作より電源を切り,その間の消費電力をきわめて低く抑えることができる.また,任意の時に,遠隔操作により電源を入れ,観測活動を行うことができる.
2015年1月に,我々は,ほむらを京都大学吉田南2号館の屋上に放置し,約1か月にわたり室内よりほむらの制御を行った.運用中,降雪のため雪に埋もれ,その後雪が解けることなどがあったが,動作には影響なく,カメラおよびセンサーは正常に動作した.
その後,我々は,2015年2月19日に霧島硫黄山山頂までほむらを運び,硫黄山火口が見えるようにほむらを設置し,4月8日までの約2か月間にわたり,京都よりほむらを遠隔操縦により運用する試験を試みた.この期間は,霧島硫黄山付近で火山性地震,微動が観測され,火山周辺警報が出され,周辺約1kmの立ち入りが規制されていた時期である(立ち入り規制は2014年10月24日から2015年5月1日まで).硫黄山山頂周辺では,火口縁の高まりのところでは,えびの高原の観光施設を見通すことができ,FOMA電波が良好であったものの,火口内および低い場所では,FOMA電波状況が不安定であった.そのため,今回は,電波状況が安定している場所にほむらを設置し,ほむらを移動させないことにした.設置の後,京都大学に戻り,大学よりほむらの遠隔操縦を行った.その後,一日に,1~2時間程度,毎日ほむらを起動し,写真および内蔵の試験用のセンサー(CO2および温度計)のデータをリアルタイムで取得することを行った.試験期間中,雨,霧,低温などの悪天候の時もあったが,遠隔操縦に関するトラブルは起こらなかった.4月8日に,電池がなくなり,その後には操縦不可能となった.4月15日に,我々は再び現地に赴き,ほむらを回収した.回収した後,電池の充電を行ったところ,ほむらは問題なく稼働した.
今回の試験により,長期間でも安定して運用できることが確認された.FOMA電波が利用可能であるということは前提であるが,ほむらは,今回の試験のように,噴火の可能性が高まっている火山に,噴火が起こらないうちに設置し,数か月間にわたり,臨時の観測ポイントとして利用できる.今後も同様の観測運用を行っていきたいと考える.
本活動は2013年度より東京大学地震研究所特定共同研究B,および科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究)の援助を受けており,ここに謝意を表します.