14:15 〜 14:30
[SVC47-33] レーダーエコー頂高度からの噴出物総量の推定
キーワード:噴出物総量、気象レーダー、エコー頂高度、噴煙高度、噴出物量推定、火山灰雲
火山灰などの火山噴出物総量を噴火発生後,速やかに把握することは火山災害の軽減にとって極めて重要な事項であり,火山噴出物の総重量は量的降灰予測の初期値として最も重要なパラメータの一つである.
噴出率(質量放出率,体積噴出率あるいは放熱率)と噴煙の高さ H との関係は,理論的な研究や,噴火事例を取りまとめて求めた経験式が種々提案されている.例えば,Morton et al. (1956) は放熱率が H の4乗に比例する式を,Settle (1978) は H が質量噴出率の0.22乗に比例する式を,Sparks et al. (1997) は H が体積噴出率の0.259乗に比例する式を,Mastin et al. (2009) は0.241乗に比例する式を提案しており,気象庁の降灰予報では,質量放出率が H の4乗に比例する式を用い,時刻 t~t+T における火山噴出物質量 M(t) を H と噴火の継続時間 T から M(t)∝H4T で与えている(新堀,2008).気象レーダーを使用して火山噴出物総量を求めようとする場合,このような関係式を用いて,エコー頂高度の時間変化から推定する方法,あるいは,真木・他(2015)のようにレーダーエコー強度の積算値から降灰量を推定する方式が考えられる.また,佐藤・他(2015a)は桜島においてXバンドMPレーダーと二次元ビデオディスドロメータ等による観測を行い,火山灰と降水を識別し,降灰量推定を行うことを計画している.
霧島山新燃岳2011年噴火の際には,気象庁のレーダー観測網によって噴煙のエコー頂高度の詳細な時系列データが取得され(新堀・福井,2012),この値を用いることで降灰予測を大幅に改善することができた(新堀・他,2014).また,Kozono et al. (2014)は傾斜観測データから推定したマグマ供給率とこの高度が良い相関にあることを示した.これらのことから,レーダーエコー頂高度の時系列データが噴煙の高さの時間変化を良く表していると考えられている.しかし,御嶽山2014年噴火の際に気象庁レーダー観測網で観測されたエコー頂高度には過大な値が含まれていたことも分かっている(佐藤・他,編集中).
気象レーダーで観測される噴煙の高さの時間変化を利用して噴出物総量を推定する場合,噴煙の高さと噴出率との関係式の問題以外にも,噴煙エコーが真に噴煙を捉えたものであり,エコー頂高度を噴煙の高さと見なして良いかどうか,佐藤・他(2015b)で指摘しているエコー頂高度推定における各種誤差要因,レーダー走査パターンに起因する問題を含めた噴火継続時間推定における誤差もしくは不確定性などが問題となる.特に,噴出率は噴煙の高さの概ね4乗に比例するため,噴煙高度推定誤差は噴出物総量推定における大きな誤差要因となる.
本講演では,気象庁レーダー網で噴火噴煙が検知された事例についてエコー頂高度の時間推移から噴出物量を推定し,この量と現地調査によって求められている噴出物量との関係,およびレーダーデータによる噴出物総量推定における誤差について議論する.
参考文献
Kozono, T. et al. (2014) EPS, 66:139, doi:10.1186/s40623-014-0139-1.
Mastin, L. G. et al. (2009) JVGR, 186, 10-21, doi:10.1016/j.jvolgeores.2009.01.008.
Morton, B. R. et al. (1956) Proceedings of the Royal Society of London, Series A, 234, 1–23, doi:
10.1098/rspa.1956.0011.
佐藤英一・他 (2015a) 日本気象学会2015年度春季大会講演予稿集, 296,
佐藤英一・他 (2015b) 日本火山学会予稿集, 174.
佐藤英一・他 (編集中) 気象庁技術報告第135号(平成26年(2014年)御嶽山噴火調査報告)
真木雅之・他 (2015) 京大防災研年報, 58B, 76-85.
Settle, M. (1978) JVGR, 3, 309–324.
Sparks, R. S. J. et al. (1997) Volcanic Plumes. John Wiley & Sons, 574 pp.
新堀敏基 (2008) 数値予報課報告・別冊,54, 気象庁予報部, 234-240.
