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[SVC48-P04] 十和田火山、噴火エピソードC(中掫テフラ)堆積物のcomponent analysisに基づく中湖カルデラの形成プロセス
キーワード:十和田火山、中掫テフラ、石質岩片、構成種分析
十和田湖を有する十和田火山は二重カルデラ火山であり、外側の十和田カルデラ(直径10km)は、3度の珪長質大規模噴火を経て13,000年前に形成された。内側の中湖カルデラ(直径3km)は後カルデラ火山である五色岩成層火山の山頂カルデラである。五色岩火山の山体は苦鉄質であるが、活動が再び珪長質へと変化するとともに爆発的活動へと移行し、山頂部に逆円錐台形の深いカルデラが形成された。
約6,500年前の噴火エピソードC(中掫テフラ)は下位からプリニー式降下軽石である中掫軽石(CP)、石質岩片に富む降下軽石堆積物である金ヶ沢軽石(KP)、マグマ水蒸気噴火噴出物である宇樽部火山灰(UA)から成り(早川、1983)、総噴出量は約3km3である。Hayakawa(1985) は、石質岩片に富むKPの存在と、マグマ噴火から爆発的なマグマ水蒸気噴火へ活動が移行したことから、噴火エピソードC が中湖カルデラの形成に大きく関与したとしたが、その形成時期には異論もある。
一般に爆発的噴火の噴出物中の石質岩片は、火道や山体を構成する岩石で、マグマ溜りの壁、マグマ破砕深度付近の岩石も含まれる。石質岩片の種類や量の時間発展は、火口の拡大や進展、新たな火口形成を示唆するものと考えられ、噴火様式の変化やカルデラ形成プロセスなどと関連づけて議論されてきた(例えばDruitt, 2014)。以上に基づき本研究では、中掫テフラ中の石質岩片種や量比の時間変化を詳細に検討し(Component Analysis)、中湖カルデラの形成プロセスについて考察を行った。
中掫軽石(CP)は層の下部、上部で粒径変化が認められ、噴煙柱の消長があったことが示唆されるが、大半を占める主部はほぼ一様な岩相を示し、時間間隙のない連続事象であったと推定される。金ヶ沢軽石(KP)は、下位からKP1~KP5の5枚のサブユニットに区分され、それぞれ短い時間間隙が存在する。3枚のサブユニット内では、主に類質・異質岩片からなる石質岩片卓越部から軽石卓越部へと漸移するが、この特徴は一般的なプリニー式噴火噴出物では認められないものである。
CP中の石質岩片量は、火口近傍でも主部の大半で10wt%であるが、主部の最上位で石質岩片量が急増する傾向が認められ、最大で40wt%に達する。この石質岩片量の増大とともに軽石の最大粒径(MP)が大きくなる傾向があるが、中央粒径(MdΦ)の変化はない。一方、KP中の石質岩片量は、石質岩片が卓越するKP2L・KP4L・KP5で80wt%以上を占めるのに対し、軽石卓越部(KP2U・KP4U)では40~50wt%で、CP主部上位の岩片が急増する部分と同程度である。
五色岩火山は苦鉄質溶岩と同質のアグルチネイト、その上位の爆発的噴火に由来する珪長質な溶結軽石からなる。また、北東側斜面にはデイサイト質の御倉山溶岩ドームがあり、活動火口の位置によってこれらの石質岩片種が噴出物中で変化すると予想される。五色岩の下位には十和田カルデラ形成以前の溶岩や溶結凝灰岩(八甲田起源)が存在し、さらに深部は必ずしも明らかではないが基盤の粘板岩やチャートなどの堆積岩があると考えられる(秋田県, 1973)。CP中の構成岩片種は、岩片量の少ない主部の大半では五色岩の山体を構成する玄武岩質安山岩~安山岩が主体である。一方、岩片量が急増する上位では、褐色の変質岩片や珪化岩が含まれる。KPではCPの上位と類似した玄武岩質安山岩〜安山岩岩片と変質岩片が大半を占め、サブユニットによらず一定の構成比を示すが、少量の黒曜石片も含まれる。両降下軽石層を通じて、基盤に由来する岩片は確認されない。
以上のように岩片量・岩片種はユニットの相違に対応するのではなく、CPの上位において変化する。この変化は軽石のMPの変化と対応しており、噴火強度の変化がその原因であるようにも考えられるが、一方でMdΦには変化がないなど、さらなる検討の余地がある。
CP・KP中の石質岩片の大部分は五色岩火山を構成する地表付近の岩片で、それよりも深部のものはほとんど含まれない。従って、この活動で放出された石質岩片は既存の山体を破壊することでもたらされたと考えられる。現在の中湖の容積は約2km3であるが、今回得られたCP・KP中の石質岩片の総量は0.16km3であり、噴火エピソードCのみでは中湖を埋め立てることはできない。一方、最新の活動である噴火エピソードA中の石質岩片量は約0.6km3(広井・宮本,2014)である。また、中湖は十和田カルデラ床よりも200m以上深く、五色岩火山よりも下位の岩石を侵食する必要がある。以上の点から現在の中湖カルデラは単一のイベントで形成されたのではなく、噴火エピソードC以降の複数の活動によって段階的に形成され、噴火エピソードAの際に現在の形となった可能性が高い。
