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[SVC47-P28] 2014-2015年における阿蘇山の長周期微動活動モニタリング
キーワード:阿蘇山、火山性微動、長周期微動、規模別頻度分布、Rayleigh波
はじめに
阿蘇山は日本の活火山の1つであり、有史以来頻繁に活動を繰り返している。その火口直下では、火山性ガスや火山灰がクラック状の火道を通過するときに、クラック壁と弾性的相互作用を生じることによって微動が発生すると考えられており、阿蘇山では約15秒の卓越周期を持つ長周期微動と呼ばれる微動が観測されている。本研究では、広帯域地震波観測記録から2014-2015年のストロンボリ式噴火を含む2年間における阿蘇山の長周期微動をモニタリングすることによって、長周期微動と噴火活動の対応関係を明らかにした。
長周期微動モニタリング
長周期微動を検出するために、防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netのうち、阿蘇山周辺の7観測点で記録された広帯域速度計記録を用いた.まず、一日毎の平均パワースペクトル推定値の時間変化を調べたところ、2014年10月から2015年4月、2015年9月から10月にかけて卓越周期8-12秒の継続的な信号が確認された。この期間はストロンボリ式噴火や気象庁による火山性微動の報告時期と良い対応があり、かつ前年の同時期には同様の信号が見られなかった。また、その振動極性は阿蘇山を中心とした動径方向ならびに上下動に卓越することから、これらは脈動の季節変化によるノイズではなく、阿蘇山の活動に起因する長周期微動のRayleigh波が継続的に観測されていたと考えられる。
そこでより詳細な長周期微動の活動状況を把握するため、マッチドフィルター解析による長周期微動のイベント検出を行った。まず、S/Nの良い孤立した長周期微動をテンプレートイベントとして1つ選択し、その3成分の地震波形を7観測点で用意した。次に、全21成分についてテンプレートイベント波形と連続記録との相互相関係数を、1秒ずつずらしながら全期間に渡って計算した。21個の相互相関係数の合計が絶対中央偏差に基づいて設定した閾値を越えたとき、長周期微動を検出したものと判断した。波形フィッティングによって、検出したイベントとテンプレートイベントの振幅比も推定した。解析期間は2014年から2015年12月上旬までとしたが、2015年には観測点のうちの1つに欠測があったため、これを除いた6観測点でも一連の解析を行った。
解析の結果、先行研究(Sandanbata et al., 2015)による到達時間差を利用したグリッドサーチでは解析対象外にした振幅100 nm/s以下の長周期微動も含め、より網羅的に長周期微動を検出することができた。また、2014年11月25日から2015年5月21日までの一連の断続的噴火期間の中でほぼ毎日長周期微動が検出されたが、2014年12月末から2015年1月にかけて長周期微動の振幅が大きく減少する現象が確認された。
規模別頻度分布とその時間変化
長周期微動の振幅の時間変化の傾向をもとに全期間を21のステージに分け、それぞれに対して規模別頻度分布を作成した。2014年までを解析対象とした先行研究(Sandanbata et al., 2015)では、規模別頻度分布が2014年11月のストロンボリ式噴火直後の約1週間のみ指数分布でなくベキ乗分布を示しており、阿蘇山の長周期微動の特徴的振幅スケールがストロンボリ式噴火によって失われたことが示唆されていたが、本研究でも同様の特徴が確認された。一方,2015年以降の活動ではいずれも指数分布が得られており、2014年11月のストロンボリ式噴火のみが他と異なる特徴的なイベントであったことが示唆される。また、噴火期間中に振幅が大きく減少した2015年1月には、他の期間と比べて微小な振幅の長周期微動検出数が極めて多くなっている。表面現象としては、2014年11月から12月および2015年3月から5月は灰白色の噴煙が立ち上ったのに対し、2015年1月から2月は立ち上った噴煙が灰色であったことが観測されている。これらのことから、噴煙の主成分が水蒸気から火山灰へ変化したことが長周期微動の振幅に何らかの影響を与えたと考えられる。
