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[SVC46-P14] 鳴子-荷坂テフラ(Nr-N)の分布に関する再検討
キーワード:鳴子火山、鳴子-荷坂テフラ、Nr-N、等層厚線図、降下火砕物
鳴子火山は宮城県北西部に位置する第四紀火山で,直径7㎞程度の不鮮明な輪郭をもつカルデラとその中央部の溶岩ドーム群からなる.同火山の既往最大の噴火は約9万年前に生じたと考えられており(町田・新井,2003),鳴子-荷坂テフラ(Nr-N:早田,1989)を噴出している.このうち降下テフラに関しては,早田(1989)や土谷ほか(1997)によると複数のテフラ層に区分されると報告されており,複数回の噴火により堆積した可能性が示唆されるが,それらの分布範囲は示されていない.今回,各テフラ層の分布範囲を明らかにすることを目的として,鳴子火山近傍から遠方まで広範囲にわたってNr-Nの降下テフラの調査を行うとともに,噴火様式についても予察を行った.
早田(1989)によると,鳴子-荷坂テフラは荷坂火砕流堆積物も含めて,下位より降下軽石層(N1),降下軽石と降下火山灰の互層(N2),厚い火砕流堆積物(N3:荷坂火砕流),細粒のガラス質降下火山灰層(N4),成層した降下火山灰層(N5)からなり,N4は火砕流の噴出に伴って発生したco-ignimbrite ash fall depositであると報告されている.
そこで,本調査ではN1,N2およびN5を調査対象とし,鳴子-荷坂テフラの認定は主として早田(1989)に示されている層序に基づき行い,火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率測定も実施した.
以下に調査結果としてN1,N2およびN5の性状をまとめ,付図の模式柱状図に大崎市古川北宮沢朴木欠地点の記載を示した.
N1は,岩片を多く含む降下軽石から構成されており,少なくとも3つに区分される.下位の北原火山灰との間に薄いロームを挟み時間間隙がある.上位のN2との境界部に時間間隙を示す堆積物は認められない.
N2は,降下軽石と降下火山灰の互層であり,少なくとも9つに区分される.降下火山灰層の一部には火山豆石が確認される. N3の分布域では,火砕流により一部浸食されており,その他の地域では基本的に直接最上位のN5に覆われている.
N5は,灰緑色を呈すガラス質の細粒降下火山灰層である.土谷ほか(1997)では,この堆積物を観察できる露頭が少なくこれが火砕流を噴出した火山活動に引続く活動により噴出された火山灰であるかどうかは確認できなかったとされているが,本調査では,直接下位のN3を覆っている状況が確認できた.また,早田(1989)によれば成層した降下火山灰層からなるとされるが,本調査では塊状を呈する産状のみ確認できた.この堆積物は鳴子火山近傍では認められず,N3の分布域やさらに遠方で認められる.
これらの調査結果を踏まえ,N1,N2およびN5の分布軸方向について検討を行った.鳴子火山の真北を0°,真東を90°とし,鳴子火山から各露頭の方位角と露頭での最大層厚の関係を確認した結果,N1は75°~90°方向,N2は80°~95°方向,N5は55°~85°と105°~130°の2方向に最大層厚のピークが確認されることから,これらの方向に分布軸があったと考えられる.一方,N1とN2は連続的に堆積し,分布軸もほぼ同一方向であることから,一連の噴火によって噴出されたもの(N1+N2)として考慮し,再度分布軸方向の検討を行った結果,N1+N2の分布軸は80°~105°の方向であったと考えられる。
鳴子-荷坂テフラの最大層厚および分布軸方向の検討結果を踏まえ,N1+N2とN5の等層厚線を作成し,町田・新井(2003)の等層厚線と整合することを確認した。なお,参考として,N1+N2とN5の噴出量を須藤ほか(2007)の方法に基づき算定し,N1+N2は1.55km3,N5は1.46 km3の噴出量となる結果を得た.
