16:30 〜 16:45
[SVC47-11] 桜島火山の火山ガス組成
キーワード:火山ガス、火山噴煙、桜島
桜島では活発な噴煙活動と小規模なブルカノ式噴火が最近数十年にわたり続いている。大量な火山ガスの起源や放出機構、ブルカノ式噴火の発生機構を明らかにするためには、火山ガスの量および組成の把握が必要である。特に、ブルカノ式噴火は火道浅部での噴火直前のガスの蓄積が原因であるというモデルが考えられており、火山ガスデータはその検証や定量的な評価に必要である。紫外遠隔測定によりSO2放出率の変化はある程度把握されているが、山頂への接近が困難である桜島では火山ガス組成のデータは、火山灰の水溶性成分の分析やFT-IR等による断片的なものに限られていた。我々は、噴煙の測定により火山ガス組成を推定するMulti-GASとアルカリフィルター法を桜島の噴煙測定に適用し火山ガス組成の推定を実施してきた。本講演では今までに得られた、桜島の火山ガスの組成の特徴の把握とその時間変化を報告する。
桜島では人間が山頂域に接近することは困難であるため、火山噴煙観測の実現のために1)有人セスナ、2)無人ヘリコプター、3)山麓での火山ガス検知起動型の自動観測、を実施してきた。Multi-GAS観測は大気と混合後の火山ガス成分を測定するため、大気組成の変動により測定精度が影響する。特に大気中に高濃度存在する成分(H2O, CO2, H2等)の火山ガス起源の濃度変化を定量するためには高濃度の火山噴煙を測定することが望ましいが、得られる最大火山ガス濃度は測定時の条件(距離、風向風速、火山活動)により異なり、それに応じて定量可能な成分や精度は異なる。セスナ観測と無人ヘリ観測は上空での観測であり、連続観測は山麓に流下してきた噴煙を測定しているが、手法による結果の差は特に見いだされていない。
2012年測定開始後、2015年前半までは桜島のSO2放出率は1000t/日以上の高い状態が継続し、昭和火口での爆発も頻発していたが、2015年夏以降はSO2放出率は100t/日程度に低下し、爆発の頻度も極端に低下した。SO2放出率が高かった時期の火山ガス組成の平均値は、CO2/SO2=0.5、 H2O/SO2=110、SO2/H2S=8、H2/SO2=0.15、SO2/Cl=10と推定された。この組成は日本の高温火山ガス組成として平均的な組成に近いが、H2O/SO2がやや高い(浅間、三宅島、阿蘇では40前後)。ただしH2Oは大気中濃度変動が大きいため測定火山ガス濃度が低い桜島での推定値の誤差が大きいことが、差異の原因である可能性もある。CO2/SO2比は0.5-1.4の幅を持ち比較的一定ではあるが、最大測定SO2濃度が高い観測では系統的に低いCO2/SO2比が得られている。同様の傾向は浅間山でも観測されており、観測対象である主火口起源の火山ガスとそれ以外のCO2に富むガス(浅間山の場合は低温噴気)の混合が原因と解釈されている。桜島の場合は低温噴気の分布が顕著ではなく、この傾向の原因が不明である。SO2/Cl比は5-20の間で変動しているが、この変動幅は森(2014)により報告されている2009-2013年にFT-IRで測定された昭和火口噴煙のSO2/HCl比=6-10と整合的である。SO2/H2S比は概ね10前後であるが、400と非常に大きな比が2014年12月と2015年1月に得られている。いずれの場合もH2/SO2比が通常の0.15前後に対して0.03前後と低い値が得られている。
2015年後半以降の低放出率の時期には、SO2/H2S=0.6-2.5、CO2/SO2=20-150と、高放出率時期とは大きく異なる組成が推定されている。しかし、この時期の測定では最大測定SO2濃度が0.1-0.5ppmと低いため、特にCO2/SO2比の推定誤差が大きく、また他の組成は推定不可能であった。CO2/SO2=150の観測時に採取された噴煙試料の同位体分析に基づき、この大きな比をもたらしたCO2の炭素のd13Cは-25‰と推定されており、通常の火山ガスの同位体組成とは一致しないため、火山ガス以外の起源であると推定された。SO2/H2S比は明らかに低いが、その原因としては、1)地下水との反応によるSO2の除去、2)出口温度低下による化学平衡の移行、3)脱ガス圧力増加による化学平衡の移行、などが一般的には考えられる。しかし、桜島の状況を考慮した場合には3)以外は考えにくい。SO2/H2S比は脱ガス圧力に反比例するため、脱ガス圧力が10倍に増加することにより、高放出率時期のSO2/H2S=10から、低放出率時期の1への低下は説明可能である。
