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[SVC47-P03] 熱赤外カメラ搭載ドローンを用いた熱活動観測の適用性調査-秋田県澄川温泉跡地を対象とした温度分布・解析の事例-
キーワード:熱赤外カメラ搭載ドローン、熱活動モニタリング、高分解能温度分布図、澄川温泉
1.背景・目的
火山活動の状態把握には,地震,地殻変動,熱・噴気等が観測項目として挙げられる。これらの発生状況等を平常時から蓄積しておくことは,将来の活動活発に向けた変化の検出に寄与するとともに,その評価に多くの情報を与える。特に,熱活動に関しては,火山下でのマグマの上昇・移動,熱水系の変化に対して,地表での高温異常,放熱量等の変化として直接現れること,また他の観測項目に比べて比較的低コストで観測が容易であることから,継続的なモニタリングの対象として有効である。
従来,熱活動の観測手法として,衛星センサー,航空機・ヘリコプターからの熱赤外カメラによる遠望観測のほか,火口・地熱地帯に立ち入っての近接観測や噴気孔等の直接測定が用いられてきた。ただし,観測対象地域の状態によっては観測ができなかったり,熱活動の規模・拡がりが小さい時には熱異常を検出できないといった,適切なデータ取得のための観測条件を得ることは難しい。この点,ドローンによる観測は,熱活動の状態に応じて,飛行高度等の観測条件を調整することが可能であり,高い空間解像度のデータが得ることができる。
本研究では,1997年に小規模な水蒸気爆発が発生し,現在も噴気活動が認められる澄川温泉跡地における観測事例を紹介する。そして,取得した温度データをもとに温度分布図の作成,温度解析等を行い,熱活動の観測手法としての適用性について検討する。
2.現地観測・データ処理
(1) 現地観測
現地観測は平成27年10月18日午後に実施した。
使用機材として,DJI 社製ドローンS1000+オクトコプター,これに可視カメラ(Panasonic社製GH4)及び熱赤外カメラ(OPTRIS社製 PI640)等を搭載した。
現地観測は,火口と思われる凹地を含んだ噴気が多く認められる範囲(約160m×約210m)を対象とし,飛行高度は5cm程度の高温異常を検出することを目安に,熱赤外カメラの解像度を考慮した地上高16mとした。また,ドローンの操縦は目視手動により行い,観測対象上空を中心に複数回の飛行・計測を繰り返し,合計約40分の可視動画及び熱赤外動画を撮影した。
(2) 取得データの処理・温度分布図の作成
取得した動画から抽出した可視画像1157ファイル,熱赤外画像361ファイルを対象に, Agisoft社製 PhotoScan Professional Edition (Ver.1.2.0)を用いてオルソ処理した全体画像を作成した。この際,熱赤外画像については,オルソ処理用に温度分解能を保持した画像ファイルを作成しオルソ処理を行った。そして,全体画像から計測温度を逆算し,温度分布図用にカラー設定を行った。最後に,数値地図等を参照しながら,可視及び熱赤外による全体画像の位置調整を行った。
3.熱活動の状態
(1) 温度分布
地表状態・噴気の状況と温度分布図より,観測範囲では火口内の4ヶ所で強い噴気が認められ,高温異常点 (最高約120℃)の分布と一致する。しかし,顕著な噴気が認められない場所にも高温異常点が多数認められ,全体として,火口付近を含む北東-南西方向に連なる高温領域(約30℃以上)を3条形成している。
(2) 温度解析
熱赤外カメラで得られた温度データの評価には,大気中のエアロゾルの影響のほか,日射による地表面温度の上昇に留意する必要がある。しかし,今回の観測は,対地高度が低く,また取得した温度データには日向部と日陰部で温度頻度分布に顕著な差異が認められないことから,これらによる影響は小さいものと判断した。道路等の人工物を除いた観測範囲における最高温度は約121℃,最低温度は約6℃,平均温度は23℃であった。
観測範囲内の温度頻度分布に着目すると,約17℃をピークとする温度群(5℃~28℃)と28℃以上の温度群で構成される。仮に,28℃以上を熱活動の影響を受けた領域と仮定した場合,その領域は観測領域全体の約22%(約5000m2)の面積を有する。また,寺田(2012)等に基づき,熱活動の影響を受けていない領域との温度差と面積との関係から放熱量を求めた結果,約2.7MWの放熱量が想定された。
4.適用性
今回の観測では,数100m範囲での高い空間解像度の温度分布図を得ることができた。また,可視画像との比較により,噴気活動等の地表現象と熱活動と関連性検討に係る情報が得られた。このことから,熱赤外カメラ搭載ドローンを用いた観測は,従来の熱活動の観測手法を補完する,特に,小規模な噴気地帯の状態把握に有効な手法であることを確認した。また,適切に繰返し観測を行うことで,モニタリング手法としての発展性も期待できる。