火山ガラスの特徴等から推測される噴火様式は,次のように考えられる.N1およびN2の火山ガラスは,軽石タイプを主体(90~70%程度)とし,降下軽石からなる産状であることからプリニー式噴火が推測されるが,N2の降下火山灰層の噴火様式は現在検討中である.ただ,N2はN1よりバブルウォール型のガラスが多いことから,噴火条件の変化が示唆される.大規模な荷坂火砕流(5~10km3:土谷ほか,1997)およびそのco-ignimbrite ash (N4)の堆積後に噴出したN5は,火山ガラスの含有量が少なく,噴火様式の特定が困難であるものの,急冷破砕型の火山ガラスの割合がN1やN2よりも多いことから,マグマ水蒸気噴火であった可能性が示唆される.
早田(1989)によると,鳴子-荷坂テフラは荷坂火砕流堆積物も含めて,下位より降下軽石層(N1),降下軽石と降下火山灰の互層(N2),厚い火砕流堆積物(N3:荷坂火砕流),細粒のガラス質降下火山灰層(N4),成層した降下火山灰層(N5)からなり,N4は火砕流の噴出に伴って発生したco-ignimbrite ash fall depositであると報告されている.
そこで,本調査ではN1,N2およびN5を調査対象とし,鳴子-荷坂テフラの認定は主として早田(1989)に示されている層序に基づき行い,火山ガラスおよび斜方輝石の屈折率測定も実施した.
以下に調査結果としてN1,N2およびN5の性状をまとめ,付図の模式柱状図に大崎市古川北宮沢朴木欠地点の記載を示した.
N1は,岩片を多く含む降下軽石から構成されており,少なくとも3つに区分される.下位の北原火山灰との間に薄いロームを挟み時間間隙がある.上位のN2との境界部に時間間隙を示す堆積物は認められない.
N2は,降下軽石と降下火山灰の互層であり,少なくとも9つに区分される.降下火山灰層の一部には火山豆石が確認される. N3の分布域では,火砕流により一部浸食されており,その他の地域では基本的に直接最上位のN5に覆われている.
N5は,灰緑色を呈すガラス質の細粒降下火山灰層である.土谷ほか(1997)では,この堆積物を観察できる露頭が少なくこれが火砕流を噴出した火山活動に引続く活動により噴出された火山灰であるかどうかは確認できなかったとされているが,本調査では,直接下位のN3を覆っている状況が確認できた.また,早田(1989)によれば成層した降下火山灰層からなるとされるが,本調査では塊状を呈する産状のみ確認できた.この堆積物は鳴子火山近傍では認められず,N3の分布域やさらに遠方で認められる.
これらの調査結果を踏まえ,N1,N2およびN5の分布軸方向について検討を行った.鳴子火山の真北を0°,真東を90°とし,鳴子火山から各露頭の方位角と露頭での最大層厚の関係を確認した結果,N1は75°~90°方向,N2は80°~95°方向,N5は55°~85°と105°~130°の2方向に最大層厚のピークが確認されることから,これらの方向に分布軸があったと考えられる.一方,N1とN2は連続的に堆積し,分布軸もほぼ同一方向であることから,一連の噴火によって噴出されたもの(N1+N2)として考慮し,再度分布軸方向の検討を行った結果,N1+N2の分布軸は80°~105°の方向であったと考えられる。
鳴子-荷坂テフラの最大層厚および分布軸方向の検討結果を踏まえ,N1+N2とN5の等層厚線を作成し,町田・新井(2003)の等層厚線と整合することを確認した。なお,参考として,N1+N2とN5の噴出量を須藤ほか(2007)の方法に基づき算定し,N1+N2は1.55km3,N5は1.46 km3の噴出量となる結果を得た.
火山ガラスの特徴等から推測される噴火様式は,次のように考えられる.N1およびN2の火山ガラスは,軽石タイプを主体(90~70%程度)とし,降下軽石からなる産状であることからプリニー式噴火が推測されるが,N2の降下火山灰層の噴火様式は現在検討中である.ただ,N2はN1よりバブルウォール型のガラスが多いことから,噴火条件の変化が示唆される.大規模な荷坂火砕流(5~10km3:土谷ほか,1997)およびそのco-ignimbrite ash (N4)の堆積後に噴出したN5は,火山ガラスの含有量が少なく,噴火様式の特定が困難であるものの,急冷破砕型の火山ガラスの割合がN1やN2よりも多いことから,マグマ水蒸気噴火であった可能性が示唆される.