17:15 〜 18:30
[SVC48-P05] 岩手山松川火山観測施設岩石コア試料の層序と年代
キーワード:仙岩地熱地域、火山形成史、ボーリングコア、地すべり
防災科研が平成21年度に整備した岩手山松川火山観測施設では孔井式地震傾斜観測装置を設置するため,西岩手山地獄谷火口から北西約5kmの地点(緯度N39.88346° 経度E140.93582° 標高804m)に深度200mの観測井を掘削した.その際,観測井の地質状況の把握のために岩石コア試料の採取を行なった.岩手火山を含む仙岩火山地域の第四紀火山群の研究ではK-Ar年代測定(須藤,1985など)やテフロクロノロジー(土井,1990など)により噴出物の編年が進んでいる.しかし初期の火山体については熱水変質が進んでいることや地表下に埋没している等の理由で情報が不足している.今回得られたコア試料を解析することにより,岩手火山周辺の火山形成史や基盤構造の解明が進むことが期待される.
ボーリングコア試料の概要
松川コア試料は岩相により大きく3つに区分される.上部(深度0m~106.0m)は主に未固結の安山岩質火山角礫岩や凝灰角礫岩からなる.部分的に土壌塊が狭在している. 中部(深度106.0m~134.7m)は熱水変質した未固結の安山岩質の凝灰角礫岩・火山角礫岩からなり,黄褐色の基質にはしばしば水平的なせん断構造が発達している.下部(深度134.7m~203.0m)は全体に強く熱水変質した暗灰色や緑灰色の火山岩類からなる.深度148m~150m付近の変質岩には急傾斜なせん断帯が発達している.深度157m~167mは安山岩質の溶岩流もしくは貫入岩からなる.深度約170m以深は固結した緑灰色の火山礫凝灰岩で,ユータキシティック組織の痕跡が認められることから溶結凝灰岩の可能性がある.
年代測定の概要
松川コア中部~上部の試料のK-Ar年代測定を蒜山地質年代学研究所に依頼した.測定には石基濃集試料を用い,38Arスパイクを使用する同位体希釈法により行なわれた.測定結果(重み付平均値)は上部の深度75.3mの火山角礫岩の安山岩岩塊では0.94±0.03Ma,中部の深度121.4mの火山角礫岩中の安山岩岩塊では1.04±0.07Maであった. また,上部から採取された腐植質土壌や木片については14C法による年代測定をパレオ・ラボに依頼した.深度40.2mの試料では4820±25yrBP,42.6mの試料では4975±25yrBP,54.2mでは5055±20yrBP,69.9mでは5890±25yrBPであり,暦年較正により約3600~4800cal.BC頃の年代が得られた.
ボーリングコア試料の対比
松川コア下部は変質が強いため不明な点が多いが,一部は玉川溶結凝灰岩類に対比される可能性がある.コア中部と上部に含まれる火山岩岩塊は約1Ma頃を示し,松川安山岩もしくは八幡平火山群の中倉(丸森)火山に由来する可能性が高い. 一方上部に含まれる土塊や木片の年代からコア上部の堆積年代は完新世である可能性が高い.松川コアの掘削地点は「丸森地すべり」地域内に位置している.丸森地すべりの表面微地形を覆う土壌からは2390±90yrBPの14C年代が報告されている(角ほか,1988).コア中部にせん断構造が発達することも考慮すると,松川コアの上部から中部までは丸森地すべりの移動体の一部であり,数千年前頃の地すべり発生時に表土や植生を巻き込んだものと解釈することができる.一方コア下部のせん断構造は脊梁山地東縁に発達する逆断層群(松尾断層など)に関係する可能性もあり,運動方向の解析や周辺地域のコア試料等との比較から基盤構造を解明する必要がある.
ボーリングコア試料の概要
松川コア試料は岩相により大きく3つに区分される.上部(深度0m~106.0m)は主に未固結の安山岩質火山角礫岩や凝灰角礫岩からなる.部分的に土壌塊が狭在している. 中部(深度106.0m~134.7m)は熱水変質した未固結の安山岩質の凝灰角礫岩・火山角礫岩からなり,黄褐色の基質にはしばしば水平的なせん断構造が発達している.下部(深度134.7m~203.0m)は全体に強く熱水変質した暗灰色や緑灰色の火山岩類からなる.深度148m~150m付近の変質岩には急傾斜なせん断帯が発達している.深度157m~167mは安山岩質の溶岩流もしくは貫入岩からなる.深度約170m以深は固結した緑灰色の火山礫凝灰岩で,ユータキシティック組織の痕跡が認められることから溶結凝灰岩の可能性がある.
年代測定の概要
松川コア中部~上部の試料のK-Ar年代測定を蒜山地質年代学研究所に依頼した.測定には石基濃集試料を用い,38Arスパイクを使用する同位体希釈法により行なわれた.測定結果(重み付平均値)は上部の深度75.3mの火山角礫岩の安山岩岩塊では0.94±0.03Ma,中部の深度121.4mの火山角礫岩中の安山岩岩塊では1.04±0.07Maであった. また,上部から採取された腐植質土壌や木片については14C法による年代測定をパレオ・ラボに依頼した.深度40.2mの試料では4820±25yrBP,42.6mの試料では4975±25yrBP,54.2mでは5055±20yrBP,69.9mでは5890±25yrBPであり,暦年較正により約3600~4800cal.BC頃の年代が得られた.
ボーリングコア試料の対比
松川コア下部は変質が強いため不明な点が多いが,一部は玉川溶結凝灰岩類に対比される可能性がある.コア中部と上部に含まれる火山岩岩塊は約1Ma頃を示し,松川安山岩もしくは八幡平火山群の中倉(丸森)火山に由来する可能性が高い. 一方上部に含まれる土塊や木片の年代からコア上部の堆積年代は完新世である可能性が高い.松川コアの掘削地点は「丸森地すべり」地域内に位置している.丸森地すべりの表面微地形を覆う土壌からは2390±90yrBPの14C年代が報告されている(角ほか,1988).コア中部にせん断構造が発達することも考慮すると,松川コアの上部から中部までは丸森地すべりの移動体の一部であり,数千年前頃の地すべり発生時に表土や植生を巻き込んだものと解釈することができる.一方コア下部のせん断構造は脊梁山地東縁に発達する逆断層群(松尾断層など)に関係する可能性もあり,運動方向の解析や周辺地域のコア試料等との比較から基盤構造を解明する必要がある.