新堀敏基・福井敬一 (2012) 火山噴火予知連絡会会報, 108, 189-196.
新堀敏基・他 (2014) 気象研究所研究報告,65,75-107,doi:10.2467/mripapers.65.75.
噴出率(質量放出率,体積噴出率あるいは放熱率)と噴煙の高さ H との関係は,理論的な研究や,噴火事例を取りまとめて求めた経験式が種々提案されている.例えば,Morton et al. (1956) は放熱率が H の4乗に比例する式を,Settle (1978) は H が質量噴出率の0.22乗に比例する式を,Sparks et al. (1997) は H が体積噴出率の0.259乗に比例する式を,Mastin et al. (2009) は0.241乗に比例する式を提案しており,気象庁の降灰予報では,質量放出率が H の4乗に比例する式を用い,時刻 t~t+T における火山噴出物質量 M(t) を H と噴火の継続時間 T から M(t)∝H4T で与えている(新堀,2008).気象レーダーを使用して火山噴出物総量を求めようとする場合,このような関係式を用いて,エコー頂高度の時間変化から推定する方法,あるいは,真木・他(2015)のようにレーダーエコー強度の積算値から降灰量を推定する方式が考えられる.また,佐藤・他(2015a)は桜島においてXバンドMPレーダーと二次元ビデオディスドロメータ等による観測を行い,火山灰と降水を識別し,降灰量推定を行うことを計画している.
霧島山新燃岳2011年噴火の際には,気象庁のレーダー観測網によって噴煙のエコー頂高度の詳細な時系列データが取得され(新堀・福井,2012),この値を用いることで降灰予測を大幅に改善することができた(新堀・他,2014).また,Kozono et al. (2014)は傾斜観測データから推定したマグマ供給率とこの高度が良い相関にあることを示した.これらのことから,レーダーエコー頂高度の時系列データが噴煙の高さの時間変化を良く表していると考えられている.しかし,御嶽山2014年噴火の際に気象庁レーダー観測網で観測されたエコー頂高度には過大な値が含まれていたことも分かっている(佐藤・他,編集中).
気象レーダーで観測される噴煙の高さの時間変化を利用して噴出物総量を推定する場合,噴煙の高さと噴出率との関係式の問題以外にも,噴煙エコーが真に噴煙を捉えたものであり,エコー頂高度を噴煙の高さと見なして良いかどうか,佐藤・他(2015b)で指摘しているエコー頂高度推定における各種誤差要因,レーダー走査パターンに起因する問題を含めた噴火継続時間推定における誤差もしくは不確定性などが問題となる.特に,噴出率は噴煙の高さの概ね4乗に比例するため,噴煙高度推定誤差は噴出物総量推定における大きな誤差要因となる.
本講演では,気象庁レーダー網で噴火噴煙が検知された事例についてエコー頂高度の時間推移から噴出物量を推定し,この量と現地調査によって求められている噴出物量との関係,およびレーダーデータによる噴出物総量推定における誤差について議論する.
参考文献
Kozono, T. et al. (2014) EPS, 66:139, doi:10.1186/s40623-014-0139-1.
Mastin, L. G. et al. (2009) JVGR, 186, 10-21, doi:10.1016/j.jvolgeores.2009.01.008.
Morton, B. R. et al. (1956) Proceedings of the Royal Society of London, Series A, 234, 1–23, doi:
10.1098/rspa.1956.0011.
佐藤英一・他 (2015a) 日本気象学会2015年度春季大会講演予稿集, 296,
佐藤英一・他 (2015b) 日本火山学会予稿集, 174.
佐藤英一・他 (編集中) 気象庁技術報告第135号(平成26年(2014年)御嶽山噴火調査報告)
真木雅之・他 (2015) 京大防災研年報, 58B, 76-85.
Settle, M. (1978) JVGR, 3, 309–324.
Sparks, R. S. J. et al. (1997) Volcanic Plumes. John Wiley & Sons, 574 pp.
新堀敏基 (2008) 数値予報課報告・別冊,54, 気象庁予報部, 234-240.
新堀敏基・福井敬一 (2012) 火山噴火予知連絡会会報, 108, 189-196.
新堀敏基・他 (2014) 気象研究所研究報告,65,75-107,doi:10.2467/mripapers.65.75.