日本地球惑星科学連合2016年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] 活動的火山

2016年5月24日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 6ホール)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、前田 裕太(名古屋大学)

17:15 〜 18:30

[SVC47-P45] 気象庁の活火山への全磁力観測点の整備

*山崎 明1西田 誠1井 智史1平原 秀行1中橋 正樹2 (1.気象庁地磁気観測所、2.気象庁火山課)

キーワード:気象庁、全磁力、活火山、熱水系、水蒸気噴火、オーバーハウザー磁力計

戦後最悪の火山災害となった2014年9月27日の御嶽山の噴火をきっかけとして、水蒸気噴火の予知が社会的に大きくクローズアップされ、気象庁では水蒸気噴火の予測を目的として火口周辺での火山観測体制を強化することになった。その中で地磁気観測は火山の熱水系の活動状況を把握するのに優れていると評価され、強化する観測項目の一つに取り上げられた。このような経緯から、気象庁では平成27年度に国内の4つの活火山(樽前山・吾妻山・御嶽山・霧島山)に全磁力観測点を整備することになった。
全磁力観測点の配置は、火口地下の熱活動を捉えることを目的とし、各火山において火口から概ね1kmの範囲内にオーバーハウザー磁力計を6点、基準点として山麓部に1点の配置を基本構成とした。基準点にはフラックスゲート3成分磁力計も併設し、磁気嵐などの地磁気擾乱の補正用として利用することにした。オーバーハウザー磁力計の分解能は0.01nT、フラックスゲート磁力計の分解能は0.001nTである。電源はソーラーパネル+バッテリー給電方式とし、冬季の積雪を考慮し無日照日が100日以上でも稼動可能な仕様とした。測定データは衛星またはFOMA回線を用いて1日3回気象庁まで伝送される。
全磁力観測地点は火口から概ね1km以内で、ソーラーパネルのための日照が得られ、比較的平坦な地形の場所を選定した。磁場環境としては車両等のノイズを避けるため、車道から約200m以上の距離をとることにした。また、一般に磁気勾配が大きい観測点では、観測点周囲の岩石や土壌磁化の温度依存性により年周変化が大きくなることが知られているが、この年周変化をなるべく小さくするため、選定した観測候補地点周辺で磁気測量を実施し、磁気勾配が概ね20nT/m以下の地点を選定した。
各火山での選定状況については、樽前山では山頂部の溶岩ドームで噴気活動が活発であり、札幌火山センターが実施している全磁力の繰返し観測によれば、2010年以降溶岩ドームの帯磁傾向の変化が観測されている。今回整備した観測点は全磁力繰返し観測の結果を参考に、溶岩ドーム周辺に選定した。吾妻山では一切経山南東斜面にある大穴火口での噴気活動が活発であり、仙台火山センターが2003年より実施している全磁力の繰返し観測では消磁の傾向が継続している。この観測結果を参考に大穴火口周辺での全磁力観測点を選定した。御嶽山では2014年9月に噴火した地獄谷火口を中心に全磁力観測点を選定した。霧島山ではえびの高原の硫黄山周辺で熱活動や微動が発生しており、福岡火山センターでは全磁力の繰返し観測を実施している。今回の整備では硫黄山の地下活動を把握することを目的とし、硫黄山周辺に全磁力観測点を選定した。