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[SVC47-P30] 2015年4月の阿蘇火山ストロンボリ式噴火の発生深度
キーワード:阿蘇火山、ストロンボリ式噴火、阿蘇火山2015年噴火
阿蘇火山中岳第一火口では、2014年11月のマグマ噴火発生を機に、22年ぶりとなる本格的な噴火活動が始まり、翌年5月上旬まで継続した。これは、中岳第一火口周辺に広帯域地震計や空振計などの観測機器が数多く整備された状況下で発生した、初めての噴火活動である。本研究では、2015年4月下旬に繰り返されたストロンボリ式噴火を対象として、噴火にいたる諸過程の発生深度の推定、ならびに、噴火発生プロセスについての検討を行った。京都大学火山研究センターの広帯域および短周期地震計(UMAB、KAF;上下動のみ)、空振計(ACM)による観測記録のうち、2015年4月24日19時台1時間分を解析に使用した。ACM観測点、KAF観測点は、火口中心から南南西に230 m、南西に260 m離れた火口縁上にそれぞれ位置する。UMAB観測点は火口から北北西に830m地点に位置し、火口底とほぼ同じ標高にある。
ストロンボリ式噴火が発生すると、典型的には以下のような噴火に対応したシグナルが、すべての観測点で認められる。UMABでは0.1Hz以下の周波数に卓越した振動が下向き成分で始まる。UMABへのシグナル到着開始から約2〜5 s遅れて、KAFに5〜10Hzにピークを持つ高周波の地震が到来する。さらにその1 s後に、ACMで空気振動が観測される。この空気振動は低周波(0.5 Hz)の圧縮相で始まるが、0.1 sほど遅れて一桁程度小さな振幅の高周波成分(>10 Hz)が重畳する。
KAFで観測される地震のRMS振幅とACMにおける空振振幅(高周波成分)の間には、高い正の相関(0.92)が認められた。また、両観測点間のシグナル到着時刻の差は0.93〜1.56 s(平均1.2 s;18イベント)であった。この時間差を用いて、ストロンボリ式噴火の発生深度を推定した。火孔でのガス温度およびガス組成が、330〜360 K(4月25日、27日)、H2O:SO2:CO2=90:4:4(篠原、私信)であったことから、火孔内部における音速は410〜430 m/sと見積もられる。さらに、噴火発生源からKAFまでの地震波速度がP波速度(3.3 km/s;筒井・他, 2003, 火山)に等しいと考え、地震・空振の走時関係から噴火発生深度を70〜380 m(平均200 m)と得た。阿蘇火山中岳の火口下には、深さ約300mを上端とするクラック状火道の存在が指摘されている(Yamamoto et al., 1999, GRL)。したがって、クラック状火道以浅の領域でストロンボリ式噴火が繰り返し発生していたものと考えられる。
上述したように、KAFではストロンボリ式噴火発生にともなう高周波地震が記録される。しかし、いずれの噴火イベントにおいても、その1.7〜5.4 s(平均2.8 s;13イベント)前にUMABへ低周波地震が到来する。この低周波地震はクラック状火道で発生する長周期微動と考えられるため、長周期微動の発生がストロンボリ式噴火を誘発している可能性が指摘される。UMABと微動発生源の距離を考慮すると、長周期微動の位相伝播速度は、Near Fieldの効果を含むため、P波速度とS波速度(1.9 km/s;Sudo & Kong, 2001, BV)の間の値となると考えられる。したがって、その発生深度をクラック状火道の中心位置である1.6〜1.8 km(Yamamoto et al., 1999, GRL)とすれば、噴火発生の誘発元は300〜700 m/sほどの速さで上昇していることを意味する。しかし、マグマやガスなどの物質の移動速度として考えると、この値はやや大きく現実的でない。
