日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 活動的火山

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)

17:15 〜 18:30

[SVC47-P18] カメルーンニオス湖の水質

*谷口 無我1Mimba Mumbfu1網代 卓也1大場 武1Tanyileke Gregory2Hell Joseph2 (1.東海大学理学部化学科、2.カメルーン国立地質調査所)

キーワード:カメルーン、ニオス、火口湖、湖水爆発、水質

1986年, カメルーンのニオス湖では湖水爆発と呼ばれるCO2の爆発的な放出によって地域の住民1746名が犠牲となった. その後の調査でCO2はマグマ起源で熱水とともに湖底から供給されて湖水に蓄積されていることが明らかとなり, ニオス湖では2001年に人工的なガス抜きが開始された(例えば, Kusakabe et al., 1989; 大場ほか, 2012). 一方, 湖水爆発の発生メカニズムの解明や将来の予測のためにはCO2だけでなく種々の溶存成分に関して更なる知見の集積が必要である. 陸水の水質形成にとって水-相互作用は重要であり, 本研究ではニオス湖の湖水および湖縁の火山岩の化学組成を分析し, 湖水の水質形成と岩石との関係を検討している.
湖水の溶存成分濃度は水深とともに増加し, 湖底付近の溶存成分の割合は陽イオンで Fe2+>Mg2+>Ca2+>Na+>K+ であり, 陰イオンではHCO3-が卓越しCl-やSO42-は極めて低濃度である. マグマ起源のCO2に由来するHCO3-を除けば湖水の溶存成分濃度は40 ~ 380mg/L, Na/(Na+Ca) 重量比は0.3 ~ 0.4程度であり, 当該湖水の水質形成には水-岩石相互作用が重要な役割を果たしていると考えられた. 湖水の溶存化学組成と湖縁の火山岩試料の全岩化学組成には良い相関が認められ, 湖水の水質形成への水-岩石相互作用の関与を支持した. 岩石成分の湖水への溶出率は基本的にイオンの電荷(Z)と半径(r)の比率(Z/r比; イオンポテンシャル)に依存していると見られ, Z/r比が小さい元素(例えば, Na, K, Ca, Mg, Mnなど)は溶出率が大きく, Z/r比が大きい元素(例えば, Al, Ti, Crなど)では溶出率が小さい傾向が認められた. 今後, 湖水のpH条件や各種鉱物の平衡状態などを考慮した詳細な水-岩石相互作用を検討する必要がある.