17:15 〜 18:30
[SVC48-P12] 阿蘇-4火砕噴火直前に活動した大峰火山噴出物の化学組成:
メルト包有物組成を用いた阿蘇-4との比較
キーワード:大峰火山、高遊原溶岩、大峰スコリア、メルト包有物
阿蘇-4火砕噴火 (89 ka) 直前にカルデラ縁の西方5 kmで, 大峰スコリア (比高200 m) の噴出と, 高遊原溶岩 (厚さ100 m, 表面積28 km2) の流出 (90 ka) が起こった. 阿蘇-4テフラは土壌を挟まずに高遊原溶岩を覆う.
高遊原溶岩の化学組成 (SiO2=63~65wt.%) の変化トレンドは阿蘇-4のトレンドと一部重なるが, いくつかの元素の組成値が異なっている. 大峰スコリアの化学組成 (SiO2=60~65wt.%) は組成幅があり, 高遊原溶岩とほとんど変わらないが, わずかにフェルシックである.
大峰スコリア中の斜長石に含まれるメルト包有物組成は比較的狭い範囲(SiO2=67~70 wt.%) に集中し, 阿蘇-4, 肥猪, 小谷サブユニットの軽石に含まれる斜長石・斜方輝石中のメルト包有物組成 (SiO2=71~74 wt.%) と比較すると, MgO, FeO* (全鉄) , TiO2, P2O5に富み,異なる組成トレンドを示した.大峰スコリアのメルト包有物はSO3の値は阿蘇-4軽石より富むが,H2O含有量は1~2wt.%のものが多く, 最大値は3wt.%, 阿蘇-4軽石 (3~5wt.%, 最大値は5wt.%) よりも低いことが,対照的である. また, 石基ガラスとメルト包有物の揮発性成分を比較すると, Clはほぼ同じであるがSO3は石基ガラスのほうが少ない. 石基ガラスの組成 (SiO2=69~74wt.%) はメルト包有物よりSiO2に富むことから, 大峰スコリアの鉱物中のメルト包有物が保持している噴火前のマグマ組成が異なっていたと考えられる. また, 大峰スコリア中の斜長石中のメルト包有物と斜方輝石中のメルト包有物の組成が異なっている. 単斜輝石コアのMg# (78~80) と, 斜方輝石コアのMg# (75~76) は平衡から外れた値を示すことから両者は非平衡であり, おそらく斜方輝石が別起源であると考えられる. 大峰スコリアの斜長石斑晶組成はAn52-An58でユニモーダルな分布を示した. これに対して阿蘇-4火砕流堆積物の斜長石斑晶組成はユニットごとにユニモーダルからバイモーダルあるいは幅広い組成に変化している. 大峰スコリアの斜長石の組成と近い値 (An50-An60) をとるものも少量含むが, 大峰スコリアの斜長石斑晶と同じ組成分布を示す阿蘇-4火砕流堆積物のユニットはない. 大峰スコリア中の斜長石には清澄なものと蜂の巣状の構造を持つものが存在しており, 蜂の巣状構造をもつ斜長石は組成幅が大きいものの, ほとんど違いは見られなかった.
大峰スコリアのメルト包有物の分析値は,大峰スコリア丘の噴火,高遊原溶岩の流出が, 阿蘇-4巨大マグマ溜まりとは独立したマグマ供給系による可能性を示唆している.
高遊原溶岩の化学組成 (SiO2=63~65wt.%) の変化トレンドは阿蘇-4のトレンドと一部重なるが, いくつかの元素の組成値が異なっている. 大峰スコリアの化学組成 (SiO2=60~65wt.%) は組成幅があり, 高遊原溶岩とほとんど変わらないが, わずかにフェルシックである.
大峰スコリア中の斜長石に含まれるメルト包有物組成は比較的狭い範囲(SiO2=67~70 wt.%) に集中し, 阿蘇-4, 肥猪, 小谷サブユニットの軽石に含まれる斜長石・斜方輝石中のメルト包有物組成 (SiO2=71~74 wt.%) と比較すると, MgO, FeO* (全鉄) , TiO2, P2O5に富み,異なる組成トレンドを示した.大峰スコリアのメルト包有物はSO3の値は阿蘇-4軽石より富むが,H2O含有量は1~2wt.%のものが多く, 最大値は3wt.%, 阿蘇-4軽石 (3~5wt.%, 最大値は5wt.%) よりも低いことが,対照的である. また, 石基ガラスとメルト包有物の揮発性成分を比較すると, Clはほぼ同じであるがSO3は石基ガラスのほうが少ない. 石基ガラスの組成 (SiO2=69~74wt.%) はメルト包有物よりSiO2に富むことから, 大峰スコリアの鉱物中のメルト包有物が保持している噴火前のマグマ組成が異なっていたと考えられる. また, 大峰スコリア中の斜長石中のメルト包有物と斜方輝石中のメルト包有物の組成が異なっている. 単斜輝石コアのMg# (78~80) と, 斜方輝石コアのMg# (75~76) は平衡から外れた値を示すことから両者は非平衡であり, おそらく斜方輝石が別起源であると考えられる. 大峰スコリアの斜長石斑晶組成はAn52-An58でユニモーダルな分布を示した. これに対して阿蘇-4火砕流堆積物の斜長石斑晶組成はユニットごとにユニモーダルからバイモーダルあるいは幅広い組成に変化している. 大峰スコリアの斜長石の組成と近い値 (An50-An60) をとるものも少量含むが, 大峰スコリアの斜長石斑晶と同じ組成分布を示す阿蘇-4火砕流堆積物のユニットはない. 大峰スコリア中の斜長石には清澄なものと蜂の巣状の構造を持つものが存在しており, 蜂の巣状構造をもつ斜長石は組成幅が大きいものの, ほとんど違いは見られなかった.
大峰スコリアのメルト包有物の分析値は,大峰スコリア丘の噴火,高遊原溶岩の流出が, 阿蘇-4巨大マグマ溜まりとは独立したマグマ供給系による可能性を示唆している.