安山岩質溶融マグマの音速は2.3〜2.5 km/s(Murase and McBirny, 1973, BGSA)であるが、ここに数vol.%の気泡を含むことで上記の速度は説明可能になる(Morrissey & Chouet, 2001, JVGR)。一方、水蒸気ガス中に10 vol.%以下の火山灰粒子を含むことでもこの速度を再現できる。現段階では、クラック状火道内部がいずれの条件に該当しているのかは明らかでないが、長周期微動の発生にともなう圧力擾乱が音波として火道内を上方へと伝播し、ストロンボリ式噴火の発生を励起するとしても大きな矛盾はない。空振波形の立ち上がり開始から高周波成分の重畳までには0.1 s程度の時間遅れが認められるが、これは、圧力擾乱が噴火発生深度へ到着してから実際に噴火が発生するまでの過程を反映しているのかもしれない。
ストロンボリ式噴火が発生すると、典型的には以下のような噴火に対応したシグナルが、すべての観測点で認められる。UMABでは0.1Hz以下の周波数に卓越した振動が下向き成分で始まる。UMABへのシグナル到着開始から約2〜5 s遅れて、KAFに5〜10Hzにピークを持つ高周波の地震が到来する。さらにその1 s後に、ACMで空気振動が観測される。この空気振動は低周波(0.5 Hz)の圧縮相で始まるが、0.1 sほど遅れて一桁程度小さな振幅の高周波成分(>10 Hz)が重畳する。
KAFで観測される地震のRMS振幅とACMにおける空振振幅(高周波成分)の間には、高い正の相関(0.92)が認められた。また、両観測点間のシグナル到着時刻の差は0.93〜1.56 s(平均1.2 s;18イベント)であった。この時間差を用いて、ストロンボリ式噴火の発生深度を推定した。火孔でのガス温度およびガス組成が、330〜360 K(4月25日、27日)、H2O:SO2:CO2=90:4:4(篠原、私信)であったことから、火孔内部における音速は410〜430 m/sと見積もられる。さらに、噴火発生源からKAFまでの地震波速度がP波速度(3.3 km/s;筒井・他, 2003, 火山)に等しいと考え、地震・空振の走時関係から噴火発生深度を70〜380 m(平均200 m)と得た。阿蘇火山中岳の火口下には、深さ約300mを上端とするクラック状火道の存在が指摘されている(Yamamoto et al., 1999, GRL)。したがって、クラック状火道以浅の領域でストロンボリ式噴火が繰り返し発生していたものと考えられる。
上述したように、KAFではストロンボリ式噴火発生にともなう高周波地震が記録される。しかし、いずれの噴火イベントにおいても、その1.7〜5.4 s(平均2.8 s;13イベント)前にUMABへ低周波地震が到来する。この低周波地震はクラック状火道で発生する長周期微動と考えられるため、長周期微動の発生がストロンボリ式噴火を誘発している可能性が指摘される。UMABと微動発生源の距離を考慮すると、長周期微動の位相伝播速度は、Near Fieldの効果を含むため、P波速度とS波速度(1.9 km/s;Sudo & Kong, 2001, BV)の間の値となると考えられる。したがって、その発生深度をクラック状火道の中心位置である1.6〜1.8 km(Yamamoto et al., 1999, GRL)とすれば、噴火発生の誘発元は300〜700 m/sほどの速さで上昇していることを意味する。しかし、マグマやガスなどの物質の移動速度として考えると、この値はやや大きく現実的でない。
安山岩質溶融マグマの音速は2.3〜2.5 km/s(Murase and McBirny, 1973, BGSA)であるが、ここに数vol.%の気泡を含むことで上記の速度は説明可能になる(Morrissey & Chouet, 2001, JVGR)。一方、水蒸気ガス中に10 vol.%以下の火山灰粒子を含むことでもこの速度を再現できる。現段階では、クラック状火道内部がいずれの条件に該当しているのかは明らかでないが、長周期微動の発生にともなう圧力擾乱が音波として火道内を上方へと伝播し、ストロンボリ式噴火の発生を励起するとしても大きな矛盾はない。空振波形の立ち上がり開始から高周波成分の重畳までには0.1 s程度の時間遅れが認められるが、これは、圧力擾乱が噴火発生深度へ到着してから実際に噴火が発生するまでの過程を反映しているのかもしれない。