日本地球惑星科学連合2016年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 活動的火山

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)

17:15 〜 18:30

[SVC47-P22] 西之島火山浅部の地震学的構造

*岡田 千明1西澤 あずさ1及川 光弘1 (1.海上保安庁海洋情報部)

キーワード:西之島、浅部地殻構造、屈折法地震探査

東京から約1000 km南方にある西之島は伊豆・小笠原島弧−海溝系の火山フロントに存在する火山である。2013年11月に西之島の南東沖でほぼ40年ぶりに噴火活動を再開してから多量の溶岩を噴出しており、西之島本島を取り込みながら拡大している。2016年1月現在、活動度は低下しながらも依然として火山活動は続いている。
西之島及びその周辺地域の地下構造を明らかにすることは、西之島の火山活動を理解する上で重要である。火山体下の地下構造を解明することで、火山活動に伴うマグマあるいは火山性流体の存在域や運動様式を解明する手がかりとなることが期待される。また、推定された地震波速度構造を使用することで、火山性地震の震源決定を高精度で行うことができるようになる。
地下構造を推定する方法として人工地震探査は有効な手段である。今までに富士山、阿蘇山、口永良部島等で人工地震探査が行われており、阿蘇山等の調査結果では火口を中心とした高速度体の存在が指摘されている。海上保安庁としても海底火山である明神礁、福徳岡ノ場周辺等において屈折法地震探査・反射法地震探査を実施しており、福徳岡ノ場の調査結果から火山体下に地震波を減衰させる物質の存在が推定された。しかしながら、西之島に関して地震波速度構造に関する詳細な知見は今までにほとんど存在していない。
海上保安庁では、西之島の火山活動を詳細に把握するために2015年6月から7月にかけて測量船「昭洋」による西之島周辺海域の総合的な海洋調査を実施した。その調査内で、西之島周辺の浅部域における地震学的構造を推定することを目的として、海底地震計(OBS)とエアガンを使用した予備的な地殻構造調査を行った。本発表では、西之島周辺に設置したOBSの記録を使用したファンシューティングと屈折法地震波速度構造探査の結果について報告する。
今回の屈折法地震探査では、海上保安庁海洋情報部・東京大学地震研究所・気象研究所が西之島周辺に各々設置した海底地震計の直上を通るような測線を計11本調査した。1本の測線上には2、3台のOBSが設置してあり、測線長はいずれも20 kmほどである。エアガンの総容量は3000 (1500×2) inch3 (約49 L)で、ショット間隔は40秒である。
ファンシューティングでは、各OBSで得られたレコードセクションにおいて波線の到来方向によって地震波の振幅が減衰する領域が確認された。地震波の振幅が減衰すると見られる領域を重ね合わせた結果より、西之島の火山体直下に地震波を減衰させる物質が存在すると考えられる。
屈折法地震波探査では、海上保安庁海洋情報部が設置したOBSの直上を通る測線5本に共通して見られる結果として震央距離3~8 kmの間で、見かけ速度4 km/sほどの屈折波初動が確認できた。震央距離10 km以上でも屈折法初動が検出できる記録もある。また、見かけ速度2 km/s程度の反射波と見られる後続波も記録された。2次元波線追跡法を用いて推定した暫定的なP波速度モデルでは、海底下に2 km/sの層が厚さ1.5 km程度存在し、その下に約4.5 km/sの層を置くことで観測走時を説明できる。