日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 活動的火山

2016年5月25日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホールB (2F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)、座長:山本 希(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、木下 佐和子(東京大学地震研究所)

11:30 〜 11:45

[SVC47-22] レシーバ関数のインバージョン解析による富士山下のS波低速度領域の推定

*木下 佐和子1西田 究1五十嵐 俊博1青木 陽介1武尾 実1上田 英樹2 (1.東京大学地震研究所、2.防災科学技術研究所)

キーワード:富士山、レシーバ関数解析、伊豆ボニンマリアナ島弧

富士山は日本の代表的な活火山であり、マグマの噴出量が高いことと、玄武岩質のマグマを噴出する、という2つの特徴を持っている。富士山がこのような性質を持つ理由のひとつとして、富士山は太平洋プレートの沈み込みによってできた伊豆ボニンマリアナ島弧(IBM)が衝突して沈み込む、非常に複雑な場所にあるため、マグマ供給系が通常の島弧火山とは異なる、ということが考えられている。先行研究では、富士山直下20km以深の詳細な地震波構造は求められておらず、本研究では、富士山周辺のIBM構造と富士山下にある低速度領域の分布を求めるために、レシーバ関数解析を実施した。
レシーバ関数のラディアル成分の振幅を、富士山を通る断面に投影すると、富士山下約40-60kmの深さに南北に沈み込む強い正の速度境界面があり、富士山直下でその境界面は不連続になっていることがわかった。また、富士山下で低周波地震が発生する領域の下、およそ25kmの深さに顕著な正の速度境界面があることがわかった。富士山周辺では、表層に地震波速度が遅い火山噴出物が堆積しており、さらに深さ20km付近には顕著な地震波速度低速度領域があると考えられるため、レシーバ関数の振幅断面からのみ、速度構造を議論することは難しい。そこで、インバージョン解析によって、地下のS波速度の絶対値を求めた。レシーバ関数の振幅は地下の速度コントラストに依存するため、先行研究による表面波分散曲線を一緒にインバージョンすることで、解を安定させた。インバージョンの結果、以下に挙げる3つの結果が得られた。1) 先行研究による沈み込む前のIBM島弧の速度構造と比較すると、伊豆半島では、IBM弧の地殻の厚さは約40kmの厚さまで成長している。2) 通常の海洋プレートが沈み込む場所では、先行研究のトモグラフィの結果と整合的な場所にS波低速度領域があり、これは沈み込む海洋性地殻を表している。3) 富士山の下には横方向に約40km、深さ方向に約20kmの大きさのS波低速度領域が存在する。
本研究の結果より、富士山のマグマ噴出率が高いのは、地下のマグマ溜まりが大きいからであり、また、富士山のマグマが玄武岩質なのは、マグマ溜まりの場所が深いからである、と解釈することができる。