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[SVC47-06] 水準測量によって測定された桜島火山における2015年8月15日のダイク貫入に伴う地盤上下変動
キーワード:桜島火山、ダイク貫入、精密水準測量、地盤上下変動
2015年8月15日,桜島火山において火山性地震の群発活動を伴った急激な地盤変動イベントが発生した.気象庁は,同日噴火警戒レベルを3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げ,桜島内の一部の住民が避難を行った.我々は,このイベントに伴って生じた地盤上下変動を測定するため,翌日の8月16日から,これまで水準測量の繰返し観測を行ってきた路線において緊急の一等水準測量を実施した.本講演では,この測量の概要および結果について報告する.
水準測量を実施した路線は,海岸線に沿って桜島を一周する桜島一周道路路線,西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線,東部の黒神路線および桜島外の鹿児島湾西岸路線であり,総延長は約69 kmである.これらの路線を,2015年8月16日~9月24日の期間および12月18日において測量に当たった.桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線については,2014年11月の前回測量時に測量を行っているが,鹿児島湾西岸路線については2013年11月の測量から約1年9カ月ぶり,黒神路線については2009年11月の測量から約6年ぶりの実施であった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.実際の測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線,黒神路線,鹿児島湾西岸路線においてそれぞれ±0.33,±0.27,±0.17,±0.30,±0.24 mm/km,水準環閉塞誤差は桜島一周道路路線およびハルタ山登山路線において時計回りにそれぞれ1.1 mm(許容誤差12.1 mm),-2.3 mm(許容誤差7.6 mm)であり高精度の一等水準測量であった.
桜島内の路線について,桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,2014年11月に行われた測量結果(山本・他,2015)と比較することで,2014年11月から2015年8月・9月の期間における地盤上下変動量を計算した.また,鹿児島湾西岸路線については,その南端にある水準点BM.2469を不動点(基準)とし,2013年11月に行われた測量結果(山本・他,2014)と比較することで,2013年11月から2015年8月の期間における地盤上下変動量を計算した.
桜島内の路線における水準測量結果から,桜島北部付近,ハルタ山登山路線および北岳路線の水準点において,顕著な地盤隆起(最大で15.8 mm)が生じていることが確認された.また,桜島南部の有村付近および東部の黒神付近においても,それぞれ最大で16.8 mm,7.7 mmの顕著な地盤の隆起が確認された.8月15日の急激な地盤変動については,干渉SARやGNSS,傾斜計・伸縮計の観測データを用いた圧力源のモデル解析により,昭和火口の直下にダイクが貫入したことが推定されている(国土地理院,2015;堀田・他,2016).水準測量によって測定された有村付近や黒神付近の地盤隆起は,これらのダイク貫入モデルから期待される地盤上下変動と調和的である.一方で,桜島北部付近や北岳路線の地盤隆起については,このダイク貫入モデルによって変動量を十分に説明することはできない.鹿児島湾西岸路線における水準測量結果においても,姶良カルデラ中央部に近い水準点BM.2474に向かった地盤隆起が観測されており,桜島北部あるいは姶良カルデラ中央部の地下に増圧源の存在が示唆される.この増圧源による変動については,傾斜計・伸縮計の観測データ(堀田・他,2016)を参考にすると8月15日のイベント時のものではないと考えられる.講演では,これらの圧力源解析の結果についても報告する.
水準測量を実施した路線は,海岸線に沿って桜島を一周する桜島一周道路路線,西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線,東部の黒神路線および桜島外の鹿児島湾西岸路線であり,総延長は約69 kmである.これらの路線を,2015年8月16日~9月24日の期間および12月18日において測量に当たった.桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線については,2014年11月の前回測量時に測量を行っているが,鹿児島湾西岸路線については2013年11月の測量から約1年9カ月ぶり,黒神路線については2009年11月の測量から約6年ぶりの実施であった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.実際の測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が桜島一周道路路線,ハルタ山登山路線,北岳路線,黒神路線,鹿児島湾西岸路線においてそれぞれ±0.33,±0.27,±0.17,±0.30,±0.24 mm/km,水準環閉塞誤差は桜島一周道路路線およびハルタ山登山路線において時計回りにそれぞれ1.1 mm(許容誤差12.1 mm),-2.3 mm(許容誤差7.6 mm)であり高精度の一等水準測量であった.
桜島内の路線について,桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,2014年11月に行われた測量結果(山本・他,2015)と比較することで,2014年11月から2015年8月・9月の期間における地盤上下変動量を計算した.また,鹿児島湾西岸路線については,その南端にある水準点BM.2469を不動点(基準)とし,2013年11月に行われた測量結果(山本・他,2014)と比較することで,2013年11月から2015年8月の期間における地盤上下変動量を計算した.
桜島内の路線における水準測量結果から,桜島北部付近,ハルタ山登山路線および北岳路線の水準点において,顕著な地盤隆起(最大で15.8 mm)が生じていることが確認された.また,桜島南部の有村付近および東部の黒神付近においても,それぞれ最大で16.8 mm,7.7 mmの顕著な地盤の隆起が確認された.8月15日の急激な地盤変動については,干渉SARやGNSS,傾斜計・伸縮計の観測データを用いた圧力源のモデル解析により,昭和火口の直下にダイクが貫入したことが推定されている(国土地理院,2015;堀田・他,2016).水準測量によって測定された有村付近や黒神付近の地盤隆起は,これらのダイク貫入モデルから期待される地盤上下変動と調和的である.一方で,桜島北部付近や北岳路線の地盤隆起については,このダイク貫入モデルによって変動量を十分に説明することはできない.鹿児島湾西岸路線における水準測量結果においても,姶良カルデラ中央部に近い水準点BM.2474に向かった地盤隆起が観測されており,桜島北部あるいは姶良カルデラ中央部の地下に増圧源の存在が示唆される.この増圧源による変動については,傾斜計・伸縮計の観測データ(堀田・他,2016)を参考にすると8月15日のイベント時のものではないと考えられる.講演では,これらの圧力源解析の結果についても報告する.