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[SVC47-P31] 霧島火山,硫黄山火口周辺で新たに始まった噴気活動について
キーワード:霧島火山、硫黄山、噴気
霧島火山,えびの高原(硫黄山)周辺は,1万年間に2回の溶岩噴出と3回の水蒸気噴火が生じ,1768年に最後の水蒸気噴火をしたと考えられている(田島・他,2014).また,地熱活動に伴うと思われる火山泥流堆積物が複数層確認されており,マグマ噴火が卓越する新燃岳,御鉢とは異なる履歴を残す火山である.硫黄山と言われるように噴気活動が象徴の火山であったが,近年その活動が衰え停止していた.一度停止した噴気活動であったが,2015年12月14日に硫黄山の古い火口の南西縁で新たな噴気が生じたことが報告された.噴気活動の再出現の意味を正確に理解する必要があり過去の噴気活動とともに,観測結果の報告を行う.
硫黄山の最も古い噴気の温度記録は小田(1922)に示され,蝦野溫泉の項に「硫黄山火山下ニ噴氣スル・・・余ノ大正五年(1916年)八月十二日湧出孔ニテ測定シタル溫度ハ攝氏八十度以上(気溫凡二十五度)ナリキ」とされる.小田は,硫黄山の西側の巨岩下とその南に2カ所に硫氣孔が存在したことを示し,南のものは記述から大地獄付近のものと考えられる.また,明治33年(1900年)に硫黄の採掘が始まっていたことから,硫黄山の噴気は1900年には既に生じていた.
その後,硫黄山の噴気を示す記録は与謝野晶子が1929年(昭和4年)に詠んだ歌や1934年(昭和9年)の絵はがきに見られる.えびの高原周辺では硫黄山(硫黄山噴気帯)のみならず,昭和10年頃にはエコミュージアムセンター周辺においても活発な噴気(海老野噴気帯)が生じていたことが知られている(地質調査所地熱調査班,1955).地質調査所地熱調査班(1955)が,1954年に海老野噴気帯で測定した地表の噴気温は最高96℃であり,同時期に測定された硫黄山噴気帯は96~120℃とされている.1964年の霧島火山観測所設置からは,東京大学地震研究所等によって硫黄山噴気帯の観測が行われてきた(例えば,Minakami, 1968).1975年3月には硫黄山の火口東縁で247℃が記録され,以下に示す2015年12月に出現した噴気地点近傍においても,1975年に183℃,1978年に147℃の噴気温が観測されている(鍵山・他,1979).最近では,1985年の噴気孔への転落死亡事故を受けた環境庁委託調査(えびの高原自然保護対策協議会,1987)や1987年の鍵山・他(1987)による地熱調査があり,この頃硫黄山噴気帯には150℃以上の噴気孔があったことが知られている.1990年代に入ると硫黄山周辺の噴気活動は衰え,2008年に筆者が硫黄山火口縁を周回した時には噴気は認められず,火口縁東側のわずか2カ所で地面を触ったところやや温かいと感じる程度であった.
韓国岳もしくはえびの高原周辺では,2014年8月20日に火山性微動が観測され,10月24日に火口周辺警報が発表された.2015年5月1日に警報解除となったが,2015年7月頃から火山性地震や微動が観測された(気象庁ホームページ).12月24日16時頃に,霧島ネイチャーガイドクラブの一員のよって新たな噴気が確認された.それ以後,硫黄山火口南西縁の噴気域や周辺の湧水地点の観測を行った.2015年12月14日に80℃であった最初に現れた噴気点の温度は,12月25~27日には93~96℃に上昇していた.また,噴気や高温域も拡大し,12月25日には高温域が概ねの南北方向が約6mであったものが,2016年1月16日には約35m,2月1日にはさらに拡大していた.また,これらの噴気箇所の南側の地点にも,2016年1月13日~14日午後に噴気が出現した.2016年2月時点において,硫黄山火口南西の噴気域は拡大しており,噴気位置,拡大傾向や温度などその活動について今後も注視し観測していく.
霧島ネイチャーガイドクラブ調査班:原口憲太郎,永友武治,東多佳道,宮川勉,馬場緑,吉永英昭.
硫黄山の最も古い噴気の温度記録は小田(1922)に示され,蝦野溫泉の項に「硫黄山火山下ニ噴氣スル・・・余ノ大正五年(1916年)八月十二日湧出孔ニテ測定シタル溫度ハ攝氏八十度以上(気溫凡二十五度)ナリキ」とされる.小田は,硫黄山の西側の巨岩下とその南に2カ所に硫氣孔が存在したことを示し,南のものは記述から大地獄付近のものと考えられる.また,明治33年(1900年)に硫黄の採掘が始まっていたことから,硫黄山の噴気は1900年には既に生じていた.
その後,硫黄山の噴気を示す記録は与謝野晶子が1929年(昭和4年)に詠んだ歌や1934年(昭和9年)の絵はがきに見られる.えびの高原周辺では硫黄山(硫黄山噴気帯)のみならず,昭和10年頃にはエコミュージアムセンター周辺においても活発な噴気(海老野噴気帯)が生じていたことが知られている(地質調査所地熱調査班,1955).地質調査所地熱調査班(1955)が,1954年に海老野噴気帯で測定した地表の噴気温は最高96℃であり,同時期に測定された硫黄山噴気帯は96~120℃とされている.1964年の霧島火山観測所設置からは,東京大学地震研究所等によって硫黄山噴気帯の観測が行われてきた(例えば,Minakami, 1968).1975年3月には硫黄山の火口東縁で247℃が記録され,以下に示す2015年12月に出現した噴気地点近傍においても,1975年に183℃,1978年に147℃の噴気温が観測されている(鍵山・他,1979).最近では,1985年の噴気孔への転落死亡事故を受けた環境庁委託調査(えびの高原自然保護対策協議会,1987)や1987年の鍵山・他(1987)による地熱調査があり,この頃硫黄山噴気帯には150℃以上の噴気孔があったことが知られている.1990年代に入ると硫黄山周辺の噴気活動は衰え,2008年に筆者が硫黄山火口縁を周回した時には噴気は認められず,火口縁東側のわずか2カ所で地面を触ったところやや温かいと感じる程度であった.
韓国岳もしくはえびの高原周辺では,2014年8月20日に火山性微動が観測され,10月24日に火口周辺警報が発表された.2015年5月1日に警報解除となったが,2015年7月頃から火山性地震や微動が観測された(気象庁ホームページ).12月24日16時頃に,霧島ネイチャーガイドクラブの一員のよって新たな噴気が確認された.それ以後,硫黄山火口南西縁の噴気域や周辺の湧水地点の観測を行った.2015年12月14日に80℃であった最初に現れた噴気点の温度は,12月25~27日には93~96℃に上昇していた.また,噴気や高温域も拡大し,12月25日には高温域が概ねの南北方向が約6mであったものが,2016年1月16日には約35m,2月1日にはさらに拡大していた.また,これらの噴気箇所の南側の地点にも,2016年1月13日~14日午後に噴気が出現した.2016年2月時点において,硫黄山火口南西の噴気域は拡大しており,噴気位置,拡大傾向や温度などその活動について今後も注視し観測していく.
霧島ネイチャーガイドクラブ調査班:原口憲太郎,永友武治,東多佳道,宮川勉,馬場緑,吉永英昭.