17:15 〜 18:30
[SVC47-P16] 箱根山大涌谷周辺で観測された火山活動に伴う全磁力変化
キーワード:箱根、地磁気変化、火山活動
2015年の箱根山の火山活動では、山体の膨張を示すGNSS基線の伸びが3月下旬から始まり、4月下旬からは有感を含む多数の地震が発生するとともに大涌谷の噴気活動が活発化した。衛星SARの干渉解析によって、5月から6月にかけて大涌谷の一部が局所的に隆起したことが明らかになり、6月30日には大涌谷の隆起が観測された場所の近傍でごく小規模な噴火が発生し、火口群を形成するに至った。その後、7月以降は、GNSS基線長の伸びが停止し、発生する火山性地震も減少するなど火山活動が低下する傾向がみられた。
大涌谷で想定されるような水蒸気噴火では、熱水活動の活発化により、噴火に伴って地下の比較的浅い場所で熱消磁が引き起こされ地表の地磁気が変化することがしばしばある。近年水蒸気噴火が発生している草津白根山や雌阿寒岳においては、全磁力変化が火山活動を評価する材料のひとつとなっている。大涌谷においても全磁力観測は火山活動をモニターする有力な手法と考えられることから、我々は2015年5月から11月にかけて大涌谷周辺における地磁気繰り返し観測を行った。
観測では、大涌谷周辺に全磁力観測点を3点を設けた。これらの観測点でオーバーハウザー磁力計を用いた全磁力測定を全点で並行して1日程度実施し、それを1ヶ月程度の間隔で繰り返した。観測された全磁力のデータは、大涌谷の北約4kmに設置した基準観測点のデータを用いて地磁気日変化などを補正した。また、早朝から深夜にかけては、周辺の直流電車の漏洩電流に起因するとみられる磁気ノイズが大きかったため、電車の運行が休止してノイズレベルが低下する02時から04時までの時間帯の全磁力平均値を、火山活動に関連した変化を調べるために用いた。
繰り返し観測の結果には、噴火後の7月から9月にかけて、大涌谷の北側に位置する観測点で1nT程度の全磁力の減少がみられた。大涌谷南側の観測点については、あまり明瞭ではないが、全磁力がわずかに増加していた可能性がある。このような分布の全磁力の変化は、大涌谷の地下で岩石の磁化の獲得(帯磁)が起こった場合に期待される。帯磁は高温の岩石が冷却する際に生じることから、大涌谷では7月から9月にかけて地下の温度低下が進行したことが示唆される。6月末の噴火によって火口が形成されたことにより、地下の冷却が効率的に行われるようになったのかもしれない。噴火前に局所的な隆起が見られた地域の地下が噴火後に温度低下したと仮定すると、その深さが地表から500mであった場合、帯磁の磁気モーメントは2-3×106Am2であったと推定される。
大涌谷で想定されるような水蒸気噴火では、熱水活動の活発化により、噴火に伴って地下の比較的浅い場所で熱消磁が引き起こされ地表の地磁気が変化することがしばしばある。近年水蒸気噴火が発生している草津白根山や雌阿寒岳においては、全磁力変化が火山活動を評価する材料のひとつとなっている。大涌谷においても全磁力観測は火山活動をモニターする有力な手法と考えられることから、我々は2015年5月から11月にかけて大涌谷周辺における地磁気繰り返し観測を行った。
観測では、大涌谷周辺に全磁力観測点を3点を設けた。これらの観測点でオーバーハウザー磁力計を用いた全磁力測定を全点で並行して1日程度実施し、それを1ヶ月程度の間隔で繰り返した。観測された全磁力のデータは、大涌谷の北約4kmに設置した基準観測点のデータを用いて地磁気日変化などを補正した。また、早朝から深夜にかけては、周辺の直流電車の漏洩電流に起因するとみられる磁気ノイズが大きかったため、電車の運行が休止してノイズレベルが低下する02時から04時までの時間帯の全磁力平均値を、火山活動に関連した変化を調べるために用いた。
繰り返し観測の結果には、噴火後の7月から9月にかけて、大涌谷の北側に位置する観測点で1nT程度の全磁力の減少がみられた。大涌谷南側の観測点については、あまり明瞭ではないが、全磁力がわずかに増加していた可能性がある。このような分布の全磁力の変化は、大涌谷の地下で岩石の磁化の獲得(帯磁)が起こった場合に期待される。帯磁は高温の岩石が冷却する際に生じることから、大涌谷では7月から9月にかけて地下の温度低下が進行したことが示唆される。6月末の噴火によって火口が形成されたことにより、地下の冷却が効率的に行われるようになったのかもしれない。噴火前に局所的な隆起が見られた地域の地下が噴火後に温度低下したと仮定すると、その深さが地表から500mであった場合、帯磁の磁気モーメントは2-3×106Am2であったと推定される。