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[SVC48-P06] 秋田県湯沢,第四紀の三途川カルデラの噴火史と地質構造発達史
キーワード:三途川カルデラ、虎毛山層、カルデラ内イグニンブライト
カルデラ内イグニンブライトは,カルデラ外に比べ,カルデラ形成に伴う噴火の始まりや終わり,その後の情報をより完全に記録している.しかしながら,厚いカルデラフィル堆積物により埋積されるため,カルデラ底部へアクセスできないなどの問題点がある.それゆえ,カルデラ内イグニンブライトの層序及び地質構造,堆積相を連続的に記載した例は少ない. 本研究は,カルデラ内イグニンブライトを連続的に観察できる理想的な例として三途川カルデラをとりあげ,そのカルデラ内イグニンブライト(虎毛山層)の層序や地質構造,堆積相を記載し,年代測定を行った.その結果,三途川カルデラの噴火史及び地質構造発達史について明らかにした.
秋田県南部に位置する三途川カルデラは,カルデラ形成時に堆積したとされる軽石流堆積物(虎毛山層)により埋積される.虎毛山層は主に結晶に富むデイサイト質の火山礫凝灰岩,ブレッチャ,凝灰岩からなる.全体の層厚は1500m以上である.更新世(1.2 Ma;K-Ar法)に相当し,女川から西黒沢相当層間の基盤岩を不整合関係に被覆する.本層は5つの岩相からなる.5つの岩相とは,(1)ユータキシティック組織が発達した塊状無層理の火山礫凝灰岩(emLT), (2)塊状無層理の角礫岩(mlBr), (3)斜交層理が発達した火山礫凝灰岩(xsLT), (4)平行層理が発達した凝灰岩(//sT), (5)遍在的に成層構造を持つ火山礫凝灰岩(dsLT)である.emLTは本層の主体をなし繰り返し分布する.mlBr及びxsLTはemLTの下位に発達し,//sT及びdsLTはemLTの上位と中部にそれぞれ発達する.5つの岩相はシャープまたは漸移的に変化する.これらの岩相の特徴及び接触関係はすべてイグニンブライトの岩相を特徴づけるため,本層はイグニンブライトのシーケンスからなると判断できる.イグニンブライトに先行する降下軽石堆積物が欠如することやイグニンブライトの層厚が1500 mを超えること,本層の分布がカルデラ内に限られることから,本噴火は約1.2 Maにマグマ溜まりの天盤崩壊をトリガーとして発生し,プリニー式噴火フェーズのないイグニンブライトを形成するフェーズから始まったと考えられる.さらにイグニンブライト岩相が繰り返し分布することから,本層は7層の火砕流堆積物(PDC-1 to PDC-7)に識別される.7層の火砕流堆積物の存在より,本噴火で発生した大規模火砕流はwaxingとwaningを繰り返しながら少なくとも7回の火砕流パルスを発生させたと解釈できる.大規模火砕流の給源方向は,イグニンブライト中に発達するデューン構造やインブリケーションの方向から推定でき,北東から南西方向であると考えられる.給源方向にある大鳥谷沢では結晶に乏しいことやmlBrが多く狭在することからも支持される.また,虎毛山層は高松岳周辺を中心に環状に分布し,外側へ急傾斜する.この地質構造は高松岳を中心としたドーム状の隆起構造を示唆する.この隆起構造は,後カルデラ期の再生ドームと考えられ,虎毛山層形成後に発達したと考えられる.
秋田県南部に位置する三途川カルデラは,カルデラ形成時に堆積したとされる軽石流堆積物(虎毛山層)により埋積される.虎毛山層は主に結晶に富むデイサイト質の火山礫凝灰岩,ブレッチャ,凝灰岩からなる.全体の層厚は1500m以上である.更新世(1.2 Ma;K-Ar法)に相当し,女川から西黒沢相当層間の基盤岩を不整合関係に被覆する.本層は5つの岩相からなる.5つの岩相とは,(1)ユータキシティック組織が発達した塊状無層理の火山礫凝灰岩(emLT), (2)塊状無層理の角礫岩(mlBr), (3)斜交層理が発達した火山礫凝灰岩(xsLT), (4)平行層理が発達した凝灰岩(//sT), (5)遍在的に成層構造を持つ火山礫凝灰岩(dsLT)である.emLTは本層の主体をなし繰り返し分布する.mlBr及びxsLTはemLTの下位に発達し,//sT及びdsLTはemLTの上位と中部にそれぞれ発達する.5つの岩相はシャープまたは漸移的に変化する.これらの岩相の特徴及び接触関係はすべてイグニンブライトの岩相を特徴づけるため,本層はイグニンブライトのシーケンスからなると判断できる.イグニンブライトに先行する降下軽石堆積物が欠如することやイグニンブライトの層厚が1500 mを超えること,本層の分布がカルデラ内に限られることから,本噴火は約1.2 Maにマグマ溜まりの天盤崩壊をトリガーとして発生し,プリニー式噴火フェーズのないイグニンブライトを形成するフェーズから始まったと考えられる.さらにイグニンブライト岩相が繰り返し分布することから,本層は7層の火砕流堆積物(PDC-1 to PDC-7)に識別される.7層の火砕流堆積物の存在より,本噴火で発生した大規模火砕流はwaxingとwaningを繰り返しながら少なくとも7回の火砕流パルスを発生させたと解釈できる.大規模火砕流の給源方向は,イグニンブライト中に発達するデューン構造やインブリケーションの方向から推定でき,北東から南西方向であると考えられる.給源方向にある大鳥谷沢では結晶に乏しいことやmlBrが多く狭在することからも支持される.また,虎毛山層は高松岳周辺を中心に環状に分布し,外側へ急傾斜する.この地質構造は高松岳を中心としたドーム状の隆起構造を示唆する.この隆起構造は,後カルデラ期の再生ドームと考えられ,虎毛山層形成後に発達したと考えられる.