14:30 〜 14:45
[SVC47-04] 桜島有村における相対重力連続観測:ダイク貫入イベント時の傾斜・重力変化
キーワード:相対重力、重力変化、傾斜変化、桜島火山、ダイク、マグマ
桜島火山では2015年8月15日に山頂直下を震源とする火山性地震が多発し、山体膨張を示す急激な地殻変動が観測された(気象庁, 2015)。また、測地学的な観測によると、この地殻変動は南北方向に走向を持つ矩形ダイクの開口によって説明できることが分かっている(国土地理院, 2015)。このような変動をもたらす要因には、地下深部から供給を受けた火山性流体の上昇が考えられる。しかしながら、地震観測や地殻変動観測では火山性流体の密度を特定できないので、ダイク中に満たされた物質の組成については十分理解されていない。
そこで本研究は、有村(昭和火口の南南東2.1 km)で観測された相対重力および傾斜の連続観測データを用い、2015年8月15日のダイク貫入イベント時における質量移動機構について議論する。本研究で使用するデータは、Scintrex CG-3M型相対重力計によって有村観測坑道局舎で観測された1分間隔の相対重力値および傾斜値(2成分)である。なお、生データには複数の擾乱が含まれていたが、適切な方法によって補正済みである(詳細は「重力・ジオイド」セッションにて講演予定)。
【傾斜変化】添付図上側の青線および緑線は、CG-3M重力計で観測された2015年8月15日の傾斜変化(それぞれN35E方向およびN55W方向)である。両者の値とも昼ごろに急激に上昇していることから、有村から見て北方向(すなわち火口方向)が隆起したことが分かる。これらの傾斜変化をexp(x) [x<0]および2 – exp(-x) [x>=0]の形状を持つ関数で回帰すると、傾斜変化の振幅は+36 micro-rad(N35E方向)および+42 micro-rad(N55W方向)、時定数は1.0 hour、傾斜変化速度が最大となる時刻は日本時間の11時30分であった。また、この傾斜変化のベクトル和は56 micro-radであり、有村観測坑道内の水管傾斜計で観測された傾斜変化(気象庁, 2015)の65 %に相当することが分かった。
【相対重力変化】添付図下側の赤線はCG-3M重力計で観測された2015年8月15日の相対重力変化である。活発な地震活動に伴って重力データが大きくばらつく時間帯があるものの、数日周期の器械ドリフトの中にステップ的な重力変化が確認できる。そこで、器械ドリフトを多項式で、およびステップ的な重力上昇を上述の指数関数で再現すると、重力上昇量はpeak-to-peakで+9 micro-Galと計算された。一方、同じく有村観測坑道局舎で観測された絶対重力変化は-5 micro-Galであり(大久保ほか, 2015)、本研究の結果とは符号も絶対振幅値も異なっている。この原因の1つとして考えられるのは、「本研究で得られた重力変化に、器械傾斜に伴う重力の見かけ変化が含まれている」という可能性である。そこで本研究では、今後CG-3M重力計の器械傾斜に伴う見かけ重力変化を定量的に調査し、ダイク貫入イベント時の重力変化量を再検討する。その上で、講演では相対重力と傾斜の時間変化から火山内部の質量移動プロセスを議論する予定である。
そこで本研究は、有村(昭和火口の南南東2.1 km)で観測された相対重力および傾斜の連続観測データを用い、2015年8月15日のダイク貫入イベント時における質量移動機構について議論する。本研究で使用するデータは、Scintrex CG-3M型相対重力計によって有村観測坑道局舎で観測された1分間隔の相対重力値および傾斜値(2成分)である。なお、生データには複数の擾乱が含まれていたが、適切な方法によって補正済みである(詳細は「重力・ジオイド」セッションにて講演予定)。
【傾斜変化】添付図上側の青線および緑線は、CG-3M重力計で観測された2015年8月15日の傾斜変化(それぞれN35E方向およびN55W方向)である。両者の値とも昼ごろに急激に上昇していることから、有村から見て北方向(すなわち火口方向)が隆起したことが分かる。これらの傾斜変化をexp(x) [x<0]および2 – exp(-x) [x>=0]の形状を持つ関数で回帰すると、傾斜変化の振幅は+36 micro-rad(N35E方向)および+42 micro-rad(N55W方向)、時定数は1.0 hour、傾斜変化速度が最大となる時刻は日本時間の11時30分であった。また、この傾斜変化のベクトル和は56 micro-radであり、有村観測坑道内の水管傾斜計で観測された傾斜変化(気象庁, 2015)の65 %に相当することが分かった。
【相対重力変化】添付図下側の赤線はCG-3M重力計で観測された2015年8月15日の相対重力変化である。活発な地震活動に伴って重力データが大きくばらつく時間帯があるものの、数日周期の器械ドリフトの中にステップ的な重力変化が確認できる。そこで、器械ドリフトを多項式で、およびステップ的な重力上昇を上述の指数関数で再現すると、重力上昇量はpeak-to-peakで+9 micro-Galと計算された。一方、同じく有村観測坑道局舎で観測された絶対重力変化は-5 micro-Galであり(大久保ほか, 2015)、本研究の結果とは符号も絶対振幅値も異なっている。この原因の1つとして考えられるのは、「本研究で得られた重力変化に、器械傾斜に伴う重力の見かけ変化が含まれている」という可能性である。そこで本研究では、今後CG-3M重力計の器械傾斜に伴う見かけ重力変化を定量的に調査し、ダイク貫入イベント時の重力変化量を再検討する。その上で、講演では相対重力と傾斜の時間変化から火山内部の質量移動プロセスを議論する予定である。