火山活動の状態把握には,地震,地殻変動,熱・噴気等が観測項目として挙げられる。これらの発生状況等を平常時から蓄積しておくことは,将来の活動活発に向けた変化の検出に寄与するとともに,その評価に多くの情報を与える。特に,熱活動に関しては,火山下でのマグマの上昇・移動,熱水系の変化に対して,地表での高温異常,放熱量等の変化として直接現れること,また他の観測項目に比べて比較的低コストで観測が容易であることから,継続的なモニタリングの対象として有効である。
従来,熱活動の観測手法として,衛星センサー,航空機・ヘリコプターからの熱赤外カメラによる遠望観測のほか,火口・地熱地帯に立ち入っての近接観測や噴気孔等の直接測定が用いられてきた。ただし,観測対象地域の状態によっては観測ができなかったり,熱活動の規模・拡がりが小さい時には熱異常を検出できないといった,適切なデータ取得のための観測条件を得ることは難しい。この点,ドローンによる観測は,熱活動の状態に応じて,飛行高度等の観測条件を調整することが可能であり,高い空間解像度のデータが得ることができる。
本研究では,1997年に小規模な水蒸気爆発が発生し,現在も噴気活動が認められる澄川温泉跡地における観測事例を紹介する。そして,取得した温度データをもとに温度分布図の作成,温度解析等を行い,熱活動の観測手法としての適用性について検討する。
2.現地観測・データ処理
(1) 現地観測
現地観測は平成27年10月18日午後に実施した。
使用機材として,DJI 社製ドローンS1000+オクトコプター,これに可視カメラ(Panasonic社製GH4)及び熱赤外カメラ(OPTRIS社製 PI640)等を搭載した。
現地観測は,火口と思われる凹地を含んだ噴気が多く認められる範囲(約160m×約210m)を対象とし,飛行高度は5cm程度の高温異常を検出することを目安に,熱赤外カメラの解像度を考慮した地上高16mとした。また,ドローンの操縦は目視手動により行い,観測対象上空を中心に複数回の飛行・計測を繰り返し,合計約40分の可視動画及び熱赤外動画を撮影した。
(2) 取得データの処理・温度分布図の作成
取得した動画から抽出した可視画像1157ファイル,熱赤外画像361ファイルを対象に, Agisoft社製 PhotoScan Professional Edition (Ver.1.2.0)を用いてオルソ処理した全体画像を作成した。この際,熱赤外画像については,オルソ処理用に温度分解能を保持した画像ファイルを作成しオルソ処理を行った。そして,全体画像から計測温度を逆算し,温度分布図用にカラー設定を行った。最後に,数値地図等を参照しながら,可視及び熱赤外による全体画像の位置調整を行った。
3.熱活動の状態
(1) 温度分布
地表状態・噴気の状況と温度分布図より,観測範囲では火口内の4ヶ所で強い噴気が認められ,高温異常点 (最高約120℃)の分布と一致する。しかし,顕著な噴気が認められない場所にも高温異常点が多数認められ,全体として,火口付近を含む北東-南西方向に連なる高温領域(約30℃以上)を3条形成している。
(2) 温度解析
熱赤外カメラで得られた温度データの評価には,大気中のエアロゾルの影響のほか,日射による地表面温度の上昇に留意する必要がある。しかし,今回の観測は,対地高度が低く,また取得した温度データには日向部と日陰部で温度頻度分布に顕著な差異が認められないことから,これらによる影響は小さいものと判断した。道路等の人工物を除いた観測範囲における最高温度は約121℃,最低温度は約6℃,平均温度は23℃であった。
観測範囲内の温度頻度分布に着目すると,約17℃をピークとする温度群(5℃~28℃)と28℃以上の温度群で構成される。仮に,28℃以上を熱活動の影響を受けた領域と仮定した場合,その領域は観測領域全体の約22%(約5000m2)の面積を有する。また,寺田(2012)等に基づき,熱活動の影響を受けていない領域との温度差と面積との関係から放熱量を求めた結果,約2.7MWの放熱量が想定された。
4.適用性
今回の観測では,数100m範囲での高い空間解像度の温度分布図を得ることができた。また,可視画像との比較により,噴気活動等の地表現象と熱活動と関連性検討に係る情報が得られた。このことから,熱赤外カメラ搭載ドローンを用いた観測は,従来の熱活動の観測手法を補完する,特に,小規模な噴気地帯の状態把握に有効な手法であることを確認した。また,適切に繰返し観測を行うことで,モニタリング手法としての発展性も期待できる。