阿蘇山は日本の活火山の1つであり、有史以来頻繁に活動を繰り返している。その火口直下では、火山性ガスや火山灰がクラック状の火道を通過するときに、クラック壁と弾性的相互作用を生じることによって微動が発生すると考えられており、阿蘇山では約15秒の卓越周期を持つ長周期微動と呼ばれる微動が観測されている。本研究では、広帯域地震波観測記録から2014-2015年のストロンボリ式噴火を含む2年間における阿蘇山の長周期微動をモニタリングすることによって、長周期微動と噴火活動の対応関係を明らかにした。
長周期微動モニタリング
長周期微動を検出するために、防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netのうち、阿蘇山周辺の7観測点で記録された広帯域速度計記録を用いた.まず、一日毎の平均パワースペクトル推定値の時間変化を調べたところ、2014年10月から2015年4月、2015年9月から10月にかけて卓越周期8-12秒の継続的な信号が確認された。この期間はストロンボリ式噴火や気象庁による火山性微動の報告時期と良い対応があり、かつ前年の同時期には同様の信号が見られなかった。また、その振動極性は阿蘇山を中心とした動径方向ならびに上下動に卓越することから、これらは脈動の季節変化によるノイズではなく、阿蘇山の活動に起因する長周期微動のRayleigh波が継続的に観測されていたと考えられる。
そこでより詳細な長周期微動の活動状況を把握するため、マッチドフィルター解析による長周期微動のイベント検出を行った。まず、S/Nの良い孤立した長周期微動をテンプレートイベントとして1つ選択し、その3成分の地震波形を7観測点で用意した。次に、全21成分についてテンプレートイベント波形と連続記録との相互相関係数を、1秒ずつずらしながら全期間に渡って計算した。21個の相互相関係数の合計が絶対中央偏差に基づいて設定した閾値を越えたとき、長周期微動を検出したものと判断した。波形フィッティングによって、検出したイベントとテンプレートイベントの振幅比も推定した。解析期間は2014年から2015年12月上旬までとしたが、2015年には観測点のうちの1つに欠測があったため、これを除いた6観測点でも一連の解析を行った。
解析の結果、先行研究(Sandanbata et al., 2015)による到達時間差を利用したグリッドサーチでは解析対象外にした振幅100 nm/s以下の長周期微動も含め、より網羅的に長周期微動を検出することができた。また、2014年11月25日から2015年5月21日までの一連の断続的噴火期間の中でほぼ毎日長周期微動が検出されたが、2014年12月末から2015年1月にかけて長周期微動の振幅が大きく減少する現象が確認された。
規模別頻度分布とその時間変化
長周期微動の振幅の時間変化の傾向をもとに全期間を21のステージに分け、それぞれに対して規模別頻度分布を作成した。2014年までを解析対象とした先行研究(Sandanbata et al., 2015)では、規模別頻度分布が2014年11月のストロンボリ式噴火直後の約1週間のみ指数分布でなくベキ乗分布を示しており、阿蘇山の長周期微動の特徴的振幅スケールがストロンボリ式噴火によって失われたことが示唆されていたが、本研究でも同様の特徴が確認された。一方,2015年以降の活動ではいずれも指数分布が得られており、2014年11月のストロンボリ式噴火のみが他と異なる特徴的なイベントであったことが示唆される。また、噴火期間中に振幅が大きく減少した2015年1月には、他の期間と比べて微小な振幅の長周期微動検出数が極めて多くなっている。表面現象としては、2014年11月から12月および2015年3月から5月は灰白色の噴煙が立ち上ったのに対し、2015年1月から2月は立ち上った噴煙が灰色であったことが観測されている。これらのことから、噴煙の主成分が水蒸気から火山灰へ変化したことが長周期微動の振幅に何らかの影響を与えたと考えられる。