約6,500年前の噴火エピソードC(中掫テフラ)は下位からプリニー式降下軽石である中掫軽石(CP)、石質岩片に富む降下軽石堆積物である金ヶ沢軽石(KP)、マグマ水蒸気噴火噴出物である宇樽部火山灰(UA)から成り(早川、1983)、総噴出量は約3km3である。Hayakawa(1985) は、石質岩片に富むKPの存在と、マグマ噴火から爆発的なマグマ水蒸気噴火へ活動が移行したことから、噴火エピソードC が中湖カルデラの形成に大きく関与したとしたが、その形成時期には異論もある。
一般に爆発的噴火の噴出物中の石質岩片は、火道や山体を構成する岩石で、マグマ溜りの壁、マグマ破砕深度付近の岩石も含まれる。石質岩片の種類や量の時間発展は、火口の拡大や進展、新たな火口形成を示唆するものと考えられ、噴火様式の変化やカルデラ形成プロセスなどと関連づけて議論されてきた(例えばDruitt, 2014)。以上に基づき本研究では、中掫テフラ中の石質岩片種や量比の時間変化を詳細に検討し(Component Analysis)、中湖カルデラの形成プロセスについて考察を行った。
中掫軽石(CP)は層の下部、上部で粒径変化が認められ、噴煙柱の消長があったことが示唆されるが、大半を占める主部はほぼ一様な岩相を示し、時間間隙のない連続事象であったと推定される。金ヶ沢軽石(KP)は、下位からKP1~KP5の5枚のサブユニットに区分され、それぞれ短い時間間隙が存在する。3枚のサブユニット内では、主に類質・異質岩片からなる石質岩片卓越部から軽石卓越部へと漸移するが、この特徴は一般的なプリニー式噴火噴出物では認められないものである。
CP中の石質岩片量は、火口近傍でも主部の大半で10wt%であるが、主部の最上位で石質岩片量が急増する傾向が認められ、最大で40wt%に達する。この石質岩片量の増大とともに軽石の最大粒径(MP)が大きくなる傾向があるが、中央粒径(MdΦ)の変化はない。一方、KP中の石質岩片量は、石質岩片が卓越するKP2L・KP4L・KP5で80wt%以上を占めるのに対し、軽石卓越部(KP2U・KP4U)では40~50wt%で、CP主部上位の岩片が急増する部分と同程度である。
五色岩火山は苦鉄質溶岩と同質のアグルチネイト、その上位の爆発的噴火に由来する珪長質な溶結軽石からなる。また、北東側斜面にはデイサイト質の御倉山溶岩ドームがあり、活動火口の位置によってこれらの石質岩片種が噴出物中で変化すると予想される。五色岩の下位には十和田カルデラ形成以前の溶岩や溶結凝灰岩(八甲田起源)が存在し、さらに深部は必ずしも明らかではないが基盤の粘板岩やチャートなどの堆積岩があると考えられる(秋田県, 1973)。CP中の構成岩片種は、岩片量の少ない主部の大半では五色岩の山体を構成する玄武岩質安山岩~安山岩が主体である。一方、岩片量が急増する上位では、褐色の変質岩片や珪化岩が含まれる。KPではCPの上位と類似した玄武岩質安山岩〜安山岩岩片と変質岩片が大半を占め、サブユニットによらず一定の構成比を示すが、少量の黒曜石片も含まれる。両降下軽石層を通じて、基盤に由来する岩片は確認されない。
以上のように岩片量・岩片種はユニットの相違に対応するのではなく、CPの上位において変化する。この変化は軽石のMPの変化と対応しており、噴火強度の変化がその原因であるようにも考えられるが、一方でMdΦには変化がないなど、さらなる検討の余地がある。
CP・KP中の石質岩片の大部分は五色岩火山を構成する地表付近の岩片で、それよりも深部のものはほとんど含まれない。従って、この活動で放出された石質岩片は既存の山体を破壊することでもたらされたと考えられる。現在の中湖の容積は約2km3であるが、今回得られたCP・KP中の石質岩片の総量は0.16km3であり、噴火エピソードCのみでは中湖を埋め立てることはできない。一方、最新の活動である噴火エピソードA中の石質岩片量は約0.6km3(広井・宮本,2014)である。また、中湖は十和田カルデラ床よりも200m以上深く、五色岩火山よりも下位の岩石を侵食する必要がある。以上の点から現在の中湖カルデラは単一のイベントで形成されたのではなく、噴火エピソードC以降の複数の活動によって段階的に形成され、噴火エピソードAの際に現在の形となった可能性が高い。