桜島では人間が山頂域に接近することは困難であるため、火山噴煙観測の実現のために1)有人セスナ、2)無人ヘリコプター、3)山麓での火山ガス検知起動型の自動観測、を実施してきた。Multi-GAS観測は大気と混合後の火山ガス成分を測定するため、大気組成の変動により測定精度が影響する。特に大気中に高濃度存在する成分(H2O, CO2, H2等)の火山ガス起源の濃度変化を定量するためには高濃度の火山噴煙を測定することが望ましいが、得られる最大火山ガス濃度は測定時の条件(距離、風向風速、火山活動)により異なり、それに応じて定量可能な成分や精度は異なる。セスナ観測と無人ヘリ観測は上空での観測であり、連続観測は山麓に流下してきた噴煙を測定しているが、手法による結果の差は特に見いだされていない。
2012年測定開始後、2015年前半までは桜島のSO2放出率は1000t/日以上の高い状態が継続し、昭和火口での爆発も頻発していたが、2015年夏以降はSO2放出率は100t/日程度に低下し、爆発の頻度も極端に低下した。SO2放出率が高かった時期の火山ガス組成の平均値は、CO2/SO2=0.5、 H2O/SO2=110、SO2/H2S=8、H2/SO2=0.15、SO2/Cl=10と推定された。この組成は日本の高温火山ガス組成として平均的な組成に近いが、H2O/SO2がやや高い(浅間、三宅島、阿蘇では40前後)。ただしH2Oは大気中濃度変動が大きいため測定火山ガス濃度が低い桜島での推定値の誤差が大きいことが、差異の原因である可能性もある。CO2/SO2比は0.5-1.4の幅を持ち比較的一定ではあるが、最大測定SO2濃度が高い観測では系統的に低いCO2/SO2比が得られている。同様の傾向は浅間山でも観測されており、観測対象である主火口起源の火山ガスとそれ以外のCO2に富むガス(浅間山の場合は低温噴気)の混合が原因と解釈されている。桜島の場合は低温噴気の分布が顕著ではなく、この傾向の原因が不明である。SO2/Cl比は5-20の間で変動しているが、この変動幅は森(2014)により報告されている2009-2013年にFT-IRで測定された昭和火口噴煙のSO2/HCl比=6-10と整合的である。SO2/H2S比は概ね10前後であるが、400と非常に大きな比が2014年12月と2015年1月に得られている。いずれの場合もH2/SO2比が通常の0.15前後に対して0.03前後と低い値が得られている。
2015年後半以降の低放出率の時期には、SO2/H2S=0.6-2.5、CO2/SO2=20-150と、高放出率時期とは大きく異なる組成が推定されている。しかし、この時期の測定では最大測定SO2濃度が0.1-0.5ppmと低いため、特にCO2/SO2比の推定誤差が大きく、また他の組成は推定不可能であった。CO2/SO2=150の観測時に採取された噴煙試料の同位体分析に基づき、この大きな比をもたらしたCO2の炭素のd13Cは-25‰と推定されており、通常の火山ガスの同位体組成とは一致しないため、火山ガス以外の起源であると推定された。SO2/H2S比は明らかに低いが、その原因としては、1)地下水との反応によるSO2の除去、2)出口温度低下による化学平衡の移行、3)脱ガス圧力増加による化学平衡の移行、などが一般的には考えられる。しかし、桜島の状況を考慮した場合には3)以外は考えにくい。SO2/H2S比は脱ガス圧力に反比例するため、脱ガス圧力が10倍に増加することにより、高放出率時期のSO2/H2S=10から、低放出率時期の1への低下は